非ジストロフィー性ミオトニー症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Non-dysrtophic myotonic syndrome
別名 含まれる疾患名は、先天性ミオトニー(Myotonia congenita)、先天性パラミオトニー(Paramyotonia congenita 、PMC、Paramyotonia congenita of Von Eulenburg)、ナトリウムチャネルミオトニー(sodium channel myotonia 、SCM、カリウム惹起性ミオトニー、Potassium-aggravated myotonia 、PAM)
発症頻度 不明
日本の患者数 不明
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝形式]および[常染色体劣性(潜性)遺伝形式]
発症年齢 0歳から20歳頃
性別 男女とも
主な症状 筋強直、筋肥大、関節拘縮など
原因遺伝子 CLCN1、SCN4A
治療 対症療法
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どのような病気?

非ジストロフィー性ミオトニー症候群は筋線維(筋繊維)の興奮異常による筋強直(ミオトニー)現象を主な症状とし、筋肉のジストロフィー変化(筋線維の破壊や変性)を伴わない遺伝性疾患です。臨床症状や原因遺伝子から、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニー、ナトリウムチャネルミオトニーなどに分類されます。先天性ミオトニーは全身の骨格筋のミオトニーと筋肥大を特徴とします。ナトリウムチャネルミオトニーは運動やカリウムを多く含む食物の摂取後の筋肉のこわばりを特徴とします。反復運動で増悪するミオトニーをパラミオトニーと呼び、先天性パラミオトニーは寒冷によって誘発される筋肉のこわばりを特徴とします。

筋強直は痛みを伴うこともあり、運動開始時に見られることが多く、先天性ミオトニーでは筋肉を繰り返し収縮させることにより筋強直が軽減するウォームアップ現象が見られます。先天性パラミオトニーでは繰り返しの筋収縮によって逆に悪化します。筋強直は寒冷で増悪することが多く、先天性パラミオトニーでは一過性の麻痺(まひ)を来すこともあります。全身の筋肥大によって、ヘラクレス様体型と呼ばれる状態になることもありますが、一方で進行性に筋萎縮・筋力低下を来すこともあります。また、幼少期からの筋強直により関節拘縮脊柱側弯などの骨格変形を伴うことがあります。

先天性ミオトニーで高頻度にみられる症状

筋強直

先天性パラミオトニーでよく見られる症状

寒冷による運動麻痺の増悪、寒冷による筋強直、嚥下障害(飲み込む動作の不具合)、顔面筋肥大、摂食障害、グリップミオトニア(握った手の指が開きにくい)、筋強直、筋肉痛、顔面筋強直、顎の筋強直、上肢筋強直、新生児期の筋緊張低下、新生児期の吸気時喘鳴(ぜんめい、呼吸する時のヒューヒュー、ゼーゼーする音)、パラドキシカルミオトニア(筋収縮を繰り返すうちに筋緊張が悪化する状態)、殴打性筋強直(診察用ハンマーで叩くと起こる筋強直)

先天性パラミオトニーでしばしばみられる症状

周期性低カリウム性四肢麻痺(低カリウム血症を伴う麻痺発作の反復)

非ジストロフィー性ミオトニー症候群の国内における有病率は不明です。先天性ミオトニーは、海外では10万人に1人程度とされています。

非ジストロフィー性ミオトニー症候群は指定難病対象疾病(指定難病114)となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

筋肉の収縮には筋細胞における各種のイオンの出入りが大きく関与します。先天性ミオトニーは骨格筋型クロライドチャネル(骨格筋細胞の塩素イオン/塩化物イオン/Cl-の出入り口)「CLC-1」の設計図となるCLCN1遺伝子の変異によって、ClC-1の機能低下や発現量の低下が生じることが、その発症に関与しています。CLCN1遺伝子は、7番染色体の7q34という位置に存在します。

先天性ミオトニーは常染色体優性(顕性)遺伝型式と常染色体劣性(潜性)遺伝形式があり、前者をトムセン病、後者をベッカー病と呼びます。常染色体優性(顕性)遺伝形式でも発症する理由としては、1対2個の遺伝子のうち、変異のある方の遺伝子から作られたタンパク質が、もう1つの正常の遺伝子から作られたタンパク質の作用を阻害する(ドミナントネガティブ)ことによると考えられています。

ナトリウムチャネルミオトニーと先天性パラミオトニーは、骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.4)(ナトリウムイオン/Na+の出入り口)を構成している中でも重要なパーツである「αサブユニット」の設計図となるSCN4A遺伝子の変異によって、Nav1.4の機能に異常が生じることで発症します。SCN4A遺伝子は、17番染色体の17q23.3という位置に存在します。ナトリウムチャネルミオトニーと先天性パラミオトニーは常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。

常染色体優性(顕性)遺伝形式は、両親のどちらかがこの病気だった場合、子どもは50%の確率で発症します。常染色体劣性(潜性)遺伝形式は、両親がともに遺伝子の片方に変異を持つ(保因者)場合、子どもは4分の1の確率で発症します。また、2分の1の確率で保因者となり、4分の1の確率でこの遺伝子の変異を持たずに生まれます。

Autosomal Dominant Inheritance

Autosomal Recessive Inheritance

どのように診断されるの?

非ジストロフィー性ミオトニー症候群の診断基準が厚生労働省によって作成されています。

下記の①②③に加えて、④または⑤が認められ、下記4つの疾患が除外されれば、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の診断が確定します。

また、①②③が認められ、下記4疾患が除外される場合には、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の可能性が高いと判定されます。

<症状・所見>

①ミオトニーを認める:1)または2)
1)臨床的にミオトニー(筋強直現象)を認める
2)針筋電図ミオトニー放電を認める

②発症は10歳以下

③初期には筋力低下・筋委縮を認めない

④常染色体優性(顕性)あるいは常染色体劣性(潜性)遺伝の家族歴がある

⑤骨格筋型ナトリウムチャネルのαサブユニットあるいは塩化物イオンチャネル遺伝子に非ジストロフィー性ミオトニー症候群に特異的な変異を認める

<除外診断>

筋強直性ジストロフィー、シュワルツ・ヤンペル症候群、アイザックス症候群、糖原病2型(ポンペ病)

どのような治療が行われるの?

非ジストロフィー性ミオトニー症候群に対する根治的な治療法はなく、対症療法が行われます。適応はありませんが、ミオトニーに対しては抗不整脈薬であるメキシレチンが第一選択薬とされています。先天性ミオトニーと先天性パラミオトニーの患者さんを対象とした海外の研究ではメキシレチンはミオトニーを改善し、患者さんのQOLを改善したことが報告されています。その他、カルバマゼピンやフェニトインなどの抗てんかん薬も筋強直に対して用いられます。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本で非ジストロフィー性ミオトニー症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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