無又は低ガンマグロブリン血症治療剤「キュービトル20%皮下注」発売

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. PIDまたはSIDにより重篤な感染症再発リスク増の「無又は低ガンマグロブリン血症」
  2. 日本はPID早期診断に課題あり、免疫グロブリン補充療法実施は世界の他の地域より低い
  3. 世界30か国以上で承認の免疫グロブリン製剤キュービトル、臨床試験を経て日本でも発売

抗体が「無い」または「低い」状態、標準治療のひとつが免疫グロブリン補充療法

武田薬品工業株式会社は1月24日、「キュービトル(R)20% 皮下注」(一般名:pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射))について、「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能または効果として発売したと発表しました。

「無又は低ガンマグロブリン血症」は、原発性免疫不全症候群(以下、PID)または続発性免疫不全症(以下、SID)により、抗体が「無い」または「低い」状態で、重篤な感染症の再発リスクが増加することを特徴とする疾患です。PIDは、免疫系の一部が欠損しているまたは適切に機能しない希少遺伝性疾患で、その種類は480以上あります。PIDは、国の指定難病対象疾病であり、小児慢性特定疾病の対象疾患です。SIDは、免疫系の外因性条件または要因に起因する免疫応答の障害と定義されています。PIDやSIDの患者さんは免疫系が障害されているため、感染症にかかりやすく、回復に時間がかかることがあります。免疫グロブリン補充療法は、障害されている免疫系の機能を支える標準治療のひとつです。

無ガンマグロブリン血症は、免疫細胞Bリンパ球の正常で成熟した増殖を阻害する遺伝子変異により、抗体が産生されないことで生じる、遺伝性疾患です。低ガンマグロブリン血症は、遺伝子変異によって生じることがありますが、化学療法、特定の併存疾患、免疫抑制剤の使用などの二次的影響によって抗体が欠乏し、発症する場合もあります。どのような種類の抗体欠乏症であっても、感染症を繰り返すことが多いです。そのため、免疫グロブリン補充療法により、体内の抗体レベルを上昇させます。

PID日本人患者さん対象P3試験などで有効性・安全性を確認

日本では、PIDの早期診断が課題としてあり、免疫グロブリンによる治療実施は世界の他の地域より低い状況です。また、SIDについても、悪性腫瘍などの治療に伴う免疫不全状態への対応として、免疫グロブリンなどによる治療を含めた総合的感染管理が重要だと考えられています。

キュービトルは、成人および小児のPID、SID患者さんの感染予防をサポートすることを目的として開発された免疫グロブリン製剤。2023年5月現在、37か国で承認されています。日本では、2歳以上の患者さんを対象とした無又は低ガンマグロブリン血症の治療剤として承認されています。今回の承認は、PIDの日本人患者さんを対象とした第3相臨床試験(NCT04346108)、PID患者さんを対象とした北米と欧州の第2/3相臨床試験(NCT01218438・NCT01412385)の結果に基づくものです。これらの試験の結果、同剤の有効性および安全性が確認されました。

同社の濱村美砂子ジャパンファーマビジネスユニット希少疾患事業部長は「免疫不全症患者さんは、重篤な感染症に罹患することが多く、免疫グロブリン補充療法はこれらの患者さんに対する標準治療のひとつです。キュービトルが新しい治療選択肢として一人でも多くの患者さんに貢献できるよう尽力してまいります」と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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