アルポート症候群の患者さんiPS細胞由来の腎オルガノイドを開発、新薬開発に有用

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. アルポート症候群の病態再現のため、iPS細胞由来腎オルガノイドによる疾患モデル作製
  2. 作製した患者さんiPS細胞由来腎オルガノイドは、重症度ごとの病態を反映
  3. 治療薬候補により、糸球体基底膜のⅣ型コラーゲンの状態が回復する可能性を示唆

腎臓の糸球体の機能が損なわれ、腎機能障害が引き起こされる

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を中心とした研究グループは、ヒトiPS細胞から作製した「腎臓を模した構造体」(腎オルガノイド)を用いて、創薬研究に有用なアルポート症候群の病態モデルを開発したと発表しました。

アルポート症候群は、腎臓の機能に重要な糸球体基底膜の成分となるIV型コラーゲンの設計図となる遺伝子COL4A3、COL4A4、COL4A5の変異により、進行性の腎機能障害のほか難聴、目の異常などのさまざまな症状が見られる遺伝性疾患で、早期に末期腎不全となり透析療法が必要となることもある病気です。腎機能の保護のために降圧薬などの治療が行われますが、病気の進行を完全に抑える治療法はまだなく、新しい治療法の開発が求められています。

しかし、アルポート症候群の治療法研究のために腎臓の糸球体基底膜の異常などを培養細胞で再現することは、その構造の複雑さから難しいことが課題となっていました。

研究グループは、これまでにiPS細胞を用いてさまざまな臓器を模倣したオルガノイドが作製されていることに着目しました。これらのオルガノイドは、臓器の特徴的な機能や構造を持つことなどから、従来の細胞株では難しかった性質を再現できる可能性があります。そこで、今回アルポート症候群の病気の状態を示す腎オルガノイドの開発を試みました。

重症度ごとの遺伝的特徴も反映

研究グループは、まず軽症型と重症型のアルポート症候群患者さん由来のiPS細胞、また軽症型のiPS細胞において原因遺伝子を正常型に修復したiPS細胞を作製しました。そして、それぞれのiPS細胞から腎オルガノイドを作製し、アルポート症候群の病態を再現できるかを検証しました。

作製した腎オルガノイド糸球体基底膜様構造のⅣ型コラーゲンの状態を解析したところ、IV型コラーゲンを構成するα3、α4、α5のうち、アルポート症候群患者さんiPS細胞由来の腎オルガノイドではα5の沈着が認められず、遺伝子を正常型に修復したiPS細胞由来の腎オルガノイドでは認められたことから、アルポート症候群の病態を再現していると考えられました。また、軽症型iPS細胞由来腎オルガノイドではα3が観察されましたが、重症型iPS細胞由来腎オルガノイドではα3も認められず、重症度ごとの遺伝的特徴も反映されていることが示唆されました。

研究グループは、作製した腎オルガノイドに対しタンパク質の構造異常を修正するとされる化合物である「4-PBA」を添加しました。その結果、軽症型iPS細胞由来腎オルガノイドではα5が認められるようになり、アルポート症候群において、このような低分子化合物を用いた新たな治療法の可能性を示すことに成功しました。

研究グループは、この結果はアルポート症候群に対する治療コンセプトを提示するものであり、同技術はアルポート症候群の創薬候補物質の選択への応用も期待される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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