デュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子治療薬「エレビジス」、国内承認を取得

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の遺伝子治療薬「エレビジス」が条件および期限付承認を取得
  2. 抗AAVrh74抗体が陰性で、3歳以上8歳未満の歩行可能な患者さんが対象
  3. EMBARK試験では、副次的評価項目「10メートルの歩行時間」などで臨床的に意義のある改善が認められた

標的とする筋肉組織で、短縮型ジストロフィンを発現させる遺伝子治療薬

中外製薬株式会社は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)に対する再生医療等製品として「エレビジス(R)点滴静注(一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク)」が、国内で条件および期限付承認に該当する製造販売承認を取得したと発表しました。同剤の投与対象は、DMDのうち、エクソン8および/またはエクソン9の一部または全体の欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者さんです。

DMDは、小児の早期から急速に進行するまれな遺伝性の筋疾患です。この病気は、主に男児に発症し、歩行能力や上肢機能のほか、肺機能、心機能などにも症状が引き起こされ、命に関わることもあります。DMDは、筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護するタンパク質複合体の重要な成分であるジストロフィンの産生に関わるDMD遺伝子の突然変異が原因で機能のあるジストロフィンが体内で産生されなくなることによって発症します。

エレビジスは、DMDに対する遺伝子治療用製品です。標的とする筋肉組織(骨格筋、呼吸筋、心筋)において、短縮型ジストロフィンを発現させることで、DMDの原因に働きかけるように設計されています。日本ではDMDを対象とした希少疾病用再生医療等製品の指定を受けており、また米国では、DMDに対する初の遺伝子治療用製品として2023年6月に承認、欧州でも2024年5月に申請されています。

また、エレビジスのDMDの適応判定のため、投与前に実施する抗AAVrh74抗体陰性の確認には、エクルーシス試薬Anti-AAVrh74(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)が2025年3月5日に製造販売承認され、使用可能となっています。

エレビジスの承認条件として、条件および期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品の長期の有効性および安全性の確認を目的とした臨床試験並びに本品を使用する全症例を対象とした製造販売後調査により製造販売後承認条件評価を行うこと、など3項目があり、期限は3年となっています。

新たな安全性のシグナルは認めなかった

今回の承認は、国際第3相臨床試験であるEMBARK試験の最大2年間の成績を含む、これまでに実施したエレビジスのすべての臨床試験成績などに基づいて行われました。

EMBARK試験の結果、主要評価項目である運動機能を評価するノース・スター歩行能力評価(NSAA)はプラセボと比較した統計学的な有意差は認められませんでしたが、副次的評価項目である「床から立ち上がるまでの時間」「10メートルの歩行時間」「Stride Velocity 95th Centile[SV95C]」「4段上るまでの時間」において臨床的に意義のある改善が認められました。

またこの試験において新たな安全性のシグナルは認められませんでした。

同社の代表取締役社長CEOの奥田修氏は、「本品は、1回の投与でDMDの原因となるジストロフィンの欠損を補うよう設計された根本的な治療法です。DMDの治療が限られている中、新たな治療選択肢となるエレビジスを日本の患者さんに一日も早くお届けできるよう、発売に向け準備を進めてまいります」と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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