プラダー・ウィリ症候群(PWS)、成長ホルモン治療が適応追加承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. PWSにおける成長ホルモン治療は、これまで「低身長の小児」のみ承認されていた
  2. 成長ホルモン治療薬ジェノトロピンは、他疾患の低身長対象に日本で既に保険適用の薬
  3. 今回のPWSへの追加承認で、「身長によらず小児~成人期まで」成長ホルモン治療が可能に

肥満・糖尿病・低身長など、さまざまな症状が現れる指定難病

ファイザー株式会社は12月22日、ジェノトロピン(R)ゴークイック注用5.3mg、同12mg、ジェノトロピン(R)TC注用5.3mg、同12mg(一般名:ソマトロピン(遺伝子組換え))について、「プラダー・ウィリ症候群における体組成異常および骨端線閉鎖を伴わない低身長」を適応として、日本での一部変更承認を取得したと発表しました。

プラダー・ウィリ症候群は、肥満、糖尿病、低身長、性腺機能不全、発達遅滞、筋緊張低下など、さまざまな症状が現れる症候群です。15番染色体長腕q11-q13という領域にある、父親由来で発現する遺伝子の働きが失われたことで発症します。約1万5,000人に1人が罹患すると推定される希少疾患で、日本では約1,000人の患者さんがいると報告されています。なお、厚生労働省の定める指定難病対象疾病です。

「プラダー・ウィリ症候群の患者さんは、生涯を通じて良好な体組成を維持することが重要です。成長ホルモン治療が体組成の改善に有用であることは国際的に広く認識されていますが、日本ではこれまで低身長を呈すプラダー・ウィリ症候群のお子さんに対してのみ成長ホルモン治療が承認されていたため、医療関係者および患者団体の双方から適応拡大が待ち望まれていました」と、浜松医科大学特命研究教授・浜松医療センター院長補佐の緒方勤先生は述べています。

日本人の成人・小児の患者さん対象、国内P3試験の結果に基づく承認

ジェノトロピンは、遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤。同剤は、すでに他の疾患における低身長を対象に日本でも保険適用され、使用されてきました。今回の承認により、プラダー・ウィリ症候群の患者さんへも使用されることとなります。

今回の承認は、日本人のプラダー・ウィリ症候群の成人・小児の患者さんを対象に、体組成改善におけるジェノトロピンの有効性および安全性を評価した国内第3相臨床試験の結果に基づくものです。参加者は、年齢や前治療に応じ、成長ホルモン未治療小児コホート、成長ホルモン既治療小児(移行期)コホート、成人コホートのいずれかに参加しました。

良好な体組成の維持を目的に、食事・運動療法に加え「成長ホルモン治療」選択も

今回の承認により、プラダー・ウィリ症候群の患者さんが良好な体組成を維持することを目的に、基本的な治療の食事療法・運動療法に加え、成長ホルモン治療を選択できるようになります。

大阪母子医療センター消化器・内分泌科副部長の川井正信先生は、「今回の適応追加により、プラダー・ウィリ症候群の患者さんは身長によらず、小児期から成人期にわたって切れ目なく成長ホルモン治療を受けられるようになります。このことは、患者さんの将来の合併症の予防や生涯にわたるQOLの改善にもつながると期待されます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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