脳の細い血管が傷つき、高い確率で脳梗塞を発症
国立循環器病研究センターを中心とした研究グループは、CADASILの患者さん12人のデータを解析し、rt-PA静注療法がCADASILに関連する急性期脳梗塞においても安全かつ有効である可能性を見出したと報告しました。
CADASILは皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症とも呼ばれ、NOTCH3遺伝子の変異によって、脳の細い血管が傷つき、高い確率で脳梗塞を発症する遺伝性疾患です。
日本国内では、一般的な脳梗塞の原因となる脳血管の急性閉塞に対して、脳血管の血栓を物理的に除去する「血管内血栓回収療法」や、血栓を溶かす作用のある「rt-PA静注療法」という治療が行われています。
しかしながら、CADASILの患者さんに生じた脳梗塞については、これまでに確実な有効性が示された治療法はありません。また、欧州のガイドラインでは、CADASILの患者さんに対してrt-PA静注療法を行うべきではないと記載されており、医師が治療を選択する際にrt-PA静注療法について慎重に検討しなければならない現状がありました。
研究グループは、CADASILの患者さんの重要な臨床情報を網羅的に収集する世界最大のデータベース、「CADREA」(CADASIL Registry in East Asia)の構築を進めています。今回、このデータベースに登録され、過去に脳梗塞を発症しrt-PA静注療法が行われた12人のCADASILの患者さんのデータから、rt-PA静注療法の有効性と安全性を評価しました。
rt-PA静注療法による脳出血の合併は認めなかった
解析の結果、rt-PA静注療法を行った12人中10人は、治療90日後の時点で、脳卒中の患者さんの障害や日常生活動作の制限を0から6の7段階で評価する(数値が大きくなるほど重度の障害を意味する)指標「modified Rankin Scale」で、0または1の日常生活に支障がない状態まで回復していました。
また、脳出血の合併も認められず、これらの結果はCADASILの患者さんにrt-PA静注療法が有効であったことを示していました。
研究グループは今回の結果について、解析した症例が少ないことや研究の手法などから結果の解釈は慎重に行なう必要がある、としながらも、今後CADASILの患者さんが急性期脳梗塞を発症した際の治療方針の決定において、重要な参考データになると予想される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)