脊髄性筋萎縮症(SMA)、発症前エブリスディ治療開始で多くが2年後に独立歩行可能

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 遺伝学的にSMAと診断された、発症前の乳児対象の臨床試験における2年データ発表
  2. SMN2コピー数3以上は全員が立つ・歩くを達成、コピー数2は全員が座るを達成し6割が独立歩行可能
  3. 有害事象は、エブリスディの他試験で見られたものとほぼ同様

症状が現れる前にエブリスディの治療を開始

スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は、エブリスディ(R)(一般名:リスジプラム)について、発症前から治療を開始した脊髄性筋萎縮症(SMA)小児患者さんに対する進行中のRAINBOWFISH試験の良好な2年データを発表しました。

SMAは、重度の進行性神経筋疾患で、SMN1遺伝子の変異によりSMNタンパク質が欠乏することで引き起こされます。SMNタンパク質は、健康な運動ニューロンと基本的な運動機能(飲み込む、話す、呼吸など)を維持するのに重要なため、このタンパク質がないと、神経細胞が正常に機能せず、時間とともに筋力が弱まります。SMAにはいくつかの病型がありますが、病型によっては身体的な強さや歩く、食べる、呼吸する能力が大幅に減少したり、失われたりする可能性があります。治療を行わない場合、I型SMAの小児患者さんは支えなしに座る・立つ・歩くことができないだけでなく、通常2歳を超えて生存することが難しいとされています。

エブリスディは、中枢神経系や末梢組織でのSMNタンパク質の産生を増加させ、維持することを目指して設計されたSMAの治療薬で、経口または経管投与で毎日自宅にて服用します。現在、エブリスディは100か国以上で承認され、12か国で審査中です。また現在、室温で安定性のある錠剤が規制当局の審査中となっています。

RAINBOWFISH試験は、遺伝学的にSMAと診断され、まだ症状が現れていない乳児を対象とした臨床試験です。この試験では、発症前の早期に治療を開始した場合の経過や治療結果を評価するため、試験の参加者は生後6週まで(初回投与時の年齢中央値は25日)にエブリスディによる治療を開始しました。また、一般的に、SMN2遺伝子のコピー数が少ないほど、より重度のSMAと関連していることがわかっているため、それぞれの患者さんのSMN2遺伝子のコピー数別に、治療結果を解析しました。

参加した患者さん全員が嚥下と経口摂取可能

2年間の治療後のデータでは、エブリスディで治療を受けたSMN2コピー数が3以上の患者さん全員(n=18)が、BSID-IIIもしくはHINE-2と呼ばれる評価基準で、「立つ」および「歩く」を達成し、その大半が世界保健機関(WHO)により提唱されている健康な小児発達の期間内に達成していました。また、SMN2コピー数が2の患者さん(n=5)では、2年間の治療後、全員が座ることができ、60%が独立して立ち上がりと歩行ができるようになりました。

また、参加した小児患者さんの全員が嚥下・経口摂取可能となり、人工呼吸器を恒常的に必要とする人はいませんでした。認知機能に関しては、BSID-III認知スケールと呼ばれる評価で、試験に参加した患者さんはSMAでないお子さんと同様の認知スキルを示しました。

この試験において、死亡例や投与中止または試験からの脱落に至った有害事象はありませんでした。最も一般的な有害事象は、歯が生える、胃腸炎、下痢、湿疹、発熱で、2年解析時点で見られた有害事象は、エブリスディのSMAに対する他の試験で見られたものとほぼ同様であり、SMAの基礎疾患よりも年齢を反映したものでした。有害事象の多くはエブリスディに関連しないものであり、時間とともに回復しました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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