未診断疾患と向き合って20年以上、いま当事者が伝えたいこと

遺伝性疾患プラス編集部

menome(めのめ)さん(女性/41歳/未診断疾患患者さん)

menome(めのめ)さん(女性/41歳/未診断疾患患者さん)

18歳の頃に症状が現れ始め、遠位型ミオパチーなどさまざまな病気の可能性を指摘されてきた。

しかし、変異遺伝子が見つからず、確定診断がつかずにいる。

現在は「未診断疾患イニシアチブ(IRUD)」に参加しており、結果待ち。

 

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症状が現れているものの、原因がわからない病気を「未診断疾患」と言います。日本では2015年に、こういった未診断疾患の患者さんのために、「未診断疾患イニシアチブ(IRUD、アイラッド)」というプロジェクトが立ち上がりました。IRUDの活動により、6年間で2,247家系の原因が確定するなど、多くの未診断疾患の患者さんたちへの支援が広がる一方で、いまだに未診断疾患と向き合う患者さん・ご家族が多くいるのも事実です。

今回お話を伺ったのは、20年以上、未診断疾患と向き合ってきたmenomeさん。現在、IRUDに参加中で、結果を待っている状況です。眼咽頭遠位型(がんいんとうえんいがた)ミオパチーなど、さまざまな疾患の可能性があったものの、なかなか診断に至っていないmenomeさん。現在は、未診断疾患であることをSNSで公表し、イラストレーターとしてさまざまな作品を発信しています。作品の中には、ご自身の未診断疾患と向き合う日々を作品にした漫画もあります。今回は、未診断疾患の当事者として情報発信を続ける理由や、menomeさんのこれまでのご経験について、お話を伺いました。

眼咽頭遠位型ミオパチーの可能性がなくなり、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)参加へ

現在の症状について、教えてください。

進行はゆるやかですが、さまざまな症状が現れています。まず、眼瞼下垂(がんけんかすい)です。初期の頃、両まぶたに赤みや腫れが生じ、症状が落ち着いた後も右まぶたの下垂が残りました。そのため、眼瞼挙筋短縮術という手術を受けました。また、声がれなどの症状もあり、大きな声を出すのは難しい状況です。

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眼瞼下垂、声の症状など、さまざまな症状が現れている。

その他、筋力低下の症状もあります。首(特に、後ろ側)の筋力低下や、手の筋力低下があり、手を開くことが難しいです。全体的に疲れやすく、疲れが取れにくい傾向があります。子どもの頃から、周りの子と比べて疲れやすいと感じることがあったので、もしかすると病気と関連していたのかもしれません。

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子どもの頃から、疲れやすいと感じることがあった。

また、病気とは直接関係ないかもしれませんが、斜視、視界の制限や重なり、ドライアイ、体のゆがみなどの症状もあります。

病気について、医師からはどのような説明を受けていますか?

さまざまな検査を受けて、一番可能性が高いと説明を受けたのは「眼咽頭遠位型ミオパチー」でした。そのため、私は約10年、「自分は、眼咽頭遠位型ミオパチーなのかもしれない」と考えてきました。ただ、他の眼咽頭遠位型ミオパチー患者さんと比べると症状の進行がゆるやかなため、主治医は別の病気の可能性も考えていたそうです。例えば、他の患者さんでは足の筋力低下などを理由に車いすを利用する方もいますが、私の場合、自立歩行を続けることができています。患者会で、眼咽頭遠位型ミオパチーの患者さんに実際にお会いしたことがあるので、私自身、自分と他の患者さんとの違いを感じていました。

そして、2019年頃、眼咽頭遠位型ミオパチーの原因遺伝子を調べる検査結果が陰性だったことで、別の病気である可能性が強くなりました。その時は、残念な気持ちでいっぱいだったことを覚えています。眼咽頭遠位型ミオパチーの可能性に至るまでも、さまざまな検査を受けてきて「やっと…!」という状態だったので。また、自分の病気がわからない状態に戻ったと感じ、落ち込みました。

その後、2021年頃に未診断疾患イニシアチブ(IRUD)に参加し、現在は、遺伝子解析の結果を待つ状態です。医師から「結果がわかるのは、早くても1年くらい時間がかかる」と、聞きました。「やっと、これで原因がわかるかもしれない」という気持ちとともに、結果を待っています。

周りに自身の状態を説明する難しさなど、課題も多い未診断疾患

現在、病気の診断がつかないことで苦労されていることはありますか?

病名がわからないので、自分が欲しいと思う情報を探すことが本当に難しいです。例えば、治療法について調べたいと思っても、病名がわからないことで、根本的な治療法があるかさえもわからない状態です。

また、未診断の期間が長いために、複数の病院を受診したこともありますし、さまざまなきっかけから通院が途絶えた時期もありました。通院をやめた理由として、例えば、主治医の異動がきっかけとなったことや、毎回、経過の確認や呼吸器などの定期的な検査を受ける程度なので、優先順位が下がったことなどがありました。ただ、新しい情報を得るためには医療機関との接点を持ち続けることが大事だと考え、今は定期的な通院を欠かさないようにしています。

その他、未診断疾患とは別の理由で医療機関へ受診する際、自身の状態を説明するのに苦労します。どういった症状が現れているのかを説明することはできますが、相手が理解できるように説明するのが難しいと感じています。医療機関の方もいろいろと質問してくださるのですが、診断がついていない状態なので、理解して頂くことは簡単なことではありません。最近では、伝わらない状態をあきらめている感覚もあります。

診断がつかない状況について、ご家族とはどのようなお話をされましたか?

一時期、家族は病気の詳細を知りませんでした。一人で通院していたり、家族とはあまり病気の話をしなかったりしたためです。その後、患者会への入会をきっかけに、私の家族も病気の状態を具体的に知ることとなり、関わり方も少しずつ変わっていきました。

ただ、病気の状態を話す中で、残念に感じた出来事があります。それは、「遺伝性疾患の可能性がある」と両親が知ったことで、「自分たちが出会っていなければ、こんなことにならなかった…」と、目の前で両親が話していたことでした。すでに大人になっていた私は、その言葉によって傷ついたことを伝え、両親に「そういうことは、本人の前で言わないほうがいいよ」と伝えることができましたが、もし幼い時であったら、受け止められていたか自信がありません。

もちろん両親も、さまざまな葛藤があるのだと思います。だけど、今の自分がいるのは両親のおかげですし、私は両親にとても感謝しているんです。だから、もし私の両親と同じように苦しんでいるご家族がいたら、そういったお子さんの気持ちも知ってもらえたらと思います。

病気の診断がつかない状況の方々に、どういった支援があると良いと感じますか?

まず、似た症状を持つ方々との交流の機会があるとうれしいですね。知りたい情報を得るきっかけになるからです。例えば、私が今の病院にたどりつくことができたのは、以前、眼咽頭遠位型ミオパチーの可能性を指摘されていた時期に参加していた患者会での情報があったからです。私の場合は、患者会に参加する機会がありましたが、診断がついていない状態では難しいかもしれません。SNSなどを通じて情報発信を行うことも、似た症状を持つ方々と知り合うきっかけにつながるのではないでしょうか。

また、医療に関わる情報について、正しい情報かどうかを精査できるような支援も大切だと感じています。未診断の場合、病気が定まっていない分、さまざまな情報に触れる機会があると思いますので。当事者には、ぜひ正しい情報を参考にしてもらいたいですね。

未診断疾患であることを発信、さまざまな反響が

SNSで、未診断疾患に関わるご自身の経験について発信を始めた理由を教えてください。

転職したことがきっかけです。以前、健康な方と同じように正社員として働いていた時期がありましたが、パワハラを受けたり不調が続いたりしたことなどから限界を感じ、障がい者雇用で転職しました。転職したことで、SNSでイラストや漫画による情報発信もできるようになりました。今の職場は、デザインやイラストに関わる個人活動をしていきたい私の希望も聞き入れてくれており、とても感謝しています。

また、情報発信をすることで、自分と似たような症状を持つ人に出会いたいという理由もあります。自分のような症例は数が少ないと聞いているので、SNSをきっかけに知り合えたらうれしいですね。

その他、外見からはわかりにくい病気があることや、誰もが「中途障がい者」になる可能性があることも伝えたいと思ったからです。そのため、「未診断疾患」「希少難病」である自身の経験を発信しながら、イラストレーターとして活動しています。

SNSで未診断疾患に関する発信を行うことで、どういった声が届いていますか?

「まさに、私のことが描かれているようだった」といった、共感の言葉を頂く時は本当に嬉しいです。一方で、いわゆる“トンデモ医療”に関する情報提供によって、困ったケースもありました。未診断疾患に対して「力になりたい!」と、何度もメッセージを送って来られたり、特定の健康法の素晴らしさを一方的に語られたりしたこともあります。きっと、善意による行動なのだと思うのですが、複雑な気持ちになりました。

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いわゆる“トンデモ医療”に関する情報提供によって、困ったケースも。

具体的には、例えば、こんなことを言われた経験があります。

(例)

  • 「〇〇をしないから、病気が治らない」
  • 「あなたには、悪霊が憑いている」
  • 「タンパク質をたくさん摂取すれば、遺伝子が書き換わる」

どれも医学的な根拠のない情報ですし、情報を必死に探している未診断疾患の当事者にとっては不安をあおるような言葉だと感じます。一方で、このような経験により、正しい情報を自分で調べるくせがつきました。また、「自分の体に何が起こっているか」について興味を持つようになりました。

未診断疾患をきっかけに、大変な経験もされたんですね。どのように、気持ちの整理をされたのでしょうか?

「いつもハッピーでいること」という言葉のおかげで、自分を納得させることができました。例えば、どんな食べ物でも「感謝して食べること」を大切にしています。あくまでも概念的なものではありますが、「美味しい、ありがたい、幸せ」と感じることを、普段から心がけています。

自分の病気と向き合った結果、新しいイラストのスタイルを確立

menomeさんのお気に入りのイラストと、その理由について教えてください。

中性的な人物を描いたイラストです。2021年に出展したグループ展で、プロフィール画像やポストカードにも使用したほど好きな作品です。

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menomeさんのお気に入りのイラスト

また私自身、中性的なファッションが好きです。近年、ジェンダーの課題が少しずつ解消されてきており、私も以前より生きやすくなったと感じています。そういった背景もあり、「どんな自分であっても、自分自身を否定しないこと」という思いも込めました。また、「何よりも自分を好きでいよう」「自分が自分の一番の理解者・応援者になろう」という気持ちを込めて描きました。

「どんな自分であっても、自分自身を否定しないこと」という思いには、病気も関連しているのでしょうか?

そうですね。私は、もともと自己否定しやすいタイプで、それは病気も含めて、強いコンプレックスを持って生きてきたことも関係していると思います。だけど、どんな人であっても、その人にしかできないことがあると考えられるようになりました。

私の場合、コンプレックスでもある病気は、多くの方々に知ってもらいたいことでもありました。だから、私の体験を漫画として発信することを決意しましたし、それは、自分にしかできないことだと思っています。だから、これからも、絵が「上手」「下手」といったことは関係なく、「自分が描きたい」と思うものを形にして、発信していきたいです。

イラストのタッチが以前と比べて変わったのは、何か理由がありますか?

首に負担のかからないように工夫した結果、今のイラストのタッチになりました。病気の影響で首の後ろの筋肉が弱くなり、痛みが強くなっているためです。

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2021年頃のmenomeさんのイラスト

今のイラストは、首への負担が軽くなったことはもちろん、出来上がったイラストの雰囲気も気に入っています。また、今のタッチに変わってから、周りから「いいね」と言って頂く機会も増えました。自分の病気と向き合った結果、新しいイラストのスタイルが確立されたような気がしています。

イラストレーターとしての目標について、教えてください。

イラストや自身の体験談漫画を通して、障がいへのかき根を低くしていくことです。私の作品をきっかけに、誰かの考え方が変わったり、心があたたかくなったりしてくれたら嬉しいですね。

また、私の夢の一つとして、障がいの有無に関わらず、全ての人が同じ立場で、互いを否定することなく語り合えるような場をつくることがあります。その足がかりとして、障がいがある方と健康な方が共に参加できるようなフリーペーパーのようなものを作ってみたいです。

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「障がいの有無に関わらず、全ての人が同じ立場で、互いを否定することなく語り合えるような場をつくりたい」と、menomeさん

希望を捨てずに、積極的に正しい情報を得よう

最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

「遺伝性疾患」といっても、さまざまな病気があります。そのため、ご自身にとって必要な情報を正しく得ることで、悲観的になりすぎず、うまく付き合っていけたら良いですよね。また、なかなか病気の原因がわからずにいる私のような当事者も、きっと世界中にいらっしゃると思います。ぜひ、希望を捨てずに、主治医などに未診断疾患イニシアチブのことを尋ねるなどして、積極的に正しい情報を得てほしいです。「良い」「悪い」といったフィルターは一旦外して、まずは、正しい情報を得ることを大切にしたいですね。そして、自身の病気とうまく付き合っていけたらと思います。

私が作りたいと考えているフリーペーパーや場づくりについても、興味を持った方がいらっしゃったら、SNSのDMなどでいつでもご連絡いただけると嬉しいです。


未診断疾患をきっかけに、いわゆる“トンデモ医療”の情報提供で困った経験や、ご自身の苦悩も、丁寧に教えてくださったmenomeさん。大変なことも多くある中でも、ご自身や病気と向き合い続けた結果、今のmenomeさんにしかできない活動につながっているのではないかと感じました。

もし、なかなか原因がわからず診断がつかない状況に悩んでいる方がいらっしゃったら、ぜひmenomeさんの体験漫画をご覧になってみてくださいね。未診断疾患といってもさまざまな状況があると思いますが、皆さんにとって何かのヒントにつながったら、うれしく思います。(遺伝性疾患プラス編集部)

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