オスラー病、骨髄腫治療薬「ポマリドミド」の有効性を臨床試験で確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. オスラー病の出血症状を長期間に渡って管理できるような治療薬はない
  2. オスラー病に対するポマリドミドの有効性・安全性評価する臨床試験実施
  3. ポマリドミド投与により、鼻血の重症度・輸血や鉄分補給の回数・生活の質を改善

過度の鼻血・消化管粘膜などの出血により貧血や生活の質の低下につながる

米国国立衛生研究所(NIH)は、オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症、HHT)の治療において、多発性骨髄腫などで使用されている治療薬「ポマリドミド」が有効かつ安全であることが臨床試験において示されたと報告しました。

オスラー病は、世界中で5,000人に1人が発症すると推定されるまれな出血性疾患です。体内の血管の形成に影響を及ぼすことが特徴で、血管が直線的に成長せず絡み合ってねじれます。そのような血管はもろく壊れやすく、この病気では過度の鼻血のほか消化管などの粘膜などでも出血が見られます。出血症状は加齢とともに進行し、貧血や生活の質の低下につながるだけでなく、重症の場合は、命に関わる場合もあります。

オスラー病の出血に対する治療は、鼻や消化管における異常な血管を閉鎖する手法などがとられますが、長期間において出血を管理できるような治療薬はまだありません。

骨髄のがんである多発性骨髄腫や、米国ではカポジ肉腫と呼ばれるがんで使用されている治療薬「ポマリドミド」は、異常な血管の成長を阻害する作用がある薬です。研究グループは、同剤がオスラー病にも有効であると考えました。

中間解析で事前に規定された有効性の基準を満たし、早期に終了

今回行われた臨床試験(PATH-HHT試験)では、2019年11月から2023年6月までの間に、米国の11の医療機関において成人のオスラー病患者さん144人が登録されました。全員が、鉄分補給や輸血を必要とするような中等度から重度の鼻血の症状があり、試験開始時に、出血評価ツールを使用して鼻血の重症度が採点されました。

参加者のうち95人はポマリドミドを1日4mg内服しました。便秘・発疹・白血球数の減少などの副作用が見られた場合には1日3~2mgに減量されました。49人は、通常の治療に加えて、ポマリドミドの錠剤そっくりに設計されたプラセボが毎日投与されました。期間中、鼻血の重症度や症状が日常活動に与える影響などの自己申告のほか、輸血や鉄分補給などが記録されました。

解析の結果、ポマリドミドを内服したオスラー病患者さんにおいて、鼻血の重症度のスコアが有意に改善、輸血や鉄分補給の回数が減り、生活の質のスコアも改善したことが明らかになりました。

同試験は、開始から43か月が経過した時点で、中間解析によりポマリドミドが事前に規定された有効性の基準を満たしていることが明らかになったため、予定されていた4年間よりも早期に終了されました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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