FBPase欠損症、発症メカニズムの異なる2つのFBP1遺伝子変異タイプを発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. FBP1遺伝子変異によるFBPase欠損症の詳細な発症メカニズムは不明だった
  2. FBP1遺伝子のミスセンス変異は、酵素活性低下タイプとタンパク質量低下タイプに分かれると判明
  3. 変異の種類に応じた治療法の開発につながると期待

糖を合成するために重要な酵素が欠損する病気

千葉大学の研究グループは、先天性の代謝異常症である「フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPase)欠損症」において、FBP1遺伝子の変異が引き起こす分子病態を解明したことを報告しました。

FBPase欠損症は、体内で糖を合成するために重要な、「肝型 FBPase」と呼ばれる酵素が欠損することにより、長時間の絶食時に重篤な低血糖と乳酸の蓄積による乳酸アシドーシス(血液が酸性に傾き、過呼吸や意識障害などを引き起こす)などの症状が見られる遺伝性疾患です。この病気は、FBPaseの設計図となるFBP1遺伝子の変異によって起こることが知られており、これまでに複数のFBP1遺伝子変異が報告されています。しかし、非常にまれな病気であり発症メカニズムの詳細はまだわかっていません。

研究グループは、FBPase欠損症の患者さんで、ミスセンス変異と呼ばれる、その遺伝子から作られるタンパク質に含まれるアミノ酸の一つが、別のアミノ酸に置換される変異に着目しました。

変異は2つのタイプに分類できた

解析の結果、FBP1遺伝子において新たに2つのミスセンス変異(G164D、F194S)を見つけました。さらに、過去にFBPase欠損症で報告されたFBP1ミスセンス変異の機能解析を行いました。

研究グループは、生化学的な特性に基づいてこれらのFBP1変異をType1とType2に分類しました。Type1変異(D119N、P120L、N213K、E281K)は、FBPaseの酵素活性部位に位置し、変異の結果FBPaseの活性が低下することがわかりました。しかし、FBP1タンパク質の発現量はほとんど変化しませんでした。一方、Type2変異(R158W、G164D、G164S、A177D、F194S、G260R、P284R、G294E、G294V)は、FBPase活性の部位に位置しないものの、タンパク質の立体構造に異常が起こり、細胞内で除去されることでFBP1タンパク質量が低下しFBPase活性が失われることが明らかになりました。

研究グループは、今回の研究成果が、今後FBP1遺伝子変異箇所に応じたFBPase欠損症の有効な治療法の開発につながることが期待できる、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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