ビールス症候群

遺伝性疾患プラス編集部

ビールス症候群の臨床試験情報
英名 Beals syndrome
別名 Beals症候群、ビールズ症候群、先天性拘縮性くも状指趾症、遠位型多発性関節拘縮症9型、Congenital contractural arachnodactyly(CCA)、Beals-Hecht syndrome、Arthrogyroposis, distal, type 9、Contractural arachnodactyly, congenital、Distal arthrogyropsis type 9(DA9)
日本の患者数 不明
海外臨床試験 海外で実施中の試験情報(詳細は、ページ下部 関連記事「臨床試験情報」)
発症頻度 1万人に1人未満と推定
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝形式]
発症年齢 乳幼児期から
性別 男女とも
主な症状 多発性関節拘縮、くも状指、耳介の変形
原因遺伝子 FBN2遺伝子
治療 対症療法(整形外科的手術、リハビリテーションなど)
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どのような病気?

ビールス症候群は、多発性関節拘縮と呼ばれる、2か所以上の関節が硬くなり動きにくくなる症状や、「くも状指」と呼ばれる細く長い指など、体の多くの部分に症状が見られる遺伝性疾患です。身長が高く、腕や脚が長く細い体形をしています。マルファン症候群という病気に症状が似ていますが、別の病気で、原因となる遺伝子も異なっています。マルファン症候群は関節弛緩性(しかんせい、ゆるみすぎている状態)の症状を持つのに対して、ビールス症候群は関節が拘縮(こうしゅく、硬くなりすぎる状態)する症状を示すのが特徴で、特に手指の関節が硬くなり曲がりにくくなります(屈曲拘縮)。この症状は、腰、膝、足首、肘などの関節にも出る可能性があります。

その他の症状として、耳介(耳の外に出ている部分)が丸まってくしゃくしゃとなるような変形、脊柱側弯症や脊柱後弯症などの背骨の湾曲、筋肉が発達しにくい、皮下脂肪組織が少ない、胸部が前に突き出る(胸骨の変形)、舟状頭(上から見た場合に頭の前後が長い長頭で、前頭部分と後頭部分が小舟の形のようにとがっている)、顔の中心が平坦、小顎症などの特徴を伴うこともあります。マルファン症候群で時々見られる目の症状や心蔵血管系の合併症は比較的少ないとされますが、まれに大動脈基部拡張や僧帽弁逸脱などの症状が見られる人もいます。

ビールス症候群の症状の程度は、軽度から重度まで幅広く、同じ家族の中でも異なります。通常は命に大きく影響しないとされている疾患ですが、まれに骨格の特徴に加えて心臓と消化器系の両方に合併症を持つような重篤な症状を持つ場合、命に関わることがあります。

ビールス症候群で見られる症状

高頻度に見られる症状

異常な耳介(耳の外に出ている部分)の巻き込み、しわくちゃの耳、高口蓋、くも状指(手または足の指が異常に長く細い)、屈指症(指をまっすぐに伸ばせない)、脊柱側弯症、先天性後側弯症、筋肉の異常、先天性多発性関節拘縮症、先天性拘縮、屈曲拘縮、関節の硬直、痩せ型

良く見られる症状

不均衡型高身長(異常に長い腕と脚をもち背が高く痩せた体格)

しばしば見られる症状

水晶体転位症(眼の水晶体の脱臼または位置の異常)、大動脈瘤、心血管形態異常、僧帽弁逸脱症(心臓の左心房と左心室の間にある弁が左房内にはみ出ている)、十二指腸閉鎖症、腸回転異常症、気管食道瘻(食道と気管がつながっている)

 

ビールス症候群の有病率は、世界でおよそ1万人に1人未満であると推定されていますが、日本におけるこの病気の患者数や発症頻度はわかっていません。ビールス症候群は、小児慢性特定疾病の対象疾患です。

何の遺伝子が原因となるの?

ビールス症候群は、5番染色体上の5q23.3という位置にあるFBN2遺伝子の変異によって引き起こされます。FBN2遺伝子は、フィブリリン2と呼ばれるタンパク質の設計図となります。フィブリリン2は、他のタンパク質などと結合してミクロフィブリルと呼ばれる糸のような組織を作り、そのミクロフィブリルは、関節や臓器などを支える組織(結合組織)において、その強度や柔軟性を維持するため繊維の一部として働きます。さらに、ミクロフィブリルはTGF-βと呼ばれる、組織の成長や修復に重要な役割を持つ成長因子の活性を調節することも知られています。

FBN2遺伝子の変異により、異常なフィブリリン2タンパク質によるドミナントネガティブな作用が生じる、もしくはフィブリリン2タンパク質の機能が失われることで、結合組織の構造が弱まり、成長因子の活性調節が失われ、ビールス症候群の症状が引き起こされると考えられています。

Re97 ビールス症候群 仕組み 1122

ビールス症候群は、常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。この遺伝形式では、両親から引き継いだ2つのFBN2遺伝子のうち、どちらか1つに病気の原因となる変異を引き継いだ場合に発症します。つまり、両親のどちらかがビールス症候群だった場合、子どもは50%の確率でビールス症候群を発症します。

Autosomal Dominant Inheritance

どのように診断されるの?

小児慢性特定疾病情報センターによれば、ビールス症候群の診断は、1)多発性関節拘縮、2)耳介の変形、3)長い四肢を伴った細く長い四肢、の3つの主要臨床症状からこの病気が疑われ、遺伝学的検査によりFBN2遺伝子に変異が認められた場合に診断が確定します。

もし、遺伝学的検査で変異が認められない場合には、上記の3つの主要臨床症状を全て満たし、なおかつ副症状として1)舟状頭、2)乏しい皮下脂肪組識、の2つが認められた場合に診断されます。

どのような治療が行われるの?

ビールス症候群を治す根本的な治療法はまだ確立されてないため、それぞれの症状に合わせた対症療法が中心となります。側弯に対しては整形外科的な手術や、関節拘縮や内反足に対してリハビリテーションが行われます。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でビールス症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

ビールス症候群の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

※下記は、マルファン症候群患者さん向けの情報を多く発信されていますが、ビールス症候群患者さん向けの情報も発信されています。

参考サイト

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