「患者さんの気持ちを共有する場を大切に」、日本マルファン協会

遺伝性疾患プラス編集部

日本マルファン協会は、マルファン症候群患者さんやご家族はもちろん、医療従事者などさまざまな立場の方々が参加する支援団体です。マルファン症候群や類縁疾患に関する環境を改善することや、差別や偏見を無くすことを目的に、2007年からNPO法人として活動を始めました。交流会や医療講演会などのイベントを定期的に開催し、公式ウェブサイトでは患者さんの体験談や正しい医療情報などを発信しています。

日本マルファン協会理事の小竹直樹さんは、マルファン症候群患者さんの一人です。マルファン症候群の疑いがあると知ったとき、不安な気持ちを抱えていたという小竹さん。そんなときに参加した日本マルファン協会のイベントで、同じマルファン症候群の患者さんから元気をもらったのだそうです。そこから、今度はご自身が「患者さんたちを応援したい」と考えるようになり、現在は理事として日本マルファン協会の運営に携わっています。今回は、小竹さんにご自身の経験や日本マルファン協会の活動について、お話を伺いました。

NPO法人日本マルファン協会理事 小竹直樹さん
団体名 NPO法人日本マルファン協会
対象疾患 マルファン症候群および類縁疾患
対象地域 全国                   
会員数 約150人(主に患者さんやそのご家族)                 
設立年 2007年
連絡先

公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から

「電話」050-5532-6503(平日13:00~17:00)

※つながらない場合は、名前・電話番号・用件を留守電に入れてください。

「メール」info@marfan.jp

サイトURL https://www.marfan.jp/
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主な活動内容 マルファン症候群患者さんやそのご家族の支援を目的に、交流会などのイベントを開催。サイトでは、患者さんの体験談や正しい医療情報などを発信している。

病気がわかり不安なときに、患者さんたちから元気や希望をもらう

小竹さんは、どのような経緯でマルファン症候群と診断を受けられたのでしょうか?

全ての始まりは、中学生の頃に医師から「マルファン症候群の疑いがある」と言われたことからでした。風邪を引いて総合病院を受診した際に、担当してくれた医師が「君は、指が長いね」と、身体的特徴に気付いてくれたんです。自分の両親がマルファン症候群では無かったこともあり、そのときに初めて、マルファン症候群という病気があると知りました。そして、そこから毎年、心臓のエコー検査を受けることになったんです。

ただ、18歳の頃から検査を受けることを中断してしまいます。この頃、ちょうど就職が決まって健康診断を受けたのですが、そのときに診てくれた別の医師から「マルファン症候群ではないかもしれない」と、説明されたためです。仕事を始めてからは忙しくなったこともあり、病院へ通うのをやめてしまいました。

そして、マルファン症候群のことをすっかり忘れていた30歳のときに、職場の産業医に血圧の異常を指摘されたのです。産業医は心臓外科出身の医師だったこともあり、「心臓に異常がある」と気付いてくれました。そこで、「子どもの頃に、医師からマルファン症候群の疑いがあると言われたことがある」と伝えると、その場ですぐにクリニックの予約を取ってくれました。その後、循環器専門病院で精密検査を受けた結果、大動脈弁閉鎖不全と診断されて手術を受けることになり、このときに「症状から、マルファン症候群で間違いないだろう」と、医師から説明を受けたのです。

もし、18歳の頃の自分がマルファン症候群について正しく知り、心臓のエコー検査を毎年受け続けていたら…と考えると、患者さんが正しい医療情報を身に着けていることは、本人にとって、とても大切なことだと思います。

小竹さんが日本マルファン協会の活動に関わるようになったきっかけについて、教えてください。

日本マルファン協会の「寺子屋マルファン」という勉強会へ参加したことをきっかけに、活動に関わるようになりました。マルファン症候群の疑いがあると二度目にわかったとき、妻がマルファン症候群の情報を調べてくれて、そのときに日本マルファン協会を知ったんです。初めての参加は、大動脈弁閉鎖不全の手術が終わり、リハビリによって少しずつ外出できるようになってきた頃でした。妻が「マルファン症候群の勉強会があるから、一緒に参加してみない?」と誘ってくれて、一緒に参加したんです。そこから、交流会やイベントなどに参加するようになり、徐々に簡単な手伝いをするようになって、今では理事として運営に関わるようになりました。

私は、「マルファン症候群かもしれない」とわかったときに不安な気持ちを抱えていたのですが、イベントなどで他の患者さんたちと話すことで、患者さんたちから元気や勇気、希望をもらいました。だから、今度は私が運営に関わり、「病気について不安を抱えている患者さんたちを応援することができたら…」という気持ちで活動しています。

病気と一緒に生きていくということは、大変なことも多いと思うんですよね。私自身も、そうです。でも、日本マルファン協会の活動に参加されている患者さんは、自分が大変だということを忘れてしまうくらい、とても明るい方が多いなと感じています。マルファン症候群であることを受け入れて、病気とは他の部分で自分の人生を楽しんでいる患者さんが多いからかもしれません。運営に関わるようになった今でも、活動を通じて、患者さんたちから元気をもらっています。

患者さんやご家族へ、経験や悩みを共有する場を提供

交流会や医療講演会、シンポジウムはどのような地域で開催されていますか?

主に、東京都、愛知県や三重県、大阪府を中心に開催しています。その他にも、最近では北海道函館市、福岡県福岡市、新潟県新潟市などで交流会を開催しました。交流会は、総会や医療講演会などと一緒に年3~4回開催しており、医療講演会やシンポジウムは年に1~2回開催しています。

医療講演会の様子

現在は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、これらのイベントは中止しています。ただ、患者さんやご家族が交流する機会を持ち続けたいと考えているため、今後は、オンラインでの開催などを検討しています。以前から、会員さん向けにSkypeを利用した交流会を不定期で開催していましたので、状況を見ながら開催を検討していきます。

交流会やシンポジウムに参加された患者さんやご家族からは、どのようなお話が多く寄せられますか?

初めて参加された方からは、「緊張したけど話しやすかった」「もっとたくさん話をしたかった」という声をいただいています。似たような経験や困りごとを、患者さん同士で共有する、共感しあうというのは、とても大切なことだと思います。

「話しやすかった」といった声が寄せられた交流会

また、「マルファン症候群を専門とする医師(専門医)の話を聞けて良かった」という声もあります。交流会には専門医や認定遺伝カウンセラー、認定遺伝カウンセラー養成の大学院に通われている学生さんたちが参加することもありますので、普段、病院では時間の都合で聞きづらいことも、ざっくばらんに話せるのだと思います。私も、病院から家に帰ったときに「やっぱり聞けばよかった…」と思うことが結構あるんです。症状に直結した内容でなくても、例えば、お子さんが患者さんの場合に「子どもの進路」について相談される方もいらっしゃいます。このように、専門医や認定遺伝カウンセラーに個別に相談できることも、交流会ならではのポイントです。

その他、参加を検討されている患者さんやご家族へ、交流会のお勧めポイントを教えてください。

その他のお勧めポイントは、「交流会は和気あいあいと楽しい雰囲気」だということです。初めて参加されるという方でも、きっと楽しんでいただけると思います。例えば、「マルファン症候群あるある」の話で盛りあがることが多いですね。マルファン症候群は、「背が高い」「指が長い」といった身体的特徴が多いので、「知らない人に、必ず二度見されるよね」「街で、急に知らない人に声かけられるよね」など、マルファン症候群患者さんであれば、一度は経験されたであろう話で盛り上がることができます。病気の辛さを共有するというより、こういった楽しい話をしていることが多いですね。

不安なときこそ、同じ病気の患者さんたちがいることを思い出して

今後、新たな活動に取り組むご予定はありますか?

新しい活動というわけではないのですが…勉強会の「寺子屋マルファン」の活動を復活させたい、と思っています。患者さんやご家族でなくても、誰でもマルファン症候群や類縁疾患について気軽に知ることができる良い機会なのですが、しばらく開催できていません。私自身、初めて参加した日本マルファン協会のイベントが寺子屋マルファンだったので、ぜひ復活させたいですね。

マルファン症候群患者さんやそのご家族、その他、患者さんたちを支える方々へのメッセージをお願いします。

疾患を抱えて生きていると、ふと不安になることもあるのではないでしょうか。私も時折、急に不安になり、一人で考え込んでしまうことがあります。でも、そのようなときこそ一人で悩みを抱え込まず、同じ悩みを抱える患者さんやご家族と気持ちを共有してほしいと思います。私自身、不安なことがあっても、交流会などで他のマルファン症候群患者さんやご家族と話したら元気になったことが何度もあります。病気のことで不安なときこそ、自分は一人ではなく、同じ病気の患者さんたちがいることを思い出してほしいと願っています。

日本マルファン協会が開催する交流会や医療講演会などは、会員でなくても参加することができます。今は新型コロナウイルスの影響で中止していますが、今後、再開した場合には、ぜひ参加してみてください。

また、マルファン症候群および類縁疾患には、いまだに根本的な治療法がありません。今後、根本的な治療法が開発され、患者さんの負担が少しでも少なくなる未来がきてほしいと願いつつ、私たちはこれからも活動をしていきます。

最後に、新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちは今までにない困難な状況に直面しています。医療に携わるすべての皆さまには、心から感謝を申し上げます。マルファン症候群患者さんも症状によっては重症化の可能性があり、ご家族とともに不安な日々を過ごされているかと思います。少しずつですが、私たちも新型コロナウイルスに関連する情報を公式ウェブサイトで発信していますので、よろしければご覧になってください。


 

病気のことで不安になったとき、同じマルファン症候群患者さんやご家族とのつながりによって、気持ちが楽になったという小竹さん。患者さんやご家族同士だから共有できる気持ちがあるのだと、力強く話してくださいました。

また、取材を通じて、皆さんが本当に楽しんで日本マルファン協会の交流会に参加されていることが伝わってきました。残念ながら、現在は新型コロナウイルスの影響により交流会などのイベントは開催されていませんが、最新情報は公式ウェブサイトやSNSを通じて発信されていますので、気になる方はぜひご確認いただければと思います。(遺伝性疾患プラス編集部)

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