難病を持つ誰もが、安心して暮らせる社会を目指して―日本難病・疾病団体協議会(JPA)

遺伝性疾患プラス編集部

「難病」とは、発病のメカニズムが明らかになっておらず、根治療法が確立されていない希少な病気を言います。難病は慢性的な経過をたどることが多いため、病気によっては、体と相談しながら働き続けている人もいます。また、2021年11月現在、指定難病として指定されている疾患は338種類にのぼりますが、その多くが社会であまり知られていないなど、さまざまな課題があります。

今回は、そういった難病、長期慢性疾患の方々を支援する一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)の活動を紹介します。お話を伺ったのは、ご自身もまた「慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)」という難病を抱える、JPA常務理事の辻邦夫さん。辻さんは、治療を受ける中で感じた医療費助成の課題をきっかけに、CIDPを特定疾患(※現在の「指定難病」)とすることに向けて活動を始められました。患者団体である全国CIDPサポートグループの活動を通じて、JPAの活動にも関わるようになったと言います。

難病を取り巻く現在の課題、そして、「病気や障害による障壁をなくし、誰もが安心して暮らせる社会の実現」を目標に掲げるJPAの活動について、詳しくお話を伺いました。

Jpa Pro
一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)常務理事 辻邦夫さん
団体名 一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)
対象疾患 難病、長期慢性疾患
対象地域 全国
会員数 96団体(2021年10月5日現在)
設立年 2005年
連絡先

Tel:03-6902-2083

FAX:03-6902-2084

メール:jpa@nanbyo.jp

お問い合わせフォーム

サイトURL

https://nanbyo.jp/

https://www.nanbyo.online/

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主な活動内容

大人や子どもの難病や長期慢性疾患の患者団体や地域難病連、当事者や家族を中心とした支援団体等で構成する全国組織。「病気や障害による障壁をなくし、誰もが安心して暮らせる社会の実現」を目標に活動している。

主な活動は、国会請願などによる立法や行政への働きかけ、難病等の社会への啓発、患者・家族の交流を行っている他、厚労省補助事業として難病患者サポート事業による患者サポート、研修、国際連携の推進など。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の診断をきっかけに、自身も患者支援活動へ

JPAの活動が始まった背景について、教えてください

1972年に策定された「難病対策要綱」に基づき、日本の難病対策はスタートしました。当時、複数の患者団体の連合体が活動していた状態だったので、それらを一本化しようという動きの中で1986年に設立されたのが、日本患者・家族団体協議会(JPC)。さらに、2005年にJPCと全国難病団体連絡協議会(全難連)が合併し、大人や子どもの難病、長期慢性疾患の患者団体が一つにまとまったのが、現在の日本難病・疾病団体協議会(JPA)です。

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コロナ禍前、会場で開催されたJPA幹事会
辻さんがJPAの活動に関わるようになったのは、どのようなきっかけからですか?

自身の病気である「慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)」がきっかけとなり、JPAの活動に関わるようになりました。

今から17、18年前、当時43歳だった私は、疲れやすくなり、転びやすくなるなどの症状が現れるようになりました。そこから、1~2年ほどの歳月を経て「CIDPの可能性が高い」とわかり、治療を受けることになったんです。治療を受ける中で感じたのは、医療費の高さです。当時、CIDPはまだ指定難病ではなかったので、今よりも医療費の負担が大きかったんですね。

その後ほどなく患者会が立ち上がり、CIDPを特定疾患(※現在の名前は「指定難病」)として医療費助成の対象とすることに向けての活動も始めました。それが、全国CIDPサポートグループです。この活動は、当時ブログでつながっていた仲間たちとともに始めました。活動を進める中で課題を感じていたときに、「JPAに相談してみたらどうか」という意見が出て、相談したことがきっかけで、JPAの活動に関わらせて頂くことになりました。このご縁により、13年ほどJPAとも関わっています。CIDPも、さまざまな活動を経て、今では指定難病となっています。

JPAのスローガン「誰もが安心して暮らせる社会の実現」として描いている、具体的なゴールについて教えてください。

究極のゴールは、難病の原因が明らかとなって、治療方法が確立され、難病が無くなることです。しかし、現代の医療はまだそこに至っていません。ですので、そのゴールに向けての活動が大切だと思っています。

難病などは障害者福祉の中でも“制度の谷間にある”と言われてきました。現在では、「障害者総合支援法」という法律により、指定難病と一部の慢性疾患の患者は障害者としての福祉支援を受けられます。しかし、以前は、難病患者さんは障害者とはっきり規定されていない時代がありました。その名残で、難病患者は障害者政策の対象外となることも多く、“制度の谷間にある”と表現されてきたんです。そのため、今後も継続的に、難病に対する社会の理解を深め、患者さんやそのご家族をめぐる医療と福祉の課題解決を進めることが求められます。

相談室へ寄せられる、難病患者さんのさまざまな声

JPAの患者(相談)支援事業の相談室には、どのような相談が多く寄せられますか?

「難病と診断され、これからどうなるのか」「家族や職場で理解を得られない」などの相談から、「つらいので話を聞いてほしい」といったご相談まで幅広く寄せられます。

難病には、「名前も聞いたことがない」という病気が多くあります。まさに、私自身もそうでした。診断を受けられたご自身が戸惑われることはもちろん、家族や職場の方へ説明する場面で苦労する方が多くいらっしゃいます。自分が知らなかった病気なので、家族や職場の方々も知らない場合がほとんどですからね。

初めて聞く病気に戸惑われる方が多いのですね。その他、就労やお金に関することについてはどうでしょうか?

「障害者の法定雇用率による雇用の枠に、障害者手帳の無い難病の患者が含まれていないので、就職活動に苦慮している」という声が届きます。障害者の法定雇用率の対象となる障害者は、現在、「障害者手帳等を持っている人」に限定されています。そのため、難病患者さんの中で、障害者手帳等を持っていないことで対象から外れている方がいるのです。

その他、「毎月の医療費が高額になっているが、(診断を受けている病気が)指定難病になっていないので医療費助成が一切なく、生活が苦しい」といった相談も、多く寄せられています。

実際に相談したい場合は、どちらにご連絡入れたら良いですか?

電話「03-6902-2083」やメール、もしくはお問い合わせフォームからお願いします。

なお、通常業務時間は平日9:30~17:30です(土日・祝日は除く)。お電話での相談、ご連絡の場合は、この時間帯に対応させて頂きます。

目的・目標に沿った患者会設立支援、患者数の少ない希少疾患団体の支援も

新しい患者会の設立支援では、どういった支援を行われていますか?

最初に患者会を作る目的や目標についてお話を伺います。当事者同士の交流を深めたい、医療相談会をやりたい、疾患を指定難病にするための活動をしたいなど、目的や目標はさまざまですからね。それをきちんとお伺いしたうえで、その目的や目標に沿ったアドバイスをさせて頂きます。

また、実際に活動している他の患者会の状況をお知らせしたり、患者会運営に必要なIT環境整備のフォローをしたりなど、幅広くサポートをさせて頂いています。

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難病患者サポート事業のページ
希少疾患などで、疾患ごとの団体を作ることができないグループの全国連携も支援していると伺いました。

コロナ禍のため中止したこともありましたが、基本的に年に1回、各地にある希少疾患グループ同士の交流の場として交流会を開催しています。今年度は、年明け2~3月頃、オンラインでの交流会実施に向けて検討を進めていますので、詳細が決まり次第、改めてご案内させて頂きます。

将来的には、定期的に交流を図ることのできる全国希少疾患の会(仮称)の立ち上げなども目指したいと思っています。

「難病の日」の活動、「難病・慢性疾患全国フォーラム」などのイベントも

5月23日「難病の日」の活動について、教えてください。

2014年5月23日に成立し、2015年1月1日から施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律(以下、難病法)」の成立を記念し、登録しました

2021年度も、難病の日啓発ポスターを募集するなどし、難病の周知活動を行ってきました。一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、活動が制限されたこともあり、まだまだ周知や活動が不足していると感じています。Rare Disease Day(RDD:世界希少・難治性疾患の日)といった他の記念日とも連動し、さらに難病の日を有効活用して、社会の理解を促進したいと考えています。

11月6日(土)に開催された「難病・慢性疾患全国フォーラム2021」では、どんなポイントがあげられましたか?

2015年に施行された難病法について、先日、見直しのポイントが発表されました。中でも、「重症化時点に遡り医療費助成する」といった部分が大きなポイントとしてあげられています。そのため、今回のイベントではその点を確認し、残された課題などを明確化しました。

また、毎年続けている「患者当事者の声」を届けるセッションを今年も開催し、特に障害者手帳の持てない難病等の患者さんが苦労している「就職」や「就労継続」について、パネルディスカッションを行いました。難病患者等の法定雇用率参入などの運動が広がる契機としたいと考えています。

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コロナ禍前、会場で開催された「難病・慢性疾患全国フォーラム」
今後、新たな活動に取り組むご予定はありますか?

難病や長期慢性疾患の患者をめぐる課題は治療内容やその治療費だけではなく、福祉、教育、就労、医療提供体制、医療政策、地域、災害対応、支援相談など多岐にわたります。これらの課題に引き続き個別に対応していくとともに、総合的に取り組んで課題を解決していきます。

さらに、患者さんの声を集め発信していく、患者当事者による「全国難病センター」の設置に向けた具体的活動を開始したいと考えています。

難病を「自分ごと」として捉えるために、大切なこと

難病を取り巻く課題について、辻さんはどのようなことを感じられていますか?

難病は「自分ごと」として捉えにくいというのが、大きな課題だと感じています。例えば、がんや慢性疾患などと比べても、難病の認知度は低いですし、疾患の名前を覚えるのも一苦労なのではないでしょうか。そういった背景から、なかなか社会の理解が進まない現状があります。

しかし、難病は、私たち自身や周りの身近な人を含め、誰もが発症する可能性があるということを知ってほしいですね。

もし、みなさんの身近に難病の患者さんがいるのであれば、“自分の周りの一部”として難病を捉えることができると思います。もちろん、社会全体への疾患啓発も大切ですが、さまざまな難病を多くの方々に知ってもらうことは簡単ではありません。だから、まずは自分の身近な人に病気を理解してもらう疾患啓発が大切なのではないでしょうか。家族はもちろん、職場の人、ご近所の方、学校の先生や友だちなどが、「〇〇さんは、△△という病気も持っている」と、当たり前のようにわかって、ともに助け合って生活している状態が理想ですね。

このように、「病気」よりも「人」にベクトルが向くことで、自然とその人の持つ病気への理解が深まるでしょうし、その方がどんなサポートを必要としているかも知る機会が増えると思うのです。

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「自分の身近な人に病気を理解してもらう疾患啓発が大切なのではないでしょうか」と、辻さん。(写真はイメージ)
難病に関わる方々へのメッセージをお願いします。

再生医療や遺伝子治療など、これまでになかったような治療法の研究が進み、難病の根治療法確立の可能性が出てきました。しかし、医療の世界にはまだまだ未解明な部分がたくさんあり、万能ではないことも事実です。

JPAでは、公正中立な姿勢のもとで、正しい情報を収集し発信するとともに、当事者団体として、難病などの患者さんの声を聞き、社会に発信していくために、さらに努力を続けたいと思います。ぜひ、ご理解とご協力、ご支援をお願いします。


当事者支援はもちろん、さまざまな患者会の設立支援など、幅広く活動を行うJPA。遺伝性疾患の中には、希少疾患であるがゆえに患者会の設立が難しい疾患もあるというお声も、実際に伺っています。もし、そういったことにお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひJPAの支援活動も知って頂けたらうれしく思います。

また、今回、辻さんは、「難病は『自分ごと』として捉えにくい」という課題についても触れられました。病気への理解も大切な一方で、まずは、一人の人を知ろうとする姿勢が大切になるのかもしれませんね。

難病を持つ誰もが安心して暮らせる社会の実現は、決して簡単なことではありません。しかしJPAの活動を通じて、確実に、その実現へ近づいているのではないかと感じました。(遺伝性疾患プラス編集部)