インヒビター保有の血友病、新しい機序の治療薬「アレモ皮下注」が国内で承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. インヒビターを保有する血友病患者さんの出血傾向抑制を効能・効果として、「アレモ皮下注」が製造販売承認を取得
  2. 新しい機序により、血友病の補充療法が効きにくいインヒビター保有の患者さんにも効果が得られる設計
  3. 臨床試験では年間出血回数を有意に減少させ、有効性および安全性が確認された

血液凝固因子のインヒビターを保有する血友病患者さん対象

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、血友病治療薬「アレモ(R)皮下注15mg、60mg、150mg、300mg」(一般名:コンシズマブ)について、国内の製造販売承認を取得したことを報告しました。血液凝固因子である第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の働きを妨害するインヒビターを保有する先天性血友病の患者さんの出血傾向を抑制する効能・効果についての承認です。

血友病は、血液凝固機能の異常により、外傷などの出血時に止血しにくくなることでさまざまな症状が見られる疾患です。血友病の治療には血液凝固因子の補充療法が行われますが、患者さんによっては補充療法の凝固因子が免疫システムにより異物とみなされ、インヒビターが発生し治療が効きにくくなってしまいます。現在、血友病A患者さんの30%、血友病B患者さんの1〜10%がインヒビターを保有していると推定されています。

TFPIの抗凝固作用を阻害することで出血傾向を抑制する新しい治療薬

アレモ皮下注は、1日1回の皮下注射で出血を予防する治療薬で、TFPIと呼ばれる血液凝固を阻止する体内のタンパク質を阻害するように設計された、これまでの血友病治療薬とは異なる新しい薬(抗TFPIモノクローナル抗体)です。TFPIに特異的に結合することで、トロンビンと呼ばれる血液凝固因子の産生を促進し血液凝固を助けることで、出血を防ぎます。

この薬は、これまでに米国や欧州を含む国や地域で承認申請が行われており、カナダ、オーストラリア、スイスでは、インヒビターを保有する血友病Aまたは血友病Bにおける出血予防を適応として承認されています。また、国内ではインヒビターを保有しない血友病Aまたは血友病B(先天性血液凝固第VIII因子または第IX因子欠乏)患者さんの出血傾向の抑制を適応症として、2023年7月28日に製造販売承認申請が行われています。

今回の承認は、4つの第1相試験、2つの第2相試験、そして第3相試験であるExplorer7試験の結果に基づいて行われました。Explorer7試験では、インヒビターを保有する血友病Aまたは血友病Bの患者さんが対象でした。解析の結果、出血予防を行わなかったグループの平均年間出血回数11.8回に対し、アレモ皮下注を投与したグループの平均年間出血回数は1.7回となり、自然出血および外傷性出血の有意な減少が認められました。また、アレモ皮下注の安全性・忍容性プロファイルは予測された範囲内でした。(遺伝性疾患プラス編集部)

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