医療従事者と連携してタイムリーに情報発信、日本エーラスダンロス症候群協会

遺伝性疾患プラス編集部

今回、お話を伺ったのは、日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)です。エーラス・ダンロス症候群(EDS)は、皮膚の過伸展性・脆弱性、関節の過可動性、血管病変など、さまざまな症状が現れる遺伝性疾患で、現在その原因や症状から13の病型が示されています。

日本エーラスダンロス症候群協会のスローガンは、「情報は 命をつなぐ 手をつなぐ」。このスローガンのもと、最近では新型コロナウイルスのワクチン情報なども、いち早く患者さんやご家族向けに発信されています。それは、医療従事者との連携体制があってこそできる活動です。

今回は、日々、EDS患者さんやご家族のQOL向上のために活動されている、日本エーラスダンロス症候群協会・運営スタッフの方々に、活動についてお話を伺いました。

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日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)公式ウェブサイトより
団体名 日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)
対象疾患 エーラス・ダンロス症候群
対象地域 全国
会員数 152名
設立年 2006年
連絡先 公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム(http://ehlersdanlos-jp.net/contact_top.html)」から
サイトURL http://ehlersdanlos-jp.net
SNS Twitter
主な活動内容

エーラス・ダンロス症候群の患者さんとその家族や遺族を支援する団体。「情報は 命をつなぐ 手をつなぐ」をスローガンに、患者さんのQOL向上を目指して活動している。

具体的な活動内容は医療講演会、メールマガジンの発行、地域交流会(現在はオンライン交流会)、会報の作成、ウェブサイトの運営など。

最近では、新型コロナウイルスに関連する情報も随時発信している。

運営スタッフを中心につくられる、アットホームな雰囲気

活動を始めたきっかけについて、教えてください

EDSに関する日本語の情報を発信したい、また、同じ疾患の人と話をしたいという思いから、活動を始めました。

当会の設立当時、EDSはまだ指定難病でなく、患者団体もありませんでした。そのため、EDSに関する日本語の情報を見つけることは大変困難で、医学部がある大学の図書館へ出向き、情報収集をしなければいけないような状況だったそうです。

運営スタッフは、どのような立場の方が多いですか?

以前は、特に当事者が多かったと聞いていますが、今は、当事者だけでなく、ご家族、支援者の方も一緒に活動しています。

当会スタッフは、アットホームな雰囲気を作るのが上手なので、実際に活動に参加されて、その温かい雰囲気を知り、その後も参加するようになる方が多いように思います。現在、運営スタッフは8名ほどおり、それぞれの仕事や生活がある中、ボランティアで行っています。そのため、みんなで助けあいながら活動を続けています。

しまうまに想いを込めて…患者さんと医療従事者の交流機会も

シンボルマスコットとして、しまうまを用いられていますよね。しまうまには、どういう意味を込められていますか?

大きく、3つの意味があります。1つ目は、「珍しい病気」の象徴としての意味です。「When you hear hoofbeats, think of horses, not zebras.(ひづめの音を聞いたら、しまうまでなく、まず馬を思い浮かべなさい)」という格言があります。これは、horse(馬)=「一般的な病気」、zebra(しまうま)=「珍しい病気」という例えで使われており、医療において「むやみに珍しい病気を疑うのではなく、一般的な病気から疑うべき」という意味で使われているそうです。

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シンボルマスコットのしまうまには、3つの意味を込めて

EDS患者さんの中には、診断までに10年以上かかったという方も珍しくありません。医療従事者の中でも認知度の低さが課題となっていますので、「珍しい病気」の象徴として、しまうまを用いています。

2つ目は、「個体差がある」という意味です。シマウマのしま模様は、個体ごとにそれぞれ異なります。同じように、EDSも同じ病型のEDSの場合であっても患者さんごとに症状など異なりますので、「症状は人それぞれ違う」というメッセージが込められています。

3つ目は、「私たち仲間は、強く輝いている」という意味です。英語「dazzle」には、「輝かしい」「きらめく」といった意味があり、「シマウマの集団」を指す言葉として用いられることもあります。私たちも同じように、一緒にいることで、もっと輝き、きらめきあっていきたいという願いが込められています。

しまうまも名前に入っている「しまうま交流会」「しまうまカフェ」はどのような活動ですか?

まず、しまうま交流会は、医療従事者をお招きし、患者さんやそのご家族とオンラインで交流して頂く会です。実は、2021年7月に始めたばかりの交流会で、「もっと、医療従事者と交流したい」という多くの声を受けて、企画したものです。

以前は、医療講演会や、地域ごとのリアルの交流会も開催していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開催が難しくなりました。そのため、オンラインでの交流の場として、今後、2か月に1回の頻度での開催を計画しています。専門医とも実際に交流し、意見交換ができる場は、患者さんやご家族にとって貴重な機会だと思いますので、今後も継続していきたいです。

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以前、リアルで行われていた医療講演会の様子

続いて、しまうまカフェは、患者さん同士のオンライン交流の場です。こちらは、1か月に1回程度開催しています。

飲み物やお菓子を持参して頂き、オンラインで気軽にお話を楽しんで頂く場です。リラックスした雰囲気の中でお話しできますので、EDSに関わる話はもちろん、それ以外の生活に関わることなども、ざっくばらんにお話ししています。仲間づくりや居場所づくりの場になればと考え、開催しています。

しまうま交流会、しまうまオンラインカフェに参加されている方々からは、どのような声が寄せられていますか?

「同じ悩みを持つ人と話せてよかった」「一人じゃないと感じることができた」という声や、コロナ禍で「オンラインの便利さを感じた」といった声も寄せられています。

また、「同じ病気を持つ患者さんとの交流が、励みになる」という声もあります。コロナ禍で、直接会って交流する機会は減っていますし、オンラインを通じて、人とのつながりを感じられるような場はこれからも維持していきたいです。

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コロナ禍の前、リアルで行われていた交流会の様子

「またね」と言って別れた後に、残念ながら会えなくなった仲間もいます。正直、仲間が先に旅立ってしまうのは苦しい経験です。ただ、「〇〇さんが生きた年齢以上、自分も生きるんだ」という新しい目標にもなりますし、自分が生きることで、次の世代の方々に「生きる」という安心感を与えられるような存在になりたい、というお話も聞きます。

みんなで、楽しく生きていけるよう、これからも互いに助けてあって活動していきたいです。

EDSに関わる全国の医療施設情報の発信、NPO法人化も視野に

患者さんからは、どのようなお悩みが多く寄せられますか?

EDS疑いで、確定診断を受ける前の方からは「診断可能な病院を知りたい」という声が多く寄せられています。そのため、現在、当会ではEDSに関わる全国の医療施設の情報のデータベース化を検討しています。

また、確定診断後の方からは、痛みとの付き合い方や、今後のライフイベントに関するご相談、「同じ症状を抱えている患者さんはどのように生活されているのか?」という質問などが寄せられています。

今後、新たな活動に取り組むご予定はありますか?

2022年度にNPO法人化できるよう、今年度は準備を進めています。社会的な信頼を高めることで、より多くの医療従事者の協力を得やすくすることや、患者さんにも持続可能な安定した活動を届けられるようにしたいという思いからです。

公式ウェブサイトなどで、情報を発信していきますので、ぜひご覧頂ければと思います。

新型コロナワクチンなど、患者さんが「今」求めている情報を発信

新型コロナウイルスの感染拡大は、活動にどのような影響を与えていますか?

これまでは、対面でのイベントが主でしたので、影響はありました。オンライン開催に移行する際には、「オンラインでのイベントに慣れていない」など、不安をお持ちの方向けに、事前にテスト接続日を設け、個別に使い方をお伝えするなど丁寧なフォローを心がけています。そのため、オンライン開催に移行後も、多くの方に参加頂いています。

患者さんやご家族からは、「(オンラインで)自宅にいながら全国の患者さんや医療従事者と話すことができるのは、体調に関わらず、参加しやすくなった」という前向きな声を頂いています。

また、医療従事者からも「オンライン開催のほうが参加しやすい」という声が寄せられています。オンラインへの移行によって、参加者の半数程度が、医療従事者になりました。職種も、医師や、認定遺伝カウンセラー、研究者などさまざまな立場の方々にご参加頂いています。そのため、以前よりも、患者さんやご家族は医療従事者と交流しやすい環境が整っていると思います。

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医療従事者からも「オンライン開催のほうが参加しやすい」という前向きな声

オンラインによるイベント開催により、活動の新たな可能性が広がったと感じています。

EDS患者さん・ご家族向けに、新型コロナウイルス・ワクチン接種の情報も発信されていますよね。

はい。公式ウェブサイトの「新型コロナワクチン接種について」というページで発信しています。

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公式ウェブサイト「新型コロナワクチン接種について」より

情報発信を始めた背景として、患者さんやご家族からの声が多く寄せられたことがあります。具体的には「ワクチンを接種しても大丈夫ですか?」「ワクチン接種後の副反応が心配です」といった声です。こういったさまざまな声に対して、会をサポート頂いている医師を中心に、さまざまな医療従事者がすぐ動いてくださり、「新型コロナワクチン接種について」という資料を作成することができました(2021年6月1日時点の情報)。「今、伝えないと意味がない情報だから」、とすぐに動いてくださった先生方には、本当に感謝しています。

今後も、患者さん・ご家族が今求めている情報に対し、スピーディーに対応・発信していきたいと思います。

時代や当事者に合わせた情報の伝え方などを模索して

エーラス・ダンロス症候群に関わる皆さまへのメッセージをお願いします。

インターネットの普及や新型コロナウイルスなど、様々な要因により社会の変化も激しくなってきていることを、最近とても感じます。「情報は 命をつなぐ 手をつなぐ」スローガンのもと、エーラス・ダンロス症候群に関わる方が少しでも前向きに歩き出せるよう、これからも私たちは時代や当事者に合わせた情報の伝え方、交流の形を模索して、チャレンジしていきます。

この記事をきっかけにエーラス・ダンロス症候群を知り、少しでも興味をもって頂けた方は、ぜひ当会までお気軽にご連絡ください。


今回、日本エーラスダンロス症候群協会・運営スタッフの方々には、お忙しい中日程を調整頂き、取材にご協力頂きました。当事者、ご家族など、さまざまな立場の方々が運営スタッフとして活動されており、とてもアットホームな雰囲気が取材中も伝わってきました。

また、EDS患者さん・ご家族向けに、いち早く新型コロナウイルス・ワクチン接種の情報を発信されていた日本エーラスダンロス症候群協会さん。「医師たちが、スピーディーに動いてくださって、本当に感謝しているんです。」というお話を伺い、医療従事者との連携があるからこそ、素早い情報発信が可能なのだと感じました。

「情報は 命をつなぐ 手をつなぐ」を実践し続けているその活動は、今後もEDS患者さんやご家族に寄り添い続けます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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