常染色体優性視神経萎縮症(DOA)、OPA1遺伝子変異の影響を解明するモデル生物開発

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. DOAは、OPA1遺伝子変異によって引き起こされる視神経変性疾患
  2. ショウジョウバエを使ったDOAモデル開発に成功
  3. DOAとその重症型であるDOAプラスのドミナントネガティブ変異を区別した検証が可能

OPA1遺伝子の変異により、視神経が徐々に変性していく疾患

新潟大学の研究グループは、常染色体優性視神経萎縮症(DOA)のメカニズム研究に役立つ、ショウジョウバエモデルの作製に成功したと発表しました。

DOAは、主にOPA1遺伝子変異で引き起こされ、視神経が徐々に変性していくことで、視力が次第に低下し、失明に至ることもある遺伝性疾患です。OPA1遺伝子は、ミトコンドリア機能に重要なOPA1タンパク質を作る設計図で、OPA1タンパク質は、エネルギーの生成やミトコンドリアの形状維持に関わっていることがわかっています。

OPA1タンパク質には、「GTPaseドメイン」と呼ばれる部分があり、GTPという分子を分解する働きを持っています。この働きにより、細胞内でエネルギーが供給されたり、細胞同士で情報のやり取りが行われたりします。

DOAでは主に視覚に症状が現れますが、一部の患者さんでは多臓器にわたる症状が見られる場合もあり、これは「DOAプラス」と呼ばれます。DOAプラスは、OPA1タンパク質のGTPaseドメインにおける小さな変異(点突然変異)によって引き起こされることが多いことがわかっていました。これらの変異は、変異したタンパク質が正常なタンパク質の機能を阻害する効果を持つ(ドミナントネガティブ変異)と考えられています。

しかし、GTPaseドメインの変異が必ずしもDOAプラスを引き起こすわけではなく、そのメカニズムは不明でした。そのため、DOAとDOAプラスを明確に区別できる実験系の確立が求められていました。

研究グループは、遺伝学の研究に広く利用されるモデル生物として、その遺伝子がヒトの遺伝子と多くの共通点を持つショウジョウバエに着目し、DOAのショウジョウバエモデルを作製しました。

ショウジョウバエのOPA1機能喪失型変異、DOAの視神経変性と類似

作製したDOAショウジョウバエモデルの解析により、ショウジョウバエのOPA1(dOPA1)遺伝子において、その機能が失われる変異(機能喪失型変異)はDOAで見られる視神経の変性の病態と似た症状を引き起こすことがわかりました。

dOPA1遺伝子の機能喪失型変異による視神経変性はヒトのOPA1(hOPA1)遺伝子を発現させることによって回復したことから、dOPA1とhOPA1は機能的に置き換えることができると示されました。さらに、これまでにわかっているDOAの疾患原因と同じ変異を持つhOPA1では、dOPA1の機能喪失型変異の症状を改善しないことが確認されました。

また、このモデルを使うことによって、DOAプラスで見られるドミナントネガティブ変異を区別して検証することが可能であることも明らかになりました。

研究グループは、確立されたショウジョウバエモデルを用いてさらに多くのヒトのOPA1遺伝子変異の機能を解析することで、DOAとDOAプラスのメカニズムの解明や、個々の変異に対する最適な治療法の開発が進む可能性がある、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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