筋ジストロフィー(DMD)、進行抑制する新たな経口薬を米FDAがファストトラック指定

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する開発中の低分子経口薬が米国で優先審査へ
  2. 収縮誘発性の筋損傷を選択的に抑制し、進行を抑える目的の新しい作用機序の経口薬
  3. 単剤療法/併用療法のいずれにおいても、新たな治療として確立される可能性

ジストロフィン異常症の新薬、既にFDAはODDやRPDDなど複数指定

米国のエッジワイズ・セラピューティクス社(Edgewise Therapeutics)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬として開発中の経口薬「EDG-5506」が、米国食品医薬品局(FDA)からファストトラック指定(Fast Track designation)を受けたことを発表しました。同剤は、DMDやベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの「ジストロフィン異常症」において、筋収縮による筋損傷を予防するように設計された低分子化合物です。FDAはこれまでに、同剤をDMDおよびBMDの治療薬として希少疾病用医薬品指定(Orphan Drug Designation、ODD)、DMDの治療薬として希少小児疾患指定(Rare Pediatric Disease Designation、RPDD)、BMDの治療薬としてファストトラック指定しています。

DMDは、筋ジストロフィーの中で最も一般的なタイプの一つで、ジストロフィン遺伝子の変異により収縮誘発性の筋損傷が生じ、これが進行性の筋力低下と運動機能障害の主な原因となります。重症度の高い疾患で、10代前半までに介助なしでの歩行が困難に、10代半ばまでにほぼ全員が車椅子を使うようになり始め、多くの人が30歳前後で命を落としています。現在、根本的な治療法はなく、しっかりと病気の管理していくためには、神経筋専門医、循環器専門医、理学療法士、その他の専門家による早期からの積極的な集学的ケアが重要です。EDG-5506は、こうしたDMDの経過にプラスの影響を与えることを目的として開発が進められている薬剤です。

複数の臨床試験が進行中

EDG-5506は、ジストロフィン異常症(DMD、BMDなど)において、正しく働くジストロフィンが体内で作られないことで起こる筋損傷の進行を、選択的に抑えるように設計された薬剤です。EDG-5506は独自の作用機序を持つため、単剤療法、あるいは既存/開発中の治療薬との併用療法のいずれにおいても、新たな治療法として確立される可能性があります。

同社は、BMDの成人男性を対象に、EDG-5506の安全性と有効性を評価する第2相臨床試験「CANYON」の参加者登録を完了するなど、臨床開発を進めています。ピボタル試験(承認申請に向けた重要な試験)の「GRAND CANYON」は、現在参加者登録中で、さらに120人の成人参加者を追加した形で進められます。DMDに関しては、4~9歳の小児を対象としてEDG-5506の安全性や体内での薬物動態、筋損傷のバイオマーカーを評価する第2相臨床試験「LYNX」と、遺伝子治療歴のある小児および青少年を対象とした第2相臨床試験「FOX」が進められています。

同社社長兼CEOのKevin Koch博士は、「今回、FDAによりファストトラック指定を受けたことを、うれしく思います。DMDの患者さんとそのご家族にとって、一日一日は大切な時間です。EDG-5506における一連の指定承認は、DMDのような、命に関わる希少な筋疾患と闘う人々にとって、より良い新たな治療選択肢ができることが、いかに緊急かつ重要であるかを浮き彫りにしています」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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