血友病B

遺伝性疾患プラス編集部

  • 2020.05.01 公開 (最終更新: 2020.05.19)
  • 血友病B
英名 Hemophilia B
別名 (先天性)第IX因子欠乏症、クリスマス病、PTC欠乏症
日本の患者数 1,000人程度(血友病Aの5分の1程度)
子どもに遺伝するか 遺伝する(X連鎖劣性遺伝)
発症年齢 生まれつき
性別 ほぼ男性(X連鎖劣性遺伝)、女性はごくまれ
主な症状 重症は皮下、関節、消化管などの出血、中等~軽症は抜歯や手術時の止血不全など
原因遺伝子 F9遺伝子
治療 第IX因子製剤による補充療法など
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どのような病気?

けがなどで血管が破れ出血すると、血管の破れた部分をふさぐために、血小板という血液細胞が集まって積み重なります。さらに、TF(組織因子)を起点として、血中に含まれる「凝固因子」と呼ばれるタンパク質が、集まった血小板の隙間を埋め固め、止血します。凝固因子は、I~XIIIまで計13ありますが、4番はカルシウムイオン、6番は欠番なので、タンパク質としては全部で11種類です。これらの凝固因子が、次々と反応をすることにより、最終的に血管の破れた部分が固められます。血が止まると、血管壁の修復が行われ、やがて元通りになります。

血液凝固因子のうち「第IX因子」の活性(はたらき)が生まれつき全くない、もしくは十分な活性が得られないため、非常に血が止まりにくい病気(遺伝性疾患)が、血友病Bです。検査の結果、第IX因子活性が1%未満の人は重症、1~5%は中等症、それ以上(40%未満)は軽症に分類されます。重症の人は、1歳前後(乳児期後半)から、手足やおしりなどに皮下出血(血の塊がこぶのようになる「血腫」も見られる)がたびたび見られ、幼児期以降は皮膚よりもっと深い部分である関節内の出血や、筋肉内の出血が多く見られるようになります。膝や肘などの大きな関節に、何度も繰り返し出血を起こすと、関節が変形したり動かしづらくなったりし、血友病性関節症というものになります。口の中や消化管の出血、血尿も見られ、頭蓋骨の内側や腹腔内出血など、命に関わる出血も起こり得ます。一方、中等症や軽症の人では、自然に出血することはほとんどありませんが、抜歯、手術、けがで血が止まりにくいなどにより発覚したり、血友病の検査で偶然に見つかったりすることが多いとされています。

血友病Bは、その遺伝形式により、通常、男性で発症します。女性で発症することは、極めてまれです。第IX因子と同じように、他の凝固因子の遺伝子でも、異常になり出血が止まらなくなる病気(先天性凝固障害症)があります。血友病Bになる頻度は、血友病Aの5分の1程度で、国の調査によると、患者さんの数は1,000人程度とのことです。

血友病Bは、小児慢性特定疾病の対象疾患となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

原因遺伝子として「F9遺伝子」が同定されています。F9遺伝子は、血液凝固第IX因子の設計図となる遺伝子で、この遺伝子に変異があると血友病Bになります。

血友病Bは、X連鎖劣性遺伝と呼ばれる形式で遺伝します。人間は、性染色体と呼ばれる染色体を2本持っています。性染色体にはX染色体とY染色体の2種類があり、XYの組み合わせは男性、XXの組み合わせは女性になります。F9遺伝子は、X染色体に存在する遺伝子です。F9遺伝子に異常がある男性は発症しますが、女性では、2本もつX染色体のうち片方の染色体に存在するF9遺伝子に異常があっても、もう1本が機能を補完するため発症しません(この、遺伝子異常をもっていて発病しない状態を「保因者」と言います)。この病気の父親の子どもが男性の場合は発病せず、女性の場合は必ず保因者になります。また、この病気の保因者の母親から生まれた男性は2分の1の確率で病気になり、女性の2分の1は保因者になります。

重症度に関連する、第IX因子の活性の違いは、F9遺伝子のどの部分にどのような変異が入っているのかによります。血友病BになるF9遺伝子の変異は、「点変異」と呼ばれる種類が多いと知られています。また、親が血友病Bの遺伝子変異を持っていないのに、子どもから新たに変異を持つようになる「孤発例」も約50%に見られます。

X連鎖劣性遺伝

どのように診断されるの?

さまざまな検査を受け、医師がその結果を総合的に判断して、診断をします。具体的には、出血時間や血小板数、凝固因子の働きを測る「プロトロンビン時間(PT)」などを調べて、出血傾向の原因を探る「止血スクリーニング検査」を行い、血友病Bが疑われた場合には、確定診断のために、第IX因子の活性を検査で調べます。血友病Bでは、この活性が40%未満です。

どのような治療が行われるの?

血友病Bの出血症状に対し、最も有効な治療法は、第IX因子製剤による補充療法です。補充療法に使われる凝固因子製剤には、大きく分けて「血漿由来製剤」と「遺伝子組換え製剤」があります。日本では、血漿由来製剤は、献血で集められた血液をもとに、国内で製造されています。遺伝子組み換え製剤は、凝固因子の遺伝子を組み込んだ培養細胞に凝固因子を産生させ、それを精製して製造しますが、こちらは輸入した薬を使っています。補充療法を受ける間隔や期間は、その人の症状に合わせて決められます。補充療法は、出血があるときだけでなく、運動会などけがの恐れがある行事の前に注射する、予備的補充療法や、将来血友病性関節症になるのを予防するために、一定間隔で注射をする定期補充療法なども行われています。特に定期補充療法では、患者さん本人または家族に医療者が指導をしたうえで、自宅で自己注射できる「家庭療法」も普及してきています。

一方、補充療法で繰り返し注射をした結果、3~5%の人で、第IX因子を免疫系が異物と認識し、これに対する抗体(インヒビター)が作られてしまうことがあります。ひとたびインヒビターが作られると、凝固因子製剤だけで止血管理をするのが、多くの場合で困難になります。インヒビターの治療には、中和療法(インヒビターの活性を抑え、さらに止血できるレベルの大量の第IX因子製剤を注射する)、バイパス止血療法(第IX因子を介さないで止血できるような薬を用いる)などが行われます。また、免疫寛容導入療法(第IX因子製剤を頻回大量に注射して、インヒビターの産生を強引に押さえ込む)も、欧米で効果が得られており、日本でも研究、実施されています。

血友病Bの軽症もしくは中等症の患者さんには、デスモプレシンという薬の静脈注射が行われる場合があります。この薬は、夜尿症などの治療薬としても使われていますが、第IX因子の活性を上昇させることが知られており、抜歯などでの止血管理の有用性が確立されています。

さらに、第IX因子の遺伝子を肝臓の細胞に導入して、第IX因子を自分の体で作れるようにする「遺伝子治療」の治験が、欧米を中心に開始されています。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本で血友病Bの診断や治療を行っている、主な施設は以下です。

患者会について

血友病Bの患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

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参考サイト

参考文献:医学書院 医学大辞典 第2版