筋力低下、筋委縮などが生じる指定難病SMA
スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は6月7日、エブリスディ(R)(一般名:リスジプラム)について、I型の脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の小児患者さんに対する臨床試験「FIREFISH試験」の新たな5年データを発表しました。
SMAは、生存運動ニューロン(Survival Motor Neuron:SMN)1遺伝子の変異により引き起こされる、進行性の遺伝性疾患です。SMN1遺伝子から作られるSMNタンパク質は、筋肉と動きを制御する神経の機能に不可欠です。SMA患者さんでは、正常なSMNタンパク質が不足することで体幹や手足の筋力低下、筋委縮などが生じます。なお、国の指定難病対象疾病です。
エブリスディは、SMN2遺伝子からSMNタンパク質が多く作られるようにデザインされた、SMN2スプライシング修飾剤です。経口または経管投与により毎日自宅で服用することができます。同剤は、中枢神経系と末梢組織でSMNタンパク質の産生を増加させ、維持することが期待されています。現在、エブリスディは日本を含めた100か国以上で承認されており、13か国で審査中です。
81%は永久的な人工呼吸器必要とせず、半数以上が30秒間支えなしに座る
エブリスディは、FIREFISH試験の結果、主要評価項目を達成。有効性や安全性が確認されています。同試験で1年間の治療を終えたI型SMA乳児58人のうち52人が、今回発表された非盲検延長試験に進みました。
今回の発表では、5年経過時点で、エブリスディによる治療を受けた小児の91%が生存していました。小児の81%は永久的な人工呼吸器を必要とせずに生存しており、半数以上の小児が少なくとも30秒間支えなしに座ることができました(59%)。5年経過時点で7人の小児が立つことができ、うち3人は支えがあれば、4人は補助なしで立つことができ、また6人は支えがあれば歩くことができました。なお、疾患修飾治療を行わない場合の自然経過では、I型SMAの小児患者さんは支えなしに座る・立つ・歩くことができないだけでなく、通常2歳を超えて生存することが難しいとされています。
96%嚥下可能、80%経管栄養なしで摂食
また、エブリスディによる治療を受けた小児患者さんの大部分が、摂食能力や嚥下能力を維持していました。具体的には、5年時点で評価された小児患者さんの96%が嚥下することができ、80%が経管栄養なしで摂食できました。
なお、投与中止または試験からの脱落に至った治験薬と関連のある有害事象はありません。主な有害事象は、上気道感染(64%)、発熱(64%)、肺炎(50%)。5年間の治療期間を通じて入院の頻度は減少し、エブリスディによる治療を開始して以来、全く入院が必要なかった小児は22%いました。(遺伝性疾患プラス編集部)