胆汁うっ滞に伴う激しいそう痒はQOLの低下につながる
武田薬品工業株式会社は、アラジール症候群と進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(以下、PFIC)で見られる重度のそう痒(そうよう、かゆみのこと)の治療薬として、回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬「リブマーリ(R)内用液10mg/mL」(一般名:マラリキシバット塩化物、以下、リブマーリ)を発売したと発表しました。
アラジール症候群は、肝臓、心臓、腎臓、中枢神経系などさまざまな臓器に症状が見られる遺伝性疾患です。多くの場合、胆汁うっ滞(肝臓で産生される胆汁の流れが阻害されて正常に排出されない状態)が引き起こされ、これにより進行性の肝機能障害につながる可能性があります。症状としては、黄疸(皮膚の黄ばみ)、黄色腫(皮下組織へのコレステロールの異常沈着)、そう痒などがあり、アラジール症候群で見られるそう痒は、慢性肝疾患の中でも最も重度で、生後3年以内に発症することが多いとされています。
また、PFICは、肝細胞の胆汁を分泌する能力が低下し、肝細胞内に胆汁の蓄積が起こることにより、進行性の肝疾患に至るまれな遺伝性疾患です。PFICの症状は乳児期から現れ始めることが多く、重度のそう痒、黄疸、成長障害、肝機能低下などが認められます。
アラジール症候群もPFICも、どちらも乳幼児期に診断されることが多い疾患で、胆汁うっ滞に伴う激しいそう痒は患者さんやご家族の夜間の不眠やQOLの低下につながります。しかし、これまで日本では胆汁うっ滞に伴うそう痒に対する治療薬はありませんでした。
リブマーリは、経口投与可能な回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬であり、アラジール症候群/PFIC患者さんにおける胆汁うっ滞性のそう痒症に対する、日本で初めての治療薬として2025年3月27日に承認されました。
アラジール症候群では40か国以上、PFICでは30か国以上で承認済み
日本におけるリブマーリの製品概要は以下の通りです。
販売名:リブマーリ内用液10mg/mL
一般名:マラリキシバット塩化物
効能または効果:次の疾患における胆汁うっ滞に伴うそう痒
・アラジール症候群
・PFIC
用法および用量:
【アラジール症候群】通常、マラリキシバット塩化物として、200μg/kgを1日1回食前に経口投与する。1週間後、400μg/kg 1日1回に増量する。
【PFIC】通常、マラリキシバット塩化物として、300μg/kgを1日1回食前に経口投与する。1週間後、1回300μg/kg 1日2回に増量する。さらに、1週間後、1回600μg/kg 1日2回に増量する。
リブマーリの国内における製造販売承認は、アラジール症候群を対象とした国内臨床第3相試験(TAK-625-3001試験、NCT05543174)、PFICを対象とした国内臨床第3相試験(TAK-625-3002試験、NCT05543187)、海外で行われた複数の臨床試験で得られたエビデンスに基づいて行われました。
同剤は、アラジール症候群では40か国以上、PFICでは30か国以上で承認されています。米国のMirum Pharmaceuticals社が開発した薬剤で、武田薬品工業はMirum Pharmaceuticals社と2021年9月に日本における独占的開発・販売に関するライセンス契約を締結しました。(遺伝性疾患プラス編集部)