網膜色素変性症のiPS細胞由来網膜シート移植手術、2年後の細胞生着と安全性を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 網膜色素変性症の患者さんへiPS細胞由来網膜シート移植した2例について、2年後の経過が報告された
  2. 移植した網膜シートは2例とも安定した状態で生着、重篤な有害事象も確認されなかった
  3. 病状進行は移植していない目と比較して、同等または穏やか

iPS細胞から作製した網膜シート、移植治療2年後の経過を報告

神戸市立神戸アイセンター病院を中心とした研究グループは、他人のiPS細胞から作製した網膜シートを、網膜色素変性症の患者さんの網膜下に移植した2例について、移植後2年における細胞の生着と安全性が確認されたことについての論文が学術雑誌「Cell Stem Cell」に掲載されたことを発表しました。

この臨床研究は、2020年2月大阪大学第一特定認定再生医療等委員会にて承認、6月に厚生労働省の再生医療等評価部会にて了承された後、同年10月に1例目、2021年2月に2例目の移植手術が行われました。移植後1年の経過報告は、2022年10月に日本臨床眼科学会にて発表されていました。

重篤な有害事象なく安定した生着を確認

これまでの経過として、移植した2例では移植片(網膜シート)が2年間、安定した状態で生着していること、移植により増加した網膜の厚みが維持されていることが確認されました。また、重篤な有害事象もありませんでした。

視機能から確認した病状の進行は、移植が行われた目は移植を行っていない目と比較して、同等または穏やかな傾向があることが確認されました。

この研究の結果より、同種iPS細胞由来網膜シート移植において移植片(細胞シート)が生着すること、そしてその安全性が確認されました。また、限定的ではあるものの、視機能への治療効果の可能性が示されました。

研究グループは、今後、さらにこの治療の安全性と有効性の調査が進むと期待している、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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