家族性ALS、SOD1遺伝子の変異タイプで症状が異なることを発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因の1つがSOD1遺伝子変異
  2. 日本人の家族性ALSにおけるSOD1遺伝子バリアントの種類と特徴が明らかに
  3. ALSの病態解明と遺伝子治療薬の改良・開発への応用に期待

日本人の家族性ALSではSOD1遺伝子変異が最も多い

東北大学は、日本の家族性ALS家系の大規模な遺伝子解析を行い、患者さんが持つSOD1遺伝子の変異(バリアント)の種類と割合、症状の違いを明らかにしたと発表しました。

ALSは、脳や脊髄にある運動神経細胞が変性する神経変性疾患です。発症年齢や罹病期間などは患者さんによって異なりますが、筋力低下・筋萎縮・麻痺などの症状が徐々に進行します。ALSの約10%は家族性であり、原因遺伝子のひとつとしてSOD1遺伝子が同定されています。日本人の家族性ALS患者さんでは、SOD1遺伝子の変異が最も高頻度であることが報告されており、SOD1遺伝子の変異を伴うALSの詳細な解析が望まれていました。

日本人の家族性ALSにおけるSOD1遺伝子変異の特徴が明らかに

研究グループは、家族性ALSの全160家系についてSOD1遺伝子に焦点を当てた大規模な遺伝学的解析を行いました。その結果、26種類のSOD1遺伝子変異を49家系56例に同定し、その中ではp.His47Arg(H46R)、p.Leu127Ser(L126S)、p.Asn87Ser(N86S)の3つの変異の頻度が特に高いことを明らかにしました。また、これまでに同定されていない新しい変異を2家系に見出しました。

SOD1遺伝子に変異を有するALS患者さんの発症年齢は平均48.9歳で、70%が下肢から発症していました。罹病期間の平均は64.7か月で、症状は変異の種類によりさまざまで、同一の家系内でも異なる場合がみられました。例えば、p.His47Arg(H46R)を有するALSは、症状が均一で、下肢から発症し、進行は遅く、筋萎縮、線維束性収縮、腱反射の低下が主体でした。一方、p.Leu127Ser(L126S)は、ホモ接合(両方の遺伝子に変異がある)では進行が速いのに対し、ヘテロ接合(片方の遺伝子だけに変異がある)では進行が遅く、症状が現れない例があることも明らかになりました。また、p.Asn87Ser(N86S)は、同一の家系内でも症状や発症の確率が異なり、多様性がありました。さらに、急速な進行がみられる4種類の変異も同定されました。

今回の研究の成果は、ALSの病態解明に貢献すると同時に、将来的な遺伝子治療薬の改良・開発につながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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