患者さんへ「希望の道」を拓くために、HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ

遺伝性疾患プラス編集部

HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティは、患者さんとご家族をつなぐコミュニティとして、また、患者家族と医療従事者、製薬会社、行政をつなぐ会として、さまざまな活動を行う支援団体です。患者家族でもある原弘樹さんと靖子さんがご夫妻で運営されています。

息子さんが低ホスファターゼ症と診断を受けた頃は、病気に関する情報を日常的に得る手段がなく、つらい思いをされたという原さんご夫妻。これから診断を受ける患者さんやそのご家族のために正しい情報を届けたいという思いで、活動を始められたそうです。その後、活動は、情報発信や患者さん支援にとどまらず、治療薬承認に向けての政府への働きかけや、医師の学会における情報発信などへと、大きく広がっていきました。

2020年7月に、会の名称を「低フォスファターゼの会」から「HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ」に変更し、新たな活動を始めた原さんご夫妻。これからの活動や、低ホスファターゼ症患者さんとそのご家族への想いなどを伺いました。

HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ代表 原弘樹さん

 

団体名HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ
対象疾患低ホスファターゼ症
対象地域全国                  
会員数29家族、医師3人(2020年8月現在)                  
設立年2008年
連絡先

公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から

「メール」support@hpphope.org

サイトURLhttp://www.hpphope.org/
SNSFacebook
主な活動内容低ホスファターゼ症(HPP)患者さんとご家族のコミュニティ。医療従事者、製薬会社、行政、患者家族をつなぐ会として、HPPの疾患啓発、要望書提出などを通じた政府への働きかけなどを行っている。2020年7月に、「低フォスファターゼの会」から「HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ」に会の名前を変更した。

病気の情報を得られずにつらい日々…同じ病気の患者さんやご家族のために活動を開始

息子さんに症状が現れ、「低ホスファターゼ症」と診断されたときについて、お聞かせください。

2006年4月、1歳8か月だった息子の乳歯が突然抜け始めたことから始まりました。当時、とても不安な気持ちで、いくつもの病院をまわったことを覚えています。そして、半年ほど過ぎた頃に、低ホスファターゼ症と診断を受けました。

息子さんの乳歯が抜け始めた頃のお写真

低ホスファターゼ症という病気を知らなかったわたしたち夫婦は、医師から「難病」と説明を受け、「我が子が難病?本当に…?」と、信じられない気持ちでいっぱいになりました。また、診断した医師は低ホスファターゼ症がご専門というわけではなかったため、病気に関する詳しい説明を受けることができず、そのときは英語の医学書に載っていた病気の解説部分のコピーを渡されただけでした。

それからわたしたちは、医師から渡された英語の医学書のコピーを翻訳し、「低ホスファターゼ症」や病気に関連する「アルカリホスファターゼ(ALP)」という言葉をインターネットで検索し、情報を集めるために奮闘する日々を送りました。しかし、病気に関する情報を満足に集めることはできず、ようやくたどり着いた情報も「英文」で「医学の専門用語がいっぱい」という状態だったんです。このような状況から、低ホスファターゼ症に関する情報を得る術がなかなか見つからず、つらい日々を送りました。

そんな中やっとの思いで見つけたのが、低ホスファターゼ症のご家族が情報発信しているウェブサイトでした。このウェブサイトから、病気に関する情報はもちろん、低ホスファターゼ症を専門に診療されている医師が大阪大学医学部附属病院いらっしゃることを知り、愛知県から車で3時間かけて大阪へ向かうことを決意しました。この先生が、現在の息子の主治医であり、HPP HOPE低ホスファターゼ症コミュニティの顧問を務めておられる、大阪大学大学院 医学系研究科・医学部小児科学教授の大薗恵一(おおぞのけいいち)先生です。

大薗先生は、低ホスファターゼ症の症状や治療などについて、丁寧に説明してくださいました。わたしたちは、大薗先生の言葉一つひとつに救われ、気付けば二人とも先生の前で涙を流しているほどでした。「やっと、病気の情報を得ることができる」という安堵の気持ちと、長く抱えていた不安から解放されたような気持ちでいっぱいになったのだと思います。

大薗先生との出会いで、より詳細に病気の情報を得ることができたんですね。そこから、どうして現在の活動を始められようと思ったのですか?

わたしたち夫婦は、低ホスファターゼ症に関する情報を得ることができず、大変不安で孤独な思いをしました。そのため、これからこの病気と出会う患者さんやご家族には、わたしたちと同じようなつらい思いをしてほしくない、また、同じ病気の患者家族とつながりたいという思いが、活動を始める原動力となりました。

まず、わたしたちはブログを通じて息子の闘病の記録を発信することを始めました。それが、「まひろと低フォスファターゼ症」です。

ブログ「まひろと低フォスファターゼ症」

ブログを通じて、同じ低ホスファターゼ症の患者家族の方々と知り合うことができ、「わたしたちは、ひとりではない」と励まされ、心強く思いました。そして、わたしたちの息子よりも重い症状と闘っているお子さんや、この病気によって亡くなったお子さんたちの存在を知ったんです。「わたしたちに、できることはないだろうか?」と考えるようになった頃、偶然にも大薗先生からの患者会の立ち上げを勧めていただいたこともあり、2008年10月、ブログを通じて知り合った患者家族とともに「低フォスファターゼの会」として活動を始めました。また、金沢大学附属病院の渡邉淳先生にも、会の立ち上げの際には大変お世話になりました。

酵素補充療法の国内承認で一区切り、「HPP HOPE低ホスファターゼ症コミュニティ」として新たなスタート

2020年7月に、「低フォスファターゼの会」から「HPP HOPE低ホスファターゼ症コミュニティ」に会の名前を変更されたきっかけについて、教えてください。

2015年に、立ち上げ当初の目標であった「酵素補充療法」という治療薬の国内承認を果たせたことが大きな理由です。わたしたちは、酵素補充療法の承認に向けて、医療従事者、製薬企業、国に対する働きかけを続けました。酵素補充療法の承認は、それまで症状を緩和する対症療法しかなかった低ホスファターゼ症治療にとって、とても大きな一歩となったのです。また、患者さんやそのご家族と、医療従事者、製薬企業、国をつなぐことは、現在も会の活動の基本として生きています。

酵素補充療法の承認に伴い、これからの会の立ち位置についても考えていこうということになり、その最初の一歩として、会の名称を「低フォスファターゼの会」から「HPP HOPE低ホスファターゼ症コミュニティ」に変更しました。また、ウェブサイトも新しくしました。会の名称変更は、わたしたちのNew Normal(新しい日常)を見つける活動をスタートする意思表示でもあります。これまで、「ひとりでも多くの子どもたちに、希望の道を拓きたい」という思いのもと活動を行ってきたことから、「hope(希望)」というキーワードを継承し「HPP HOPE」としました。病名の表記についても、国の指定難病の登録名にあわせるなどの理由から「低ホスファターゼ症」と改めています。その他にも、「会」でなく「コミュニティ」とし、メンバー間で強いつながりを持って活動を進めていきたいという思いを込めました。

医師との交流会、「希望を持てた」という患者さんの声も

患者コミュニティのミーティングは、どのような内容で開催されていますか?
 

2年に1回、医師によるALPの研究会である「ALPS研究会 」の開催にあわせて、医師のご協力を得て開催しています。ミーティングは、これまでにALPS研究会の開催地となった東京、大阪、金沢など、全国で開催してきました。ミーティングでは、会の活動内容の紹介や、患者さんやそのご家族の自己紹介、情報交換などを行っています。

2019年、2年ぶりに開催されたミーティングの様子

2019年に金沢でミーティングを開催した際には、13家族が参加しました。わたしたちも、同じ病気と闘い、悩みを共有できる仲間と話すことで、気持ちが楽になったり元気をもらえたりと、仲間のいる心強さを実感しています。また、参加された患者さんやご家族からは、「成人の女性患者さんのお話を聞き、娘の未来が明るく見えるようになった気がして嬉しかった」「いろんなお子さんたちの成長を見られて感動した」という感想が寄せられました。

また、ALPS研究会に参加された医師との交流会や懇親会も同時に開催されます。先生方のお話を直接聞いた患者さんからは、「先生方のお話は希望が持てるものが多く、今までよりも希望を持って治療を続けることができそうです」といった前向きな声も届いています。

今後、オンラインでのミーティング開催を計画されているとのことですが、今年、開催のご予定はありますか?

オンラインでのミーティングは、今年の10月頃の開催を目指して準備を進めています。もともと、患者さんやご家族の会員の皆さんは全国にお住まいなので、一か所でのミーティング開催が難しいというのが、活動の課題のひとつでした。新型コロナウイルスの影響もあり、最近注目され始めたオンラインミーティングが、この課題を解決するための一つの手段になるのではないかと考えています。

今年、無事に開催できた場合には、今後、開催回数を増やすなど、ミーティングについてもさらに発展させていきたいと考えています。

患者さんやご家族同士で気軽に交流し、相談しあえる新しいコミュニティへ

今後、特に会員同士の情報交換や、相談、支援活動に力を入れていくとのことですが、その理由について教えてください。

これまでは、酵素補充療法の国内承認に向けての活動が中心だったため、会の「外側」に働きかける活動が多くありました。この目標が達成されたいま、改めて、会の「内側」、つまり会員さんへの支援に重点を置いて活動したいと考えているためです。

低ホスファターゼ症は、日本における患者数が非常に少ない病気です。そのため、患者さんやご家族が病気に関する不安を抱えていても、周りに相談できる人がなかなかいないというのが現状です。とくに、重症の患者さんを日々支えるご家族は、多くのことに悩まれ、大きなストレスも抱えておられるのです。

そんな大変なときこそ、ひとりで抱え込まずに、わたしたちに相談していただければと思います。HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティには、同じ悩みと向きあってこられた患者さんやご家族がいらっしゃいます。また、小さなお子さんの患者さんを支えるご家族にとって、成長された患者さんやそのご家族の体験談は、きっと大きな勇気を与えるものだと思います。

会員さんへの支援活動に重点を置くにあたって、具体的にどのような活動を進めていきますか?

今後はとくに、会員さん同士がストレスなくコミュニケーションできる環境づくりを進めていきたいと考えています。ウェブサイトを新しくした際に、あわせて、会員さん同士で情報を共有できる新しいツールを導入しました。こういったツールも利用していただきながら、患者さんやご家族同士で気軽にコミュニケーションをとり、また、相談しあえるようなコミュニティにしていきたいですね。

また、患者さんやご家族の支援を考えたとき、将来的には、遺伝子治療などの根治療法の確立が大きな目標になると思います。根治療法の確立により、低ホスファターゼ症を含めた多くの遺伝性疾患の患者さんが、いきいきと人生を送ることができる社会を目指して、これからも活動していきます。

低ホスファターゼ症患者さんやそのご家族、その他、患者さんたちを支える方々へのメッセージをお願いします 

わたしたちは、息子を含め、すべての低ホスファターゼ症患者さんが病気を患ったことには、必ず意味があると思っています。もちろん、病気を患ったことで、つらく大変なことが多くあるのは事実です。しかし、その経験によって、自身の心が強くなったり、他の人の思いやる優しい心を持ったりすることができたりするのかもしれない、と思うのです。

もし、わたしたちの息子が低ホスファターゼ症でなければ、このコミュニティを立ち上げることもなく、こんなに多くの患者さんやご家族や、強い志を持つ素晴らしい先生方、海外の患者会の方々など、病気に関わる多くの方々に出会うことはありませんでした。もっと言うと、「難病」や「遺伝性疾患」と聞いても、関心を持たない人間だったかもしれません。そういった意味でも、患者さんが病気を患ったことには必ず意味があると思っています。

そして、今日までこの活動を続けるに当たって、本当に多くの方々に助けていただきました。すべての方々への感謝の気持ちを胸に、「HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ」として心機一転、次の希望の実現へ向かって、これからも前を向いて歩いていきます。


 

2020年7月、会の名前を変更し、新たなスタートを切った「HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティ」。代表の原さんご夫妻が10年以上続けてこられた活動によって、低ホスファターゼ症患者さんやご家族をとりまく環境は大きく変わりました。

「これからこの病気と出会う患者さんやご家族には、わたしたちと同じようなつらい思いをしてほしくない」という強い思いによって始められた原さんご夫妻の活動は、確実に、低ホスファターゼ症患者さんやご家族の支援につながっているのではないかと思いました。新しいコミュニティとしてのこれからの活動にも、大きな期待が寄せられます。

また、今年は10月頃にオンラインでのミーティングの開催も予定されているので、これまでは、遠方にお住まいなどの理由から参加が難しかった患者さんやご家族も、ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。詳しい開催情報については、HPP HOPE 低ホスファターゼ症コミュニティの公式ウェブサイトやSNSで発信される予定です。(遺伝性疾患プラス)

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