軟骨無形成症患者・家族の会「つくしの会」、当事者をつなぎ情報を届ける活動

遺伝性疾患プラス編集部

軟骨無形成症は、軟骨の形成が行われないことで、軟骨から骨が作られる仕組みに異常が生じ、低身長、成長障害などの症状が見られる遺伝性疾患です。早い場合には、胎児期に超音波検査で骨が短いことを指摘されたり、生後に短い手足・指などを指摘されたりして診断につながる場合もあります。

今回、活動をご紹介するのは、つくしの会(全国軟骨無形成症患者・家族の会)。同会は、1982年の設立以来、当事者やご家族のつながる場をつくり続けてきました。また、日本の患者団体にはあまり無い「渉外部」を持ち、研究機関・企業なども連携しています。同会渉外部の堀越晶子さんは、軟骨無形成症の当事者のご家族です。お子さんは、幼少時からさまざまな合併症と向き合ってきました。重度の睡眠時無呼吸症候群を理由に扁桃腺の手術を受ける、脊柱管狭窄症に対する手術を複数回受けるなど経験してきたそうです。今回は、堀越さんのご経験と同会の活動について伺いました。

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第31回全国総会の様子

 

団体名

つくしの会(全国軟骨無形成症患者・家族の会)

Japanese Achondroplasia Patient Family Association《TUKUSHI》『JAPFA・T』

対象疾患 軟骨無形成症
対象地域 全国
会員数 約600ご家族(2024年5月現在)
設立年 1982年
連絡先

公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から

メール:

北海道支部 togamasa@icloud.com

茨城支部 k.taka226@gmail.com

千葉支部clover.caer.yotukaidou@yahoo.co.jp

東京支部kotsukeitou_achondro_100@yahoo.co.jp

神奈川支部  kanagawatsukushi@gmail.com

広島支部 kamiel.kamiel@w6.dion.ne.jp

大分支部 fd358424@db4.so-net.ne.jp

宮崎支部 anela.tmrh711@gmail.com

会長 aofa2123@yahoo.co.jp

渉外部 atushi-43@nifty.com
サイトURL https://tsukushinokai.net/
SNS

Facebook軟骨無形成症(つくしの会Tokyo)・骨系統疾患

Instagram tukushinokai_official  軟骨無形成症患者・家族の会
主な活動内容

軟骨無形成症について「現実と未来の原因究明と治療法の確立を促進する」「病気によってもたらされる社会的不利益の解消を目指す」「会員相互の経験交流と親睦をはかる」などの事項に取り組む。各県・地域で支部を結成し、支部会や勉強会なども開催中。全国の会員が連携を取りながら活動を続けている。

保健師の情報からつくしの会へ、当事者や専門医とつながる

堀越さんのお子さんが軟骨無形成症と診断された経緯について、教えてください。

娘を妊娠している頃、胎児期の6~7か月頃に主治医から羊水検査を勧められました。多くの障害がある胎児を診ている先生だったので、レントゲン画像とCT検査の結果から可能性を検討されていたようです。担当医ご自身がこの病気を知っていたようで、軟骨無形成症の症状に気が付いたようです。整形外科医・小児科医より産科医の方が、いろいろ胎児を診ることから詳しかったのではないかと思っています。家族でも話しあった結果、羊水検査は受けずに出産しました。私は里帰り出産を選択していたので、地元の病院で新生児検診など受けていた所、「総合病院の小児科を受診してください」と説明を受けたんです。そこで紹介された総合病院の先生が、軟骨無形成症の専門医の先生だったんですね。受診して、夫が軟骨無形成症の説明を受けたのですが、それを受けて私には「心配することはない」と、あまり詳細を話すことはありませんでした。

つくしの会の活動には、どのように参加するようになったのですか?

地元から自宅のある地域に戻り、療育センターに通っている頃、保健師さんから当会を教えてもらいました。周りに軟骨無形成症の当事者・ご家族がいなかったので、「患者会がありますよ」と、わざわざ新聞記事を持ってきてくれたことを覚えています。当時の会長とお話しする時に、たまたま軟骨無形成症の有名な専門医の先生が来ていると教えていただき、娘を診ていただきました。そこで、改めて軟骨無形成症の説明を受け、「大丈夫です。心配いらないからね」と声をかけていただきました。そこから当会に入り、夫婦で運営に関わるようになっていきました。

LINEやオンラインでの交流の場、「渉外部」による外部との連携・情報提供

つくしの会の活動は、どのように始まったのですか?

当時は、「軟骨無形成症」ではなく「軟骨異栄養症」という病名で知られていた頃でした。東京のある病院に通う当事者の親御さんたちが医師のもとで勉強会を始めたことが、活動の始まりと聞いています。今と比べて病気の情報にアクセスしにくい時代だったこともあり、手探りで活動を始めたそうです。次第に勉強会が発展していき、1982年9月につくしの会(全国軟骨無形成症患者・家族の会)が発足しました。当会が発足する前から活動していた、中部や関西地方の患者団体も加わり、全国の地域に支部が生まれ、活動が広がっていきました。

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同会メンバーでスポーツ選手としても活躍中の冨樫航太郎さん
 現在の活動内容について、教えてください。

当事者やご家族がつながる場を設けること、軟骨無形成症の正しい情報を届けることを中心に活動しています。

全体交流は、コロナ禍以前は対面の総会・支部会・キャンプなどでした。そこで顔を合わせた親同士が個々に交流し、乳児だった子どもが成人となり互いの悩みなど話し合う集まりを持つようになっています。コロナ禍からは、対面交流が難しくオンラインの総会・支部会開催、会員専用のLINEで近況や悩みなどを話し合っています。相談に関しては、ネット・電話相談などで対応。2024年は対面での総会・各支部会の開催を検討中です。広島支部は8月に開催予定です。

その他、大学や研究機関、企業とのつながりを持つことで治療薬開発研究の最新情報を当事者やご家族にお届けしています。渉外部を設けて外部と関係構築を行う患者団体は、日本ではほとんどありません。また、学会へのブース出展なども行っており、医療従事者に対しても軟骨無形成症の当事者やご家族の状況を知っていただく活動をしています(Japanese Achondroplasia Patient Family Association《TUKUSHI》『JAPFA・T』)。

活動を通じて、当事者・ご家族からは特にどのようなお悩み相談が寄せられていますか?

会員限定のLINEでは、随時お悩み相談も行っています。中でも特に多い印象を受けているのは、お子さんの入園・入学に関するお悩みです。例えば、指が短い症状が現れている場合、音楽の授業で指定の楽器に対応できないことがあるので、説明が必要になります。当会では、これまでの経験から学校側へどのような説明が必要かを把握しておりますので、ご家族の相談に乗ったり、ご希望があれば参考書籍をご紹介したりしています。ぜひ、お気軽にご相談いただければと思います。

当事者やご家族のつながりが、困難な状況を乗り越える力に

活動に参加されている当事者・ご家族からは、どのような声が寄せられていますか?

「同じ軟骨無形成症の当事者やご家族に会えて良かった」という声を伺うことが多い印象です。特に、地方にお住まいの方で、なかなか直接会う機会を得られずにいたという声を伺います。そのため、「総会で、同じ軟骨無形成症の当事者と会えてうれしかった!」という声を伺います。また、ご家族からも「軟骨無形成症の当事者が、元気に過ごされている姿を見ることができて良かった」という声が寄せられています。

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サマーキャンプの集合写真
堀越さんが印象に残っている、当事者の声を教えてください。

特に印象に残っているのは、いじめに遭う経験をされた女性の当事者の声です。軟骨無形成症は、症状が外見に現れる病気の一つです。彼女は、小学校高学年頃から、症状などを理由にいじめに遭うようになり、いじめは中学高校でも続きました。しかし高校で英語の授業に魅かれ、その授業を担当する教師の下、自分の目標として明治に創設された大学を目指し勉強に励んでいました。高校に入学してからは逢う機会は少なくなり、とても気になっていました。

高校3年生になった頃、彼女の努力が実を結び「推薦を受けられる十分な成績です」と、先生からもお墨付きをもらったそうです。しかし、彼女は「推薦を受けずに、私は一般入試で合格します」と返事をし、見事合格されました。当時、合格報告で電話をした時に、「私はつくしの会がなくても、もう大丈夫です。自分を生かす道を見つけたからです。だから、つくしの会は卒業します」と彼女は言いました。傍らにいるだけで想像しか出来ませんでしたが、ここに来るまでの彼女の辛さ悲しさ苦しみ、それを乗り越え未来を見据えていく姿勢に、とても感動したことを覚えています。

つくしの会という場所があったからこそ、大変な状況の中でも目標に向けて頑張ることができたのかもしれないですね。

そうですね。ご自身の病気に加えて、学校生活での困難と向き合いながらの受験勉強は、大変だったと思います。彼女のお母様も、とても苦労されているご様子でした。娘さんのことが心配で、当会へ度々相談にきていたと伺っています。ただ、当会の役員と話して「娘を見守ります」とおっしゃっていたそうです。きっと、お母様も何とか踏ん張り続けていらっしゃったのだと思います。あくまでも一つの事例ですが、改めて、同じ病気と向き合う当事者やご家族とつながることができる場は必要だと実感した出来事でした。

「一人ではない」と思えるつながりを持ってほしい

 最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

病気や障がいと「いつ」「どこで」「誰が」「どのように」向き合うことになるか、誰にもわかりません。もしご自身やご家族が病気や障がいを持った場合には、「あなたは決して一人ではない」と知っていただきたいです。これは私自身の経験ですが、娘が生まれてすぐの頃に病院の待合室で知り合った方がいらっしゃいました。その方はお子さんが難病をお持ちで、互いに子どもの病気のことを話す仲になったんです。私が一時的に地元に滞在していた時期が終わり、お別れする時に「もしつらいことがあったら、空を見上げてね。私も、同じ空の下であなたの幸せを祈っているから」と声をかけていただきました。当時の私は、その言葉を受け取り、涙が出るほどうれしかったことを今でも覚えています。

診断を受けて間もない頃は、特に多くの感情と向き合うこととなるでしょう。時に、つらい感情に押しつぶされそうなこともあると思います。そんな時こそ「一人ではない」と思えるつながりを持っていただけたら、と私は考えます。当時の私は、さまざまな方々から助けられ、そして、それにすがりました。ですから、お願いです。つらい時は誰かの手が必ず近くにありますので、ご自分を追いつめないようにしてください。軟骨無形成症の当事者やご家族とつながりたいと考えられた場合には、選択肢の一つとして当会の活動を知っていただけたらうれしいです。

そして最後に、病気や障がいがある当事者やご家族は、周りの多くの方々に支えられています。ぜひ、これからも温かく見守っていただければうれしく思います。


つくしの会は、日本の患者団体ではまれな「渉外部」を設けて外部と関係づくりを行っています。堀越さんを中心に、軟骨無形成症の最新情報を当事者やご家族へ届ける仕組みが整っている体制が印象的でした。また、1982年から当事者やご家族がつながる場をつくり続けている同会。時に困難な経験を強いられる方々が、いつでも立ち寄れる場としてもあり続けていることを教えていただきました。もし今苦しい思いをされている方がいらっしゃったら、ぜひ同会の活動を知っていただければと思います。苦しくて仕方ない時は、当事者やご家族とつながれる選択肢の一つとして、同会を思い出していただければうれしいです。(遺伝性疾患プラス編集部)

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