血友病の新治療薬、「ヒムペブジ皮下注150mgペン」発売

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 12歳以上のインヒビターのない血友病の治療薬として、ヒムペブジ皮下注150mgペン発売
  2. 週1回の固定用量による皮下投与で患者さんの治療負担が軽減
  3. 臨床試験において、治療が必要な出血事象の年間出血率を凝固因子補充療法よりも減少

抗TFPIモノクローナル抗体製剤、週1回の自己投与可能

ファイザー株式会社は、12歳以上のインヒビターのない血友病Aおよび血友病B患者さんにおける出血傾向の抑制治療薬として、「ヒムペブジ(R)皮下注150mgペン(一般名:マルスタシマブ、以下、ヒムペブジ)」を発売したと発表しました。

血友病は、血液凝固因子の欠乏によって非常に血が止まりにくくなる遺伝性疾患です。血友病Aは第VIII(8)因子、血友病Bは第IX(9)因子の欠乏が原因となります。

ヒムペブジは、抗TFPIモノクローナル抗体で、一連の血液凝固反応の主要な阻害因子である組織因子経路阻害因子(TFPI)を標的とすることで血液凝固能力を改善するように設計されています。この製剤は、プレフィルドペン型の注入器で、週1回皮下へ自己投与が可能です。体重換算の必要がない固定用量で患者さんの治療負担を軽減し、QOLの向上に貢献できると考えられています。

「血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制」のために定期投与する皮下投与製剤として、米国では2024年10月11日、欧州では2024年11月18日に承認を取得し、日本国内でも2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。

投与された症例が一定数集積されるまで、全例調査を実施

ヒムペブジの承認は、12歳以上75歳未満のインヒビターのない血友病Aまたは血友病B患者さんを対象に行われた国際共同第3相の臨床試験「BASIS試験」の結果などに基づいて行われました。

BASIS試験は、非盲検、多施設共同で実施され、ヒムペブジ投与前の観察期間とヒムペブジ投与期間における、治療を必要とした出血事象の年間出血率(ABR:Annual Bleeding Rate)が比較されました。その結果ヒムペブジは、観察期間に凝固因子の出血時補充療法を受けた患者さんで92%、定期補充療法を受けた患者さんにおいて35%ABRを減少させました。安全性プロファイルは、以前に行われた第1/2相試験結果と一貫しており、患者さんの3%以上に発生した主な有害事象は、注射部位反応およびそう痒症でした。

同剤は、一定数の症例が集積されるまで、投与されたすべての患者さんを対象とした、特定使用成績調査(全例調査)が実施されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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