レックリングハウゼン病を持つお子さんとの向き合い方~当事者・ご家族・医師の立場から

遺伝性疾患プラス編集部

アストラゼネカ株式会社は12月12日、「病院では教えてくれないお話 お子さんが前向きにレックリングハウゼン病とつきあうために」と題したWEB市民公開講座を開催。座長として、慶應義塾大学医学部教授の佐谷秀行先生、講演者として、大阪市立大学大学院医学研究科臨床遺伝学准教授の瀬戸俊之先生、神経線維腫症I型(レックリングハウゼン病、以下、NF1)の患者会・To Smile代表の大河原和泉さん、および、当事者2名が登壇されました。

NF1は、「カフェ・オ・レ斑」という色素斑(あざ)や、「神経線維腫」という腫瘍が皮膚などに生じる遺伝性疾患で、常染色体優性(顕性)遺伝形式で親から子へ遺伝することがわかっています。カフェ・オ・レ斑は、ミルクコーヒー色をした色素斑で、多くの場合、生まれた時から見られます。一方、皮膚の神経線維腫は、思春期頃から少しずつ生じます。神経線維腫は、皮膚の深いところや体の奥にある大きな神経にできる場合もあります。

今回の市民公開講座では、NF1患者さんやそのご家族、日々の診療に関わる医師、それぞれの立場の方々が、「お子さんとの向き合い方」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

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写真はイメージ

子どもの将来への不安は一人で抱え込まないで、正しい情報も大切に

最初のテーマは、「子どもの将来への不安とどう向き合う?」。病気に関わるさまざまな不安に対して、皆さんはどのように対処しているのでしょうか?

まず、ご自身とお子さんがNF1当事者である方が、「不安や悩みを共有する場を持つこと」を提案しました。この方は、NF1がお子さんに遺伝する可能性を理解していたものの、実際にお子さんがNF1を持つと知った時は落ち込んだと言います。そんな時に、患者会で病気に関する悩みを共有できたことで、徐々に不安を解消できたそうです。

続いてお話をされたのは、ご自身と双子のお子さんがNF1当事者の方です。「不安な気持ちを一人で抱えこまないことが大切」とし、同じく、誰かに相談できる環境を整えることの大切さを述べました。

そして、「病気を正しく知ることが大切」と話したのは大河原さん。大河原さんは、末っ子のお子さんが生後3か月でNF1と確定診断を受けました。診断を受けた直後、インターネットで病気のことを検索しては不安になり、悩んだと言います。しかし、「悩むのは子どもで、自分ではない。だから、悩んでいる暇はない」と考え、NF1についての理解を深めました。「正しく知ることで、親として子どもに最善を尽くすことができる。また、子どもと向き合うための準備ができる」と述べ、病気について正しく理解することの大切さを伝えました。

最後に、瀬戸先生も「病気について、正しい情報を得ることが大切」とし、「疑問に思ったことは、医師に質問してください」とコメント。また、病気に関する不安を解消する手段の一つとして、「遺伝カウンセリング」を挙げました。遺伝カウンセリングでは、遺伝性疾患など生まれつきの病気に関するさまざまな不安について相談できます。多くの場合、大学病院などに設置されている「遺伝診療部」などで、認定遺伝カウンセラーへ相談し、サポートしてもらうことが可能です(詳しくは、コチラの専門家インタビューへ)。

「普段の診療で、医師と話せる時間は限られているのが現状」と、瀬戸先生。だからこそ、「遺伝カウンセリングという手段を知って欲しい」と、述べました。

病気の話、子どもへの伝え方は?

次のテーマは、「いつ、どのように子どもに伝える?」。幼いお子さんへ、病気のことをどう伝えるべきか悩んだ経験のある方もいらっしゃると思います。皆さん、どのように考え、対応されているのでしょうか?

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まず、先ほど共有の大切さをお話しされた当事者の方が、「その時、その子が理解できる言葉で伝えたい」と話しました。その裏には、ご自身が、20歳になるまで病気を知らされずに育った背景がありました。幼い頃から「なぜ、自分にはあざがあるのだろう…」と、カフェ・オ・レ斑の症状で悩んでいたというこの方は、ご自身がNF1だと知った時にやっと自分を受け入れることができたと言います。そのため、「少しずつで良かったので、両親から病気のことを聞きたかった。もっと、一緒に病気のことを話したかった」とも思ったそうです。そういったご自身の経験から、お子さんにNF1の伝えたいと考えられているとのことでした。

続いて、双子のお子さんがいる当事者の方も、お子さんがわかるよう工夫しながら病気のことを伝えているとお話しされました。具体的には、お子さんたちへNF1について「お母さんと同じ病気だよ」と伝えているそうです。カフェ・オ・レ斑については「お母さんと同じマークだよ」と伝えており、お子さんから「消せるの?」と質問された時は「消せないよ」と、説明したそうです。その理由は、今は学校でもタブレットが支給される時代で、お子さんたちが自分で病気のことをインターネットで調べることが可能だからだそうです。「病気のことは、自分で調べて知るより、家族の言葉で知って欲しい」と、ご自身の想いを述べました。

大河原さんも、お子さんが疑問に思ったことに対しては、わかりやすく、かみ砕いて話しているとコメント。「子どもへ嘘をつかないことを心がけている」と述べました。

瀬戸先生は、「子どもに病気をなかなか伝えられない、とおっしゃる親御さんも珍しくありません」とした上で、時間をかけて正しく病気のことを伝えていく大切さをお話しされました。


病気に関わるお子さんとの向き合い方に、正解はありません。しかし、もし悩む時があれば、今回ご紹介した皆さんの経験や考え方を思い出して頂き、一つの選択肢として知って頂ければ幸いです。(遺伝性疾患プラス編集部)

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