病原体を除去するための抗体が作られない病気
東京医科歯科大学を中心とする研究グループは、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に対する造血細胞移植の国際調査結果を発表し、同治療について免疫グロブリン補充療法のみで重篤な症状を抑えることができない患者さんへの代替的な根治治療としての安全性と有効性を示したと報告しました。
XLAは、原発性免疫不全症候群に含まれ、病原体などの外敵から体を守る免疫機能のうち、生体内の異物タンパク質に結合して除去する抗体の産生ができなくなることにより、非常に感染症にかかりやすくなる病気です。そのため、XLAの治療では生涯にわたって抗体の成分を補充する免疫グロブリン補充療法が行われますが、免疫グロブリン補充療法を行っていても重篤な感染症などの合併症にかかってしまう場合があり、その場合には同種造血細胞移植の治療が適応となります。
一方で、これまでにXLAで造血細胞移植が行われた報告は少なく、その安全性や有効性などの詳細は不明でした。研究グループは、国内だけでなくアジア・欧州・米国の13施設において、XLA患者さんが造血細胞移植を受けた例について患者さんの特徴、移植方法、移植成績のデータを解析しました。
造血細胞移植を受けた95%でドナー細胞が安定し造血
その結果、造血細胞移植を受けたXLA患者さん22人のうち、造血細胞移植が必要と判断された理由は、再発または生命を脅かす感染症16人、悪性腫瘍3人、その他の要因が3人でした。安定した生着(提供されたドナーの細胞が患者さんの骨髄内で機能し血液を作ること)のために必要な造血細胞移植治療の前処置としては、骨髄破壊的前処置が4人、毒性減弱骨髄破壊的前処置10人、強度減弱前処置8人において選択されていました。
造血細胞移植の結果として安定した生着は、全体の95%にあたる21人で達成され、完全または安定した高レベルの混合キメラ(ドナーと患者細胞の混在)を獲得しました。
2年間の全生存率は86%、死亡もしくはドナー細胞が生着しなかった生着不全がなく生存している患者さんの割合(無イベント生存率)は77%でした。1年間での免疫グロブリン補充療法中止率は89%でした。
研究グループは、「免疫グロブリン補充療法がXLAに対する標準治療であるという基本方針は変わらないが、この研究は合併症によって治療の判断が難しいXLA患者さんに対する客観的根拠に基づいた代替的な根治治療の選択肢を提示し、今後のさらなる移植成績の向上にもつながる」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)