遺伝性網膜疾患「桿体一色覚」、日本人患者さんでRPGRIP1遺伝子の構造異常を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 日本人の桿体一色覚患者さんでは、欧米と比べて原因遺伝子の発見率が低い
  2. 桿体一色覚を含む199家系を全ゲノム解析
  3. 桿体一色覚患者さんの一部の家系でRPGRIP1の遺伝子変異を発見

桿体一色覚、日本人は原因遺伝子の発見率低い

東京医療センターを中心とした研究グループは、桿体一色覚の患者さんのうち、原因遺伝子不明だった10家系の全ゲノム解析を行い、そのうち5家系にRPGRIP1遺伝子の構造変異があることを明らかにしたと報告しました。

桿体一色覚は、色覚異常と幼少期からの視力低下(0.1以下)が見られる遺伝性疾患で、網膜の錐体・桿体と呼ばれる2種類の視細胞のうち錐体が機能せず桿体のみが機能することによって症状が引き起こされます。発症頻度は3〜5万人に1人と言われるまれな疾患で、常染色体劣性(潜性)遺伝形式で遺伝します。

この病気では、6つの原因遺伝子(CNGA3、CNGB3、GNAT2、PDE6C、PDE6H、ATF6)がわかっており、欧米では桿体一色覚の患者さんの原因遺伝子同定率は高く、CNGA3とCNGB3の変異が患者さんの8割を占めているとされます。

しかし、研究グループが以前行った日本人の遺伝性網膜疾患(IRD)患者さんの全エクソーム解析では、桿体一色覚が疑われる患者さんの原因遺伝子同定率は34%しかなく、既知の6遺伝子以外の原因や全エクソーム解析では見つからない変異が存在すると考えられていました。

RPGRIP1遺伝子の一部を欠損する変異を発見

研究グループは、桿体一色覚を含むIRD患者さんの全エクソーム解析で原因遺伝子がわからなかった199家系を対象に全ゲノム解析を行いました。

その結果、眼科検査で桿体一色覚と診断された10家系のうち7家系の患者さんにおいて、(1)RPGRIP1遺伝子で18番目のエクソンを含む約1.3kbを欠損する変異(RPGRIP1-ex18-DEL)を両アレル(2つ持っている遺伝子の両方に同じ変異がある)に持っている、もしくは(2)一方のアレルはRPGRIP1-ex18-DELで、もう一方のアレルはRPGRIP1の別の変異を持つ複合ヘテロ接合(2つ持っている遺伝子にそれぞれ別の変異がある)を持っている、のどちらかであったことが明らかになりました。

RPGRIP1は、IRDの一つであるレーベル黒内障の原因遺伝子として知られています。しかし、レーベル黒内障は、一般的に桿体・錐体両方の視細胞が障害され、さらに網膜変性を伴うのに対し、今回RPGRIP1遺伝子に変異が見られた患者さんは桿体機能が維持され、網膜の変性も見られず、桿体一色覚の症状を示していました。また、これらの患者さんでは、これまで知られていた6つの桿体一色覚原因遺伝子において、有害な変異は認められませんでした。

これらの結果から、日本人の桿体一色覚患者さんの一部で、RPGRIP1の構造変異が原因となっている例があることが示唆されました。

海外では桿体一色覚においてCNGA3、CNGB3を標的とした遺伝子治療の治験が進められており、RPGRIP1はレーベル黒内障の治療標的として研究が進められています。

研究グループは、今後はRPGRIP1-ex18-DEL変異ではなぜ錐体細胞の機能だけが障害されるのかを機能解析などで明らかにする、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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