遺伝子治療の開発は今後ますます増加すると考えられる
ファイザー株式会社は、一般の方を対象に行った遺伝子治療に関する意識調査の結果を発表しました。
遺伝性疾患はDNAの塩基配列の変異により引き起こされる疾患で、日本では指定難病とされている338疾患のうち55%を占めています。遺伝性疾患の治療には遺伝子治療が大きな役割を果たすことが期待されており、すでにいくつかの遺伝子治療薬が実用化されています。世界でも遺伝子治療製品の開発数は増加しており、今後ますます増加していくと考えられています。
しかし、新たな製品や技術についてさまざまな情報が溢れる中で、誤解や理解不足が適切な治療選択の妨げにならないよう、社会全体で正しく理解することが重要となっています。こうした背景を踏まえ、同社は遺伝子治療に対する一般の方の意識を明らかにするために調査を実施しました。
過去1年で遺伝子治療に関する情報を「見聞きしなかった」人は7割
調査期間は2024年9月13日~18日、医薬関連業種や遺伝子治療に関わる患者さん・ご家族を除いた一般の方(47都道府県の20代以上の男女)を対象に実施。スクリーニング調査として1万人、本調査として829人の方に対し、インターネット調査が行われました。
調査の結果、以下のことが明らかになりました。
まず、スクリーニング調査として1万人の方に「遺伝子治療という言葉をどの程度知っていますか」という質問に回答してもらったところ、「初めて聞いた」と回答した人は全体の30%となっていました。
次に、遺伝子治療という言葉を聞いたことがあると答えた829人に対し、本調査として遺伝子治療に対する理解や意識を問う調査が行われました。
この中で、遺伝子治療の理解度を問う質問において、全問正解したのは全体の1.6%で、残りの98.4%は間違った選択や「わからない」と回答していたことが明らかになりました。この結果から、多くの人が遺伝子治療に対して誤解や理解不足があることが示唆されました。
さらに、遺伝子治療に対する印象についての質問では、最も強い印象として「怖い、危険、不安」といったネガティブな印象を回答した人は全体の46%、「期待している、革新的、他の治療法より優れている」とポジティブな印象を回答した人は51.5%でした。
また、過去1年間で、自分で調べた場合を除いて、遺伝子治療に関する情報を見聞きしたことがありますか。という質問では、遺伝子治療に関する情報を「見聞きしなかった」人は71.5%でした。見聞きしたことのある人のうち、84.7%はメディアから情報を得ていることがわかりました。
今回の調査結果から、一般の方々に遺伝子治療という言葉自体がまだ浸透していないことや、遺伝子治療への誤解・理解不足がある実態が明らかになりました。
栃木県立リハビリテーションセンターの山形崇倫理事長兼所長は、「患者さんのみではなく、社会全体が遺伝子治療とはどういうものなのか、また、その効果と課題を正しく理解することが必要。遺伝子治療が適切に発展するように、さまざまな角度から、正しい情報発信が行われることを願っている」と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)