HDAC阻害薬という種類の非ステロイドの経口薬
米国食品医薬品局(FDA)は、6歳以上のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者さんが適応となる経口治療薬として、Duvyzat/デュヴィザット(一般名:givinostat/ジビノスタット)を承認したことを発表しました。イタリアのイタルファルマコ(Italfarmaco)社が開発した同剤は、DMDのあらゆる遺伝的変異を持つ患者さんの治療に承認された初めての非ステロイド薬です。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害する薬で、炎症と筋肉の減少を軽減する作用が期待されます。デュヴィザットの推奨用量は、個人の体重によって決まります。1日2回、食事とともに服用します。
DMDは、小児の筋ジストロフィー患者さんの中で最も一般的な病型で、患者さんのほとんどは男性です。希少な遺伝性神経疾患の一つで、ジストロフィンと呼ばれる筋タンパク質の欠乏により、進行性の筋力低下が引き起こされます。時間の経過とともに筋肉が衰え、歩行や筋力に問題が生じ、最終的には呼吸に問題が生じて早期に命を落とすとされています。一方で、DMD患者さんの平均余命は年々延びており、30歳以上の患者さんもいます。
18か月の治療で進行の抑制効果を確認
DMD治療に対するデュヴィザットの有効性は、18か月間の、ランダム化二重盲検プラセボ対照第3相試験で評価されました。主要評価項目は、筋機能測定のために4段の階段を上ってもらい、そのベースラインから18か月目までの変化としました。全参加者は研究期間中、標準治療のステロイド療法を受け続けました。18か月の治療後、デュヴィザットで治療を受けた患者さんはプラセボと比較して、階段を4段上るのにかかる時間が段々長くなっていく変化が、統計的に有意に短縮したことが示されました。具体的には、18か月後に、プラセボのグループでは平均3.03秒多くかかるようになりましたが、デュヴィザットのグループでは1.25秒でした。
副次的評価項目は、NSAA(North Star Ambulatory Assessment:歩行可能なDMD男児の運動機能を評価するために一般的に使用される尺度)による身体機能の、ベースラインから18か月目までの変化でした。治療後、プラセボのグループと比較して、デュヴィザットのグループでは18か月後のNSAAスコアの悪化が少ないことがわかりました。
血小板数や特定の心臓病などによっては服用できない場合も
デュヴィザットの最も一般的な副作用は、下痢、腹痛、血小板の減少(出血の増加につながる)、吐き気/嘔吐、トリグリセリド(中性脂肪)の増加、発熱です。デュヴィザットの処方情報には、「医療従事者はデュヴィザットを処方する前に患者さんの血小板数と中性脂肪を評価する必要がある」という警告が含まれています。血小板数が150×109/L未満の患者さんはデュヴィザットを服用できません。投与量の変更が必要かどうかを判断するため、治療中は推奨に従って血小板数と中性脂肪がモニタリングされます。中等度または重度の下痢の場合は、用量の変更が必要になる場合もあります。デュヴィザットは不整脈のリスクを高める可能性(QTc延長を引き起こす可能性)があります。QTc延長を引き起こす特定の薬剤を服用している患者さん、または特定の心臓病を患っている患者さんは、デュヴィザットの服用を避けるべきとされています。
FDA医薬品評価研究センターの神経科学部門神経学第1部長であるEmily Freilich医学博士は、「DMDは、子どもたちが健康的な生活を送る機会を奪うものです。FDAはDMDの新しい治療法の開発を進めることに全力を注いでいます。今回の承認は、遺伝子変異によらず、DMDに罹患している患者さんにとって、この進行性疾患の負担を軽減する新たな治療選択肢となります」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)