体が繰り返し腫れる希少疾患、早期診断と診断率向上が課題
京都大学医学附属病院は、遺伝性血管性浮腫(HAE)を早期発見するためのAIモデルの有用性を日本の電子カルテデータで確認したと発表しました。
HAEは、血管の維持に関わる遺伝子の変異が原因で、体のさまざまな部位が繰り返し腫れる遺伝性疾患。くちびる、まぶたや手足だけでなく、胃腸や気道も腫れることがあります。胃腸が腫れると激しい腹痛や嘔吐が起こり、気道が腫れると窒息の危険があります。HAEは発症率が約5万人に1人というまれな疾患であるため、なかなか診断がつかず、症状に苦しむ患者さんが多くいます。
そこで、HAEの早期診断と診断率向上を目指し、遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)は日本アイ・ビー・エム株式会社と共同で診断予測AIモデルを開発しました。しかし、モデルの構築に使用したのは、患者さんの数が多い米国の電子カルテとレセプト(病名などが記載された医療費請求用の明細書)のデータであったため、このAIモデルを日本の医療機関で運用するには、国内の電子カルテデータでの検証が必要でした。
日本の電子カルテデータで予測AIモデルの有用性を確認
今回の研究では、同病院が保持している電子カルテデータを用いて、AIモデルの予測精度やHAEの可能性が高いと判定された患者さんの傾向などについて評価しました。
その結果、AIモデルでHAEの可能性が高いと判定された患者さんのグループでは、約5人に1人がHAEの確定診断、または疑いありとカルテに記録されていました。このことから、この予測AIモデルを活用することで、これまでにHAEに関する記録がカルテにない患者さんでもHAEを早期診断できるようになる可能性があることがわかりました。
これまで、海外の電子カルテ・レセプトデータを元に構築されたHAE予測AIモデルは、国内の電子カルテへの適用性が懸念されていました。しかし、今回の研究によって、日本でも一定レベルの有用性が確認されました。HAEを疑うべき患者さんも見出されているため、潜在的な患者さんの発見につながることも期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)