コルネリア・デランゲ症候群の当事者・ご家族に国内外の最新情報を、CdLS Japan

遺伝性疾患プラス編集部

コルネリア・デランゲ症候群は、知的障害を伴う全般性発達遅滞、手足の異常といったさまざまな症状が生じる遺伝性疾患です。国の小児慢性特定疾病に指定されており、指定難病対象疾病の先天異常症候群に該当する場合があります。

今回ご紹介するのは、CdLS Japan(コルネリア・デランゲ症候群 患者家族会)です。同会代表の蔭山真知子さん、副代表の芦名千恵さんは、お子さんがコルネリア・デランゲ症候群の当事者であるご家族です。同会は、1999年の設立当初から、当事者やご家族がつながる場としてあり続けてきました。また、海外在住経験のあるご家族との交流をきっかけに、日本のご家族も最新情報を得られるように海外の最新情報を日本語で届ける活動も行っています。今回はお二人のご経験とあわせて、同会の活動についてお話を伺いました。

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CdLS Japan(コルネリア・デランゲ症候群 患者家族会)ウェブサイトより
団体名 CdLS Japan(コルネリア・デランゲ症候群 患者家族会)
対象疾患 コルネリア・デランゲ症候群
対象地域 日本全国・海外(日本人の方向け)
会員数 約70家族(現在までに184家族が入会)
設立年 1999年
連絡先 公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から
サイトURL https://cdlsjapan.org/
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主な活動内容 米国のCdLS財団が定期的に発行するニュースレター「Reaching Out」の情報を翻訳しメール配信中。日本国内の医療・療育・福祉情報も発信している。その他、当事者やご家族向けのオンライン交流会の開催やLINEグループでの交流の場を設けている。

“珍しい病気”と知り不安に、当時はわからない情報も

芦名さんのお子さんが診断を受けた経緯について、教えてください。

芦名さん: 私の場合は我が子が生まれてすぐ、不安な気持ちからスタートしました。顔立ちが気になるなど、素人の自分でも感じるものがあったからです。後に、コルネリア・デランゲ症候群の症状の一つだと知りました。

出産した病院の医師から「20年前に一度だけ、この子と同じ顔立ちや状態の子を見たことがある」と説明を受け、思わず「どうしたらいいんだろう」という不安に苛まれました。その後、子どもだけ転院し、転院先の病院の医師からコルネリア・デランゲ症候群や障がいに関わる説明を受けました。コルネリア・デランゲ症候群について、先生も「文献を調べた」とおっしゃっていたので、「先生もあまり詳しくないような病気なんだ」という思いが強かったです。今思えば、不安や恐怖のような感情に近かったと思います。そこから、遺伝科のある病院へ通うようになり、同じ病気の皆さんにお会いすることができました。そこで蔭山さんや立ち上げメンバーの皆さんと出会うことができ、会を立ち上げることになりました。

蔭山さんのお子さんが診断を受けた経緯について、教えてください。

蔭山さん: 私の場合は、妊娠初期に流産の可能性があり入院しました。当初から子どもの体が小さいと指摘されており、子宮内胎児発育遅延(IUGR:intrauterine growth retardation)と説明を受けていました。妊娠後期に入ると「切迫早産のため、NICUのある病院に移動しましょう」と説明され、転院。そこで、計画的に帝王切開で出産することになり、妊娠37週のときに出産することになりました。出産予定日の前日に、検査を受けて、やはり体重が少ないこと、足が短いかもしれないこと、NICUのフォローが必要なことについて説明を受けました。こんな風に、妊娠中は病気や障がいに関する話は聞いていなかったのです。

そして、帝王切開で出産し、開腹した状態で、「お子さんには障がいがあります」と説明を受けたことを覚えています。その時の私は、気絶しそうなぐらいにショックを受けました。その後、麻酔から目を覚ましたときに「夢じゃなかったんだ…」と悟りました。出産から数日後、我が子の両上肢の欠損の説明を受ける際に「コルネリア・デランゲ症候群の症状です」と教えていただきました。その3か月後に、コルネリア・デランゲ症候群の詳しい説明を聞きました。

後日伺った話では、NICUで我が子の担当になった先生が読んでいた小児科医向けの書籍で珍しい疾患をまとめた特集がきっかけとなり、スムーズにコルネリア・デランゲ症候群の病名にたどりついたそうです。それくらい珍しい病気なのだと実感しました。

当時、知りたかったけどわからなかった情報はありましたか?

芦名さん: 私の場合は、コルネリア・デランゲ症候群を持つ子どもの成長過程を知りたいと思っていました。当時は、「どうやったら、病気を持たない子どもに近づくことができるんだろう」と考えていたからです。今振り返ると、一体何を考えていたんだろうと思うのですが、当時は真剣に悩んでいました。ただ、主治医の先生に聞いても「成長はお子さんそれぞれで違いますよ」と、何年経ってもいつも同じ回答だったような印象です。恐らく先生も明言できないのだろうと想像しながらも、親としては不安を拭えず、前向きに一歩を踏み出せない要因の一つだったと感じます。

ご家族とつながる場として、日本と海外の情報差を埋めるために活動開始

活動を始めたきっかけについて、教えてください。

蔭山さん: コルネリア・デランゲ症候群は患者数が少ないため、同じ疾患のご家族が出会う機会はなかなかありません。我が子は1997年生まれで、芦名さんのお子さんは1995年生まれです。当時は、今のようにインターネットで情報検索するのが当たり前の時代ではありません。ですから、今以上に当事者やご家族同士がつながる手段がなく、皆さんがそれぞれ探しているという状況でした。

私と芦名さんが病院で偶然出会ったようにして、少しずつつながる人たちが増えていきました。ある時、みんなで会う機会があり、自分の知らなかった情報を知ることができたんです。その時、改めて当事者や家族同士がつながることの重要性を感じました。

芦名さん: 私たちはみんな同じ病気を持つ子どもがいますが、それ以外は大きな接点はありません。だけど、みんなで会うと、子どもたちが同じ仕草をしたり、同じ声を出したりして、「一緒だね」と共感し合うことができます。

蔭山さん: 当時の主治医だった先生に集まりのことを話したところ、「患者会をつくったらどう?」とアドバイスしていただきました。先生に「顧問をお願いできますか?」と伺ったところ快諾してくださり、1999年に当会を設立しました。

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CdLS Japan(コルネリア・デランゲ症候群 患者家族会)ウェブサイトより
設立当時、印象的だったことはありましたか?

蔭山さん: 設立当時にご一緒していたご家族の中に、オーストラリア居住経験のある日本人の方がいらっしゃいました。オーストラリアには、「CdLS Australia」というコルネリア・デランゲ症候群の患者家族団体があります。

オーストラリアでは、お子さんが生まれてコルネリア・デランゲ症候群と診断されると病院側からCdLS Australiaに連絡が行くそうなんです。ご家族側が希望した場合、すぐに支援を受けられますし、すぐに希望しなくても必要だと思った時に関わっていける仕組みが整っています。また、CdLS Australia のメンバーには2~3か月に一度CdLS Australiaから30ページほどの会報誌が届くのだそうです。家族からのお便りや、病気に関わる最新情報、療育などさまざまな内容が解説されています。実際に会報誌を見せてもらったときに、日本に住む自分たちとの情報差に愕然としました。私の場合は、A4の1枚の資料だけでコルネリア・デランゲ症候群の説明を受けたくらいでしたので。こういった情報の差も、少しずつ埋めていきたいと思いました。

海外情報を翻訳した最新情報・国内の福祉制度情報などをご家族へ届ける

現在の活動内容を教えてください。

芦名さん: 海外の患者家族団体の会報誌を翻訳し、会員さん向けに日本語で最新情報を届けています。現在も、日本にお住まいの当事者・ご家族では、なかなかコルネリア・デランゲ症候群の最新情報を教えてもらう機会はありません。ですから、海外の最新情報を届けることは、活動の大きな柱となっています。

その他、希望する会員さんは、会のLINEグループでも日々交流しています。コロナ禍をきっかけに、オンライン交流会も開催するようになりました。また、顧問の先生をはじめとした先生方をお招きし、コルネリア・デランゲ症候群に関わる講演会を開催し、勉強会をあわせて開催することもあります。その他、コルネリア・デランゲ症候群の情報だけでなく、福祉制度の情報なども大切になります。日本では、当事者やご家族が生活していくために必要な情報をなかなか入手しにくい状況があると感じています。そのため、最新情報を日々お届けできるように活動しています。

特に、どういった情報が足りないと感じられていますか

蔭山さん: コルネリア・デランゲ症候群といっても、患者さんによって現れる症状の種類や程度は異なります。そのため、必要とする情報も少しずつ異なります。また、同じコルネリア・デランゲ症候群であっても、症状の違いから使用できる福祉制度などが異なります。生まれたばかりのお子さんたちと学校を卒業した後の方では、また、必要とする情報は違ってくるでしょう。ご家族向けのレスパイトの情報も大切です。こんな風に、皆さんが生活していくために必要な情報は多岐にわたり、必要な情報を得ることが困難になっていると感じます。私たちは、当事者やご家族が地域で暮らしていくために必要情報をなるべくお届けできるように活動しているのです。

芦名さん: 私や蔭山さんなど役員メンバーの子どもたちは年齢が近いんですね。その中で、さまざまな症状や障がいに関わる経験を個々に持っていることは強みの一つだと思います。同じコルネリア・デランゲ症候群ではありますが、さまざまな経験を会員さんにお伝え出来るからです。

現在、私たちの子どもは20歳を超えて、もう少しで30歳も見えてきました。これまでは我が子の命をつなぐことを中心に考えてきましたが、これからは我が子も家族も安全に楽しく過ごすことも考えていかなくてはと感じています。私たち家族側の体力の問題とも向き合う必要性が出ているからです。ゆくゆくは、親が亡くなった後の我が子の生活も考えていくことも必要になると思います。

一度離れて再び会に戻るケースも、必要な時に頼れる場

活動に参加されている当事者・ご家族からは、どのような声が寄せられていますか?

蔭山さん: 病気に関わる情報だけでなく、交流をしたいという声は多いです。コロナ禍をきっかけに、今は対面よりオンラインを中心に交流の場を設けていますので、気軽に参加していただければと思います。

個別に相談を受けることもあり、相談内容によっては適切な相談場所をご紹介することもあります。例えば、小児から成人へと移行する移行期医療の課題があります。お子さんが未成年の時は行政の支援などが充実していることも多いのですが、成人以降はなかなか同じようにはいかず、困っているご家族が多い印象を受けます。成人後は、行動障害などが強く出る方などもいらっしゃるようで、以前と同じように日常生活が送れないと困っているご家族もいらっしゃいます。ですので、一度会を離れた方が、困って再び当会に戻られるケースも増えています。こんな風に、皆さんのペースにあわせて、必要な時にぜひ当会を頼っていただけたらうれしいですね。

今後、新たな活動に取り組むご予定はありますか?

芦名さん: 移行期医療や親亡き後のこと、必要な支援や情報を考えていきたいと思っています。移行期医療については、私たちもまさに今向き合っている問題なので、これから迎える当事者やご家族に情報をお伝えしていければと考えています。

「決して一人ではない」いつでも連絡してほしい

最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

蔭山さん: 「誰もが決して一人ではない」ということをお伝えしたいですね。特に、コルネリア・デランゲ症候群と向き合う方々へは、もし助けが必要なことがあれば、私たちのところに連絡して欲しいです。どんなに小さなことでもかまいません。私たちが全てを解決できるかはわかりませんが、同じ病気と向き合っている当事者や家族同士、気軽に連絡していただけたらうれしいです。

私たち運営メンバーにもそれぞれ生活があるので、会の運営は日々の生活の中で少しずつ時間を割いて細々やっています。ですから、大きなことはできない代わりに、細く長く、会を存続させることが設立当初から大切にしている考え方です。当事者やご家族がつながれる場として会を続けていきたいと考えていますので、いつでもご連絡いただければうれしいです。


コルネリア・デランゲ症候群に関わる海外の最新情報はもちろん、当事者やご家族が国内で生活していくために必要なさまざまな情報を届けてきたCdLS Japan(コルネリア・デランゲ症候群 患者家族会)。その活動は設立当初から続いており、ご家族がつながり、経験を共有する場としてもあり続けてきました。また、一度同会を離れた方が再び戻るケースも多いということです。ぜひ皆さんのタイミングで、同会の活動を思い出していただければと思います。(遺伝性疾患プラス編集部)

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