神経線維腫症I型

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Neurofibromatosis type 1
別名 レックリングハウゼン病、フォンレックリングハウゼン病、NF1
日本の患者数 約4万人(約3,000~3,500人に1人の頻度)
子どもに遺伝するか 遺伝する(常染色体優性遺伝)が、半数以上は孤発例
発症年齢 カフェ・オ・レ斑は、ほとんどの患者さんで生まれつき。その他の症状はさまざま
性別 男女とも
主な症状 カフェ・オ・レ斑、神経線維腫
原因遺伝子 NF1遺伝子
治療 対症療法(NF1治療薬は希少疾病用医薬品指定を受け開発中)
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どのような病気?

 

神経線維腫症I型(NF1)は、皮膚に「カフェ・オ・レ斑」と呼ばれる色素斑ができ、「神経線維腫」という腫瘍が皮膚などに生じ大きくなることを特徴とする、遺伝性疾患です。国の指定難病対象疾病になっています(指定難病34)。最初にこの病気を報告した人物の名前を取って、レックリングハウゼン病とも呼ばれています。

カフェ・オ・レ斑は、ミルクコーヒー色をした色素斑で、ほとんど全ての患者さんで、生まれた時からみられます。形は長円形のものが多く、子供では直径0.5cm以上、大人では1.5cm以上のものが6個以上みられます。その他、わきや足の付け根に「雀卵斑(じゃくらんはん)様色素斑」と呼ばれる、そばかすのような小さな色素斑ができます。

皮膚の神経線維腫は、生まれたときには見られず、思春期ごろから少しずつできてきます。何個できるかは、個人差があります。皮膚の深いところや体の奥にある大きな神経に神経線維腫ができることもあり、これは多くの場合、痛みを伴います。また、生まれつきある大きな色素斑の下に神経線維腫ができ、徐々に大きくなって垂れ下がってくることもあります(びまん性神経線維腫)。

その他、まれですが、生まれつき骨に異常がある場合や、徐々に背骨が曲がってくる場合、成人してから脳や脊髄などに腫瘍ができる場合などがあります。また、頻度は数%以下でまれですが、悪性腫瘍を合併する割合が、この病気ではない人と比べてやや高いとされています。また、女性の場合は、NF1患者さんの方が、そうでない人に比べ50歳以前で5倍、生涯で3.5倍 乳がんのリスクが高いとされています。

NF1の主な症候と日本における合併率および初発年齢(出典:日本皮膚科学会 神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)診療ガイドライン 2018)

症候合併頻度初発年齢
カフェ・オ・レ斑95%出生時
皮膚の神経線維腫95%思春期
神経の神経線維腫20%学童期
びまん性神経線維腫10%学童期
悪性末梢神経鞘腫瘍2%30歳前後が多い(10~20%は思春期頃)
雀卵斑様色素斑95%幼児期
視神経膠腫7~8%小児期
虹彩小結節80%小児期
脊椎の変形10%学童期
四肢骨の変形・骨折3%乳児期
頭蓋骨・顔面骨の骨欠損5%出生時
知的障害(IQ<70)6~13%幼児期
限局性学習症20%学童期
注意欠如多動症40~50%幼児期
自閉スペクトラム症20~30%幼児期
偏頭痛25%学童期
てんかん6~14%小児期
脳血管障害4%小児期

重症の患者さんはそれほど多くありませんが、ほとんどの患者さんで、色素斑が見られ、神経線維腫が現れます。この病気は症状に個人差が大きく、親子やきょうだいであっても症状は全く同じではありません。また、患者さんの年齢によっても気をつけなければならない症状は異なります。

NF1の女性患者さんの多くは、正常に妊娠、出産をします。ただし、妊娠中に神経線維腫の数や大きさが急速に増大する、妊娠中に高血圧になる/悪化する、分娩の障害になるような大きな神経線維腫がある場合は帝王切開になる、など、注意が必要な合併症もあります。

この病気は、約3,000~3,500人に1人の頻度で発症し、日本には患者さんが約4万人いると推定されています。男女で発症しやすさに差はありません。

なお、神経線維腫症II型という、とてもよく名前の似た病気があるのですが、これは、NF1とは原因や症状が異なる別の病気です。

何の遺伝子が原因となるの?

NF1の原因遺伝子は、17番染色体の17q11.2という位置に存在する「NF1遺伝子」であるとわかっています。この遺伝子は「ニューロフィブロミン」というタンパク質の設計図となる遺伝子です。ニューロフィブロミンは、神経細胞や、神経細胞を取り巻く「ミエリン鞘」を形成する、オリゴデンドロサイトやシュワン細胞などで産生されます。ニューロフィブロミンは、Rasというタンパク質の働きを抑えることで、細胞の増殖を抑制する働きをもつと考えられています。NF1遺伝子に変異があると、このブレーキが外れ、細胞の増殖や分裂が速くなったり、細胞分裂が制御できなくなったりして、さまざまな症状を起こすと考えられています。

NF1は常染色体優性遺伝形式で、親から子へ遺伝します。変異したNF1遺伝子を持っていた場合、ほぼ100%がNF1を発症するため(浸透率100%といいます)、両親のどちらかがこの病気だった場合、子どもが病気を発症する確率は50%となります。ただし、患者さんの半数以上は、親から遺伝するのではなく、子どもに新たな変異が起こり発症しています(このような発症パターンは、孤発例といいます)。

常染色体優性遺伝

どのように診断されるの?

NF1には、医師がNF1と診断するための「診断基準」があります。したがって、病院へ行き、必要な問診や検査を受けた後、主治医の先生がそれらの結果を診断基準に照らし合わせ、結果的にNF1かそうでないかの診断をすることになります。

遺伝子検査を行い、NF1遺伝子に、病気の原因となる変異が同定されれば、NF1と診断されます。NF1遺伝子に見つかった変異が、確かに病気の原因となっているかどうかは、専門家の意見を聞きながら慎重に行われます。

遺伝子検査で変異が見つからなかった場合でも、検査の精度などの理由から、「NF1ではない」とは言い切れません。そのため、遺伝子検査の結果を用いる「遺伝学的診断基準」とは別に、「臨床的診断基準」があります。臨床的診断基準は、「6個以上のカフェ・オ・レ斑」「2個以上の神経線維腫(皮膚の神経線維腫や神経の神経線維腫など)またはびまん性神経線維腫」「腋窩あるいは鼠径部の雀卵斑様色素斑」「視神経膠腫」「2個以上の虹彩小結節」「特徴的な骨病変の存在(脊柱・胸郭の変形、四肢骨の変形、頭蓋骨・顔面骨の骨欠損)」「家系内(第一度近親者)に同症」の7項目あり、このうち2項目以上が当てはまった場合に、NF1と診断されます。ただし、カフェ・オ・レ斑と腋窩あるいは鼠径部の雀卵斑様色素斑だけの場合は、NF1でなく「レジウス症候群」という別の病気である可能性もあります。その他、「多発性カフェ・オ・レ斑」「若年性ヒアリン線維腫症」など、症状の似た病気が複数あるため、それらの病気とは異なることも、確認されます(鑑別診断)。

また、臨床的診断における、その他の参考所見として、「大型の褐色斑」「有毛性褐青色斑」「若年性黄色肉芽腫」「貧血母斑」「脳脊髄腫瘍」「Unidentified bright object(UBO)」「消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor、GIST)」「褐色細胞腫」「悪性末梢神経鞘腫瘍」「限局性学習症(学習障害)・注意欠如多動症・自閉スペクトラム症」が挙げられています。

診断は、「患者さんの半数以上は孤発例で、両親ともにNF1ではない(家族歴がない)ことも多くある」「幼少時期にはカフェ・オ・レ斑以外の症候がみられないことも多い」「個々の患者さんにすべての症候がみられるわけではなく、症候によって出現する時期も異なる」といった点に注意をしつつ、慎重に行われます。

どのような治療が行われるの?

今のところNF1を根本的に、つまり、遺伝子から治すような治療法は見つかっていません。しかし、2020年の7月に、「セルメチニブ」という薬が、NF1の治療薬として、日本で希少疾病用医薬品指定を取得しました。この指定は、患者数5万人未満で重篤な疾病の治療を目的とした医薬品に対して、厚生労働省が開発支援のために行っているものです。まだ日本で承認されているわけではありませんが、今回の指定は、日本のNF1患者さんに対する初の治療薬として提供されるための重要な一歩となります。セルメチニブは、細胞分裂の際にはたらくタンパク質を阻害することで、腫瘍の増殖を抑えるように設計された薬です。叢状神経線維腫を有する小児患者さんに対しての有効性が臨床試験で確認されており、米国では小児患者さんの治療薬として承認されています。小児だけでなく成人に対しても、海外で複数の臨床試験が行われています。また、この薬以外にもNF1治療薬として検討されている薬が複数あり、海外で多くの臨床試験が行われています。

現れた症状に対して行われる治療は「対症療法」と呼ばれます。対症療法では、例えば、皮膚の病変は皮膚科や形成外科、発達や成長の心配については小児科、骨の病変は整形外科など、それぞれの症状に応じた診療科の専門医による治療を受けます。治療の難しい症状の場合にはNF1に詳しい医師と連携して治療が行われることもあります。

多くの患者さんが外見上の問題に悩みますが、主治医の先生とよく相談しながら治療を進めていきます。皮膚の色素斑に対して、希望があればレーザー治療やカバーファンデーションの使用などが検討されます。ただ、いったん色が薄くなっても再発することが多く、逆に色が濃くなってしまうこともあります。皮膚の神経線維腫も、気になる場合は手術で取り除くことがあります。

固いしこりができて急に大きくなったときには、悪性腫瘍の可能性があるため、早めに専門の医療機関に相談するようにしてください。また、びまん性神経線維腫のある人で腫瘍が急に大きくなった場合は、腫瘍内部の出血の可能性もあります。この場合、すぐにかかりつけの医療機関を受診してください。子どもの患者さんは半年〜1年に1回程度、大人の患者さんは1年~数年に1回程度、定期的に受診することが重要です。

どこで検査や治療が受けられるの?

患者会について

NF1の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

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参考サイト