クリーフストラ症候群は、発達遅滞、乳児期の筋緊張低下、先天性心疾患などの幅広い症状が現れる遺伝性疾患です。今回ご紹介するのは、クリーフストラ症候群日本家族会です。クリーフストラ症候群のご家族を支援する活動について、同会代表代行の橋本彩さんにお話を伺いました。橋本さんをはじめとする同会の運営に関わる方々は、クリーフストラ症候群のお子さんと向き合いながら、活動を行っています。同じクリーフストラ症候群のお子さんを育てるご家族同士がつながる場所をつくり、また、疾患に関わる情報を届ける活動を行っています。立ち上げの経緯や現在の活動内容について、詳しくご紹介します。

団体名 | クリーフストラ症候群 日本家族会 |
対象疾患 | クリーフストラ症候群 |
対象地域 | 全国 |
会員数 | 21名 |
設立年 | 2023年 |
連絡先 | 公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から |
サイトURL | https://ksjapan-family.com/ |
SNS | |
主な活動内容 | クリーフストラ症候群の当事者ご家族の交流の機会を設けるなど支援活動を行う。その他、関連学会への参加などを通じて、クリーフストラ症候群の理解促進を目的に活動中。 |
「孤独を感じる当事者ご家族を減らしたい」願いから活動を開始
活動を始められた経緯について、教えてください。
我が子が「クリーフストラ症候群」と診断を受けた家族が、同じ疾患の方々とのつながりを求めてSNSで情報発信したことがきっかけです。インターネットでは疾患情報がほとんど得られないため、「我が子はどのように成長するのだろう?」など、わからないことや心配なことが多い状況でした。
最初はSNSをきっかけに、数名の家族でつながりました。当初は孤独を感じていた家族でしたが、同じクリーフストラ症候群の家族とつながることで孤独が和らぎ、安心して気持ちを共有できるようになりました。このような経験から設立されたのが、クリーフストラ症候群 日本家族会です。「孤独を感じる当事者ご家族を減らしたい」という願いを込めて、私たちの活動は始まりました。
LINEやオンラインでご家族とつながる安心感
現在の活動内容について教えてください。
大きく2つあります。1つ目は、クリーフストラ症候群の当事者家族同士がコミュニケーションできる場をつくっています。普段は、LINEグループやZoomでリアルタイムにお話ししています。具体的には、療育、進学先など生活に関わるさまざまなお悩みを皆さんで共有しています。いつでも誰かと安心してつながれるのが、私たちの強みだと思っています。当会の活動の一番の目的として、会員の皆さんの「今」へ寄り添うことを掲げています。また、月に2回程度オンラインでのミーティングを開催。毎回テーマを設定して、皆さんとお話ししています。過去には「療育で使用する器具や装具」「行政の支援制度」をテーマとして扱ったり、学会報告を行ったりしてきました。いつも議事録を残していますので、もし参加できない場合も、安心して内容を確認できます。隔月で「雑談」をテーマにお話しする会も設けていますので、初めて参加される方も安心してご参加いただけます。特に反響が大きいのは、就学や就労に関するお話です。当会は未成年のお子さんを持つ親御さんが多いため、お子さんの将来に対する悩みや不安が大きな課題となっています。
2つ目は、疾患啓発活動です。家族会のもう一つの活動目的が、クリーフストラ症候群への理解者・協力者・研究者を増やすことです。そのため、クリーフストラ症候群に関連する学会へブース出展などを行っています。
定期開催されているオンラインミーティングに参加するご家族からは、どのような声が寄せられていますか?
遠く離れた地域に住んでいるご家族ともつながることができ、皆さんから喜びの声をお寄せいただいています。また、「画面越しに表情を見ながらお話しできる安心感がとても良い」という声も寄せられています。その他、同じ悩みを抱えるご家族とつながることで、「悩んでいるのは一人ではないと孤独を感じることなく過ごせるようになった」「自分の子どもより年齢の高いお子さんの生活や様子などを聞くことで、将来の姿を想像できるようになった」という声を伺います。学会報告に関しても「疾患に関する今後の展望を知る機会となった」など、さまざまな声が寄せられています。
活動を通じて、特に印象に残っている出来事を教えてください。
2024年より始めた学会での疾患啓発活動では、大会長をはじめとする先生方、他の当事者・家族会の皆さんとの出会いにつながりました。家族会の活動を続ける原動力にもなっています。

その他、クリーフストラ症候群が、日本小児科学会小児慢性疾病委員会の令和6年度小児慢性特定疾病の新規追加疾患要望として承認されたことは、啓発活動を始めて本当によかったと思えた瞬間でした。また、当会では、2025年1月より会費制を導入しました。家族会の会員数が増えたことで運営費が必要となったためです。会費制の導入にあたり、反対の方が少なかったことは大変ありがたかったです。
医療従事者の認知度の課題、学会での疾患啓発活動へ
ご家族は、どのような場面で孤独を感じることが多いのでしょうか?
保育園・幼稚園などの身近な場所では、同じクリーフストラ症候群のお子さんと出会うことはほとんどありません。また、クリーフストラ症候群の診療経験を持つ国内の医師は、多くない状況です。医療従事者の中でも認知度が決して高いとは言えない希少疾患ですから、相談しづらい状況もあるのです。このような環境から、お子さんの将来への不安を一人で抱え込み、孤独を感じているご家族が多いように感じます。私の場合は、会を通じてさまざまな年代の患者さんご家族と出会うことができたので、以前感じていた孤独は和らいだと思います。
今後診断を受けるご家族が孤独を感じないために、どのような支援が必要だと考えますか?
クリーフストラ症候群と診断を受けた後、ご家族が福祉の支援にスムーズにつながることが大切だと考えます。そのための知識や情報を得られる環境づくりがまず重要だと考えています。また、当会とつながっていただくことで、そういった情報を知るきっかけにもしていただきたいと思います。現在、先生方と一緒に少しずつそのための環境づくりを進めています。具体的には、初診の段階で医師から家族会の存在や参加方法をお伝えいただくことで、孤独を感じるご家族を減らしたいと考えています。
学会での疾患啓発活動の最近の取り組みを教えてください。
学会は、医療従事者の方々にクリーフストラ症候群を知っていただく大変貴重な機会だと考えています。そこで、まずクリーフストラ症候群がどのような疾患であるかを知っていただくことが重要と考え、第47回日本小児遺伝学会では遺伝性疾患プラスの記事を活用させていただきました。

わかりやすい解説図と内容のおかげで、疾患の概要を効果的にお伝えすることができたと考えています。また、当会が準備した保護者による症例報告も併せて紹介することで、疾患の特徴や、当事者・ご家族が抱える課題について、医療従事者の皆様に直接お伝えすることができました。今後、別の学会で患者・家族会ブースに出展する場合には、また記事を活用させていただきたいです。

遺伝性疾患の当事者・ご家族が安心して生活できる社会を願って
最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。
クリーフストラ症候群は患者数が少ない希少疾患です。一方で、日本にとどまらず世界のさまざまな地域に当事者がいることがわかりつつあります。当会にご参加いただき、同じ疾患と向き合うお子さんたちとそのご家族とつながる体験をしていただけたらうれしいです。他の疾患と向き合う皆さんには、この記事がクリーフストラ症候群を知っていただくきっかけとなればうれしいです。また、遺伝性疾患の子どもやご家族が、自分らしさ・家族らしさを発揮し、安心して生活できるような社会を共に願い、疾患への理解を深める活動を一緒にできるよう、ご支援ご協力いただければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
クリーフストラ症候群のお子さんの子育てとともに、家族会の運営や活動を行っている皆さん。ご家族がつながる場をつくり続けることは決して簡単なことではありませんが、家族会が、多くのご家族にとって大切な場所であることが伝わってくる取材でした。また、会費制を導入したお話とともに、「賛助会員からの支援や寄付によるサポートにも心より感謝しています」というお話もあがっていました。公式ウェブサイトから、ぜひ、あわせてご確認ください。(遺伝性疾患プラス編集部)