11月8日は「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を考える日」、制定記念イベント

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 11月8日を「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を考える日」に制定
  2. 実態調査の結果、乳がんは認知度が高い一方で、HBOCの認知や理解は低いと判明
  3. HBOCを含む遺伝性腫瘍の理解や気づきにつながることに期待

11=両親、8=遺伝子ととらえ、11月8日を記念日に

ミリアド・ジェネティクス合同会社は11月7日、「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を考える日」制定記念イベントを開催。記念日登録証授与式、HBOCにまつわる実態調査結果を踏まえたトークセッションを行いました。

Gene News 241108

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)は、生まれ持った遺伝子の変化により、乳がんや卵巣がんなどの発症リスクが高まる体質のことで、英語名「Hereditary Breast and Ovarian Cancer」の頭文字を取ってHBOC(エイチビーオーシーまたはエイチボック)と呼ばれています。HBOCの原因として、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の病的バリアントが挙げられます。BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の病的バリアントはともに、常染色体優性(顕性)遺伝形式で、親から子へ遺伝します。11=両親、8=遺伝子ととらえ、11月8日を「遺伝性乳がん卵巣が(HBOC)を考える日」として記念日に制定することが決まりました。

HBOCの認知度などを事前調査、7割弱が「知らない」

同社は記念日制定に先立ち、全国の成人女性1,000人(医療・遺伝子関連業務従事者を除く)を対象にHBOCの認知度などを問うWeb調査を実施。その結果、乳がんは認知度が高い一方でHBOCの認知や理解は低い(32%)こと、乳がんまたは卵巣がんの既発症者に対する遺伝学的検査やリスク低減手術が保険適用(2020年)であることはほとんど知られていないこと、HBOCの患者さんやその家族も遺伝カウンセリングを受けられることが広まっていないこと、などの実態が明らかになりました。同社マーケティング部の黒中陽介部長はこの結果を踏まえ、「当社ではHBOCに関するウェブサイトも展開している。今後もさまざまな情報提供を通じて、今回の調査で浮き彫りとなった課題などの改善につなげていきたい」と話しました。

医療者・当事者の立場から今後の課題を意見交換

トークセッションには、昭和大学臨床ゲノム研究所所長/同大病院ブレストセンター長の中村清吾先生、がん研究会(がん研)有明病院臨床遺伝医療部部長の植木有紗先生、HBOC当事者会「クラヴィスアルクス」理事長の太宰牧子さんが登壇し、実態調査の結果を踏まえ意見を交わしました。

中村先生はこれまでにHBOCの患者さんデータベースの構築、乳がんまたは卵巣がんの既発症者に対する遺伝学的検査の保険収載などにご尽力されてきた先生の一人です。「認知度向上も課題ではあるが、未発症者の遺伝学的検査の保険収載に向けた取り組みも重要だ。がん専門の遺伝カウンセラーも少しずつ増えてきており、正しい情報を得てほしい」と話しました。

植木先生は、遺伝カウンセリングについて、「日本では遺伝すると聞くと怖いとか、良くないイメージを持たれる方も多いが、実際はそうではないし、悩むことがあればまずは相談してほしい」と話しました。さらに、がん研では正しい情報に基づく診療の大切さを患者さんだけでなく多職種の医療者に認識してもらえるよう、「gene awareness」という言葉を掲げ遺伝性腫瘍に関する教育プログラムを展開していることを挙げ、「適切な治療の選択につながってほしい」と期待を込めて話しました。

太宰さんは「(自身に乳がんが見つかった)2011年頃から比べると、30%以上もの人が知っているというのは大きく前進したと感じる。遺伝学的検査が保険収載されたことで、受けたくてもできなかったという精神的な苦しみが解消されることにつながったのでは」と話した上で、「今回11月8日がHBOCに関連する記念日となったことが、他の遺伝性腫瘍の理解や気づきにもつながっていってほしい」と力強く話しました。

今日、11月8日は、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を考える日です。

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