18q欠失症候群、成人期に「遅発性複合免疫不全」診断の患者さんを確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 「液性免疫不全症以上の重度の免疫能低下はない」とされていた18q欠失症候群
  2. 遅発性複合免疫不全症と診断の患者さん2人を確認
  3. 患者さんは定期的に「細胞性/液性免疫能検査」を受けたほうが良い可能性

先天性免疫異常症の一つ「18q欠失症候群」、過半数の患者さんに液性免疫不全症

東京医科歯科大学などの研究グループは、成人期になって易感染性(感染しやすい状態)を示した18q欠失症候群の患者さんで、遅発性複合免疫不全症を生じていることを初めて明らかにしたと発表しました。

18番染色体長腕の一部分が失われること(欠失)で生じる、18q欠失症候群。4~5.5万出生に1人程度で発症するとされています。欠失した染色体部分に存在していた遺伝子機能が失われることにより、症状が現れると考えられています。現在、18q欠失症候群の根本的な治療法はありません。そのため、それぞれの症状に応じた対症療法が行われます。

また、18q欠失症候群は先天性免疫異常症の一つでもあります。50~90%の患者さんで1種類以上の免疫グロブリンの低下があり、液性免疫不全症となります。しかし、通常は、それ以上の重度の免疫能低下になることはないとされていました。

ニューモシスチス肺炎発症の28歳男性/多発リンパ節腫大と肺炎発症の48歳女性

今回の研究グループの発表では、これまで感染症罹患がほとんどなかった18q欠失症候群の28歳男性患者さん(以下、患者さん1)が、ニューモシスチス肺炎を発症しました。また、48歳女性患者さん(以下、患者さん2)では、多発リンパ節腫大と肺炎の精査の過程の染色体検査で、18q欠失を認めました。患者さん2人の精査が行われ、その結果、患者さん1では18q21.32-q22.3に、患者さん2では18q21.33-qterに欠失を認めました。

2人とも液性免疫不全症だけでなく細胞性免疫不全症を合併

患者さん2人の免疫状態を調べた結果、2人とも液性免疫不全症だけでなく細胞性免疫不全症を合併しており、遅発性複合免疫不全症と診断されました。そして、全エクソーム解析やターゲットシーケンス等の遺伝子解析を追加して行いました。しかし、18q欠失症候群以外に遅発性複合免疫不全症を生じるような遺伝子変異は認められませんでした。

初の症例報告だが、免疫状態が評価されていないだけの可能性も

これまで、18q欠失症候群患者さんの一部で、低ガンマグロブリン血症を主とする液性免疫不全症となることが知られていました。今回の研究により、18q欠失症候群では、さらに細胞性免疫不全症を合併し、より重症な遅発性の複合免疫不全症を引き起こすことがあることが明らかになりました。今回が初めての症例報告でしたが、免疫状態がきちんと評価されていないだけの可能性があると言います。研究グループは、「18q欠失症候群の患者さんは、定期的に細胞性/液性免疫能の検査を受けた方が良いと考えられる」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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