無又は低ガンマグロブリン血症治療剤「ハイキュービア」が日本で製造販売承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 日本初かつ唯一の促進型皮下注用免疫グロブリン製剤が製造販売承認取得
  2. 免疫グロブリン製剤とヒアルロニダーゼ アルファ製剤の組合せで拡散と吸収を促進
  3. より大量の皮下投与が可能かつ投与頻度も減らすこともでき、患者さんの負担を軽減

国内初の促進型皮下注用免疫グロブリン製剤承認、患者さんの負担軽減へ

武田薬品工業株式会社は、「ハイキュービア(R) 10% 皮下注セット」(一般名:皮下注用人免疫グロブリン10%・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)組み合わせ製剤)について、「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能または効果として、製造販売承認を取得したと発表しました。

無又は低ガンマグロブリン血症は、原発性免疫不全症(PID)または続発性免疫不全症(SID)によって抗体が体内に無い、あるいは減少した状態で、重篤な感染症に何度もかかりやすくなることを特徴とする疾患です。

ハイキュービアは、皮下注用人免疫グロブリン(SCIG)10%製剤とボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(rHuPH20)製剤を組み合わせた国内で初めての「促進型皮下注用免疫グロブリン製剤」です。rHuPH20を皮下注射して皮下組織の透過性を一時的に高め、その後同じ部位にSCIG10%を皮下注射することで、SCIG10%の拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になります。静脈路の確保が不要という皮下注射薬の特徴に加え、大量に投与できるので、注射の頻度を従来の皮下投与製剤に比べて軽減することが可能です。従来の皮下投与製剤は、注射の頻度が1週または2週間隔であるのに対して、3週または4週間隔となり、無又は低ガンマグロブリン血症患者さんの負担軽減につながると期待されます。

PIDの日本人患者さんを対象とした臨床試験で有効性と安全性を確認

今回の承認は、主に有効性、安全性、忍容性および薬物動態を評価するために実施された、日本人のPID患者さんを対象とした2つの主要な非盲検非対照臨床第3相試験(TAK-771-3004試験NCT05150340、TAK-771-3005試験NCT05513586)に基づくものです。2歳以上の日本人患者さん16人を対象にしたこの臨床試験により、ハイキュービアの有効性と安全性が評価されました。最後の3回の来院における治療効果の指標は、「IgGトラフ値の幾何平均値=9.494g/L」であり、静注または皮下注用人免疫グロブリン製剤による治療(IgGトラフ値の幾何平均値=9.624g/L)と比較し同程度に維持されました。主な副作用は、発熱5例(31.3%)、注入部位紅斑、注射部位紅斑、注入部位腫脹、注入部位疼痛および頭痛2例(各12.5%)でした。今回の製造販売承認申請の評価資料には、北米でPIDの患者さんを対象に行われた2つの海外臨床第3相試験(160603試験NCT00814320、160902試験NCT01175213)も含まれました。

なお、ハイキュービアは、現在、「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を予定する効能または効果とした製造販売承認申請の審査中です。(遺伝性疾患プラス編集部)

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