血友病の開発中治療薬マルスタシマブ、FDAとEMAが承認申請を受理

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 血友病AとBに対し同用量で使え、血友病Bでは初の週1回皮下投与薬となる可能性
  2. 青年期~成人患者さん対象P3試験で年間出血率を評価
  3. インヒビターの有無に関わらず1~18歳未満の小児患者さん対象の試験も実施中

抗TFPIモノクローナル抗体、日本でも2024年2月に承認申請

米国ファイザー社は、血友病A血友病Bの治療薬として開発中のマルスタシマブについて、第VIII(8)因子または第IX(9)因子のインヒビターを持たない血友病Aまたは血友病Bを対象とした生物製剤承認申請(BLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理されたと発表しました。また、同剤は現在、欧州医薬品庁(EMA)でも承認申請の審査を受けています。

血友病は、血液凝固因子の活性が全くない、もしくは十分な活性が得られないために非常に血が止まりにくくなる遺伝性疾患です。不足する血液凝固因子が第VIII(8)因子の場合は「血友病A」、第IX(9)因子の場合は「血友病B」と呼ばれます。

マルスタシマブは、体内で血栓が作られないように働いている抗凝固タンパク質「組織因子経路インヒビター」(TFPI)を阻害する、抗TFPIモノクローナル抗体(ヒトIgG1)です。定期投与により、血友病Aまたは血友病Bの出血傾向を抑制することが期待されています。現在、薬剤調製が不要な固定用量の皮下投与製剤として開発中です。今後、米国と欧州で承認された場合、マルスタシマブは血友病Bに対しては初の週1回皮下投与薬となり、血友病AとBのどちらに対しても同じ用量で使える初の薬となる可能性があります。なお、同剤は日本でも2024年2月に承認申請されています。

年間出血率、凝固因子出血時補充療法への優越性・凝固因子定期補充療法への非劣性を確認

今回の申請受理は、第3相臨床試験「BASIS試験」の結果に基づくものです。BASIS試験は、12か月間のマルスタシマブ治療による年間出血率を評価する、国際共同第3相非盲検多施設共同試験です。対象は、インヒビター非保有の、重症の血友病A(第VIII因子活性1%未満と定義)または中等症から重症の血友病B(第IX因子活性2%以下と定義)の青年・成人の患者さん約145人(12~75歳未満)です。参加者の約15%は12~18歳未満の青年患者さんでした。

前治療として出血時に凝固因子の補充療法を受けた患者さんでは、6か月間(観察期間)凝固因子出血時補充療法を行った後、12か月間(投与期間)マルスタシマブを週1回投与し、観察期間と投与期間の年間出血率等のデータを比較しました。また、前治療として凝固因子定期補充療法を受けた患者さんでは、6か月間(観察期間)に凝固因子定期補充療法を行った後、12か月間(投与期間)マルスタシマブを週1回投与し、観察期間と投与期間の年間出血率等のデータを比較しました。試験の結果、主要評価項目の年間出血率について、マルスタシマブの定期投与は、凝固因子出血時補充療法に対する優越性、凝固因子定期補充療法に対する非劣性を示しました。安全性プロファイルも良好でした。

同社は現在、インヒビターの有無に関わらず、重症血友病Aまたは中等度から重症血友病Bの1~18歳未満の小児患者さんを対象とした、BASIS KIDS試験を実施しています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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