インヒビター非保有の血友病、新治療薬「HYMPAVZI」を米国FDAと欧州委員会が承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 12歳以上のインヒビターのない血友病AまたはBの治療薬としてFDAと欧州委員会が、HYMPAVZIを承認
  2. HYMPAVZIは、プレフィルド自動注射ペンで週1回の皮下注射による治療が可能
  3. BASIS試験で、HYMPAVZIは通常の定期補充・オンデマンド療法と比較し出血を減少

血友病の治療は進歩したが、課題も残る

米ファイザー社は、血液凝固第VIII因子インヒビターを保有しない血友病Aまたは血液凝固第IX因子インヒビターを保有しない血友病Bの成人および12歳以上の小児患者さんにおける、出血症状の予防または頻度の低減を目的とした定期予防薬として、米国食品医薬品局(FDA)と欧州委員会(EC)が、HYMPAVZI(TM)(マルスタシマブ-hncq)を承認したと発表しました。

血友病は、出血時に血液を凝固させる血液凝固因子の欠乏によって引き起こされる希少遺伝性疾患で、血友病のうち、血友病Aでは第VIII(8)因子、血友病Bでは第IX(9)因子が働かないことで引き起こされます。この病気では、血液の凝固機能が正常に働かないため、関節内で繰り返し出血が起こり、その結果、関節が完全に動かなくなってしまう可能性もあります。近年、血友病の治療法は進歩してきましたが、多くの患者さんは依然として出血の症状に悩まされています。また、週に数回の静脈注射が必要な方も少なくありません。

HYMPAVZIは、血液凝固や止血機能を阻害する組織因子経路阻害因子(TFPI)と呼ばれるタンパク質を標的としてその活性を調整し、血液凝固能力を改善する抗組織因子経路阻害剤(抗TFPI)です。プレフィルド自動注射ペンによる投与法により、最小限の準備で週1回の皮下注射による治療を行うことができます。

最も多い副作用は、注射部位反応、頭痛、掻痒

今回のHYMPAVZIの承認は、第3相BASIS試験の結果に基づいて行われました。

BASIS試験は、インヒビターの有無に関わらず、重症の血友病A(FVIII活性1%未満)または中等症から重症の血友病B(FIX活性2%未満)の青年期および成人期(12歳~75歳未満)の患者さんを対象に行われ、HYMPAVZIの有効性と安全性が評価されました。

この試験において、116人のインヒビターのない血友病AまたはBの患者さんに対する12か月のHYMPAVZI治療は、標準治療の定期補充療法、オンデマンド療法と比較して出血症状をそれぞれ35%および92%減少させました。

HYMPAVZI治療とオンデマンド療法の比較では、自然出血、関節出血、標的関節出血、全出血など、出血に関連するすべての副次的評価項目でHYMPAVZIが優れていることが示され、定期補充療法に対してもこれらの副次的評価項目で効果が劣っていないことが示されました。

BASIS試験で最も一般的に報告された副作用(患者さんの3%以上)は、注射部位反応、頭痛、掻痒で、HYMPAVZIの安全性プロファイルは第1/2相試験の結果と一致していました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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