ワーデンブルグ症候群の可能性、難聴の母と子が向き合う希少遺伝性疾患

遺伝性疾患プラス編集部

ゆいさん(女性/ワーデンブルグ症候群疑いの患者家族)

ゆいさん(女性/ワーデンブルグ症候群疑いの患者家族)

お子さんが生後10日目頃に、医師から「ワーデンブルグ症候群の可能性」を指摘される。

現在お子さんは1歳で、先天性の感音難聴(両耳)などの症状が現れている。

 

Twitter:https://twitter.com/yuishima0711

先天性の感音難聴、目の虹彩(こうさい)・毛髪・皮膚の色素異常などの症状が現れる、遺伝性疾患「ワーデンブルグ症候群」。日本での発症頻度は推定5万人に1人とされる、希少疾患でもあります。

今回お話を伺ったのは、医師から「お子さんは、ワーデンブルグ症候群の可能性があります」と指摘されたゆいさんです。お子さんは、新生児聴覚スクリーニング検査をきっかけに精密検査を受け、感音難聴と判明。ゆいさんやご主人も難聴の症状をお持ちということで、お子さんの難聴に対して大きな驚きはなかったと言います。

一方で、お子さんには右目が青いという症状も現れていました。父親であるご主人がワーデンブルグ症候群の可能性を指摘されていたことから、「お子さんもワーデンブルグ症候群の可能性がある」と説明を受けたそうです。聞き慣れない病名であることや、インターネット検索では欲しい情報にたどりつけない状況に戸惑ったというゆいさん。今回は、そんなゆいさんに、これまでの経緯やお子さんへの思いについて、お話を伺いました。

先天性の感音難聴・青い右目・父親の症状などから、ワーデンブルグ症候群の可能性

どのような症状をきっかけに、ワーデンブルグ症候群の可能性がわかりましたか?

生後3日目頃に、発熱や無呼吸となり、感染症などもあったので、新生児集中治療室(NICU)に入院することになりました。そこで、主治医から「右目が青い」と指摘があり、目の色が付いている部分(虹彩)の色素異常について説明を受けたんです。眼科の診察を受けたところ、「虹彩萎縮が見られる」とのことでした。

また、息子の父親である夫は、確定診断を受けてはいないものの「ワーデンブルグ症候群の可能性がある」と、医師から説明を受けていました。先天性の感音難聴、目の色が青い(目の虹彩の色素異常)、白髪(毛髪の色素異常)といった症状が現れていたためです。そのため、息子も「ワーデンブルグ症候群かもしれない」とのことでした。眼科の先生に診てもらった際にも、同様のお話がありました。また、遺伝子検査を受けましたが、まだ難聴の原因となる遺伝子の特定には至っていません。

医師から「ワーデンブルグ症候群の可能性」を指摘された時、どのようなお気持ちでしたか?

驚きと同時に、初めて聞く病名に戸惑いもありました。でも、主治医が病気に関する情報を積極的に調べてくれたので、嬉しい気持ちのほうが大きかったです。

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「主治医が病気に関する情報を積極的に調べてくれたので、嬉しかった」と、ゆいさん(写真はイメージ)

特に、ワーデンブルグ症候群の症状の一つに「虹彩異色症」があるということを教えてもらえたことは大きかったですね。息子の青い右目は、ワーデンブルグ症候群による症状なのかもしれない、と思えたからです。また、説明により「夫も息子も、恐らく、同じワーデンブルグ症候群だろう」と思えたことで、「のびのび育てていこう」と、家族で話して決めました。

現在、お子さんは、どのような治療を受けていますか?

難聴なので、補聴器を用いて生活をしましたが、2022年2月に人工内耳手術(両耳)を受けました。

まだ根治療法が確立されていない事実に衝撃、情報を得るのに苦労

「ワーデンブルグ症候群」に関する情報は、どのように探しましたか?また、その際に困ったことはありましたか?

ワーデンブルグ症候群に関する情報は、主にインターネットで探しました。ワーデンブルグ症候群が遺伝性疾患であり、まだ根治療法が確立されていないということを知った時は、衝撃を受けました。

「ワーデンブルグ症候群」とインターネット検索した時、いくつかのサイトを参考にしました。当時の検索で印象に残ったサイトは、ウィキペディアです。ただ、その後、ウィキペディアが、医学的知識の有無によらずどなたでも編集できるフリーのサイトだと知りました。ワーデンブルグ症候群の治療方法などを知りたくて調べていたのですが、欲しい情報にはなかなか行き当たらなかった印象です。

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インターネット検索では、欲しい情報になかなか行き当たらなかった(写真はイメージ)

自身も感音難聴の当事者。お子さんの将来に対して思うこと

ゆいさんご自身の難聴の症状について、教えて頂けますか?

私自身の難聴は1〜2歳の頃にわかり、両耳とも「感音難聴」だと診断されました。感音難聴は、耳の奥にある内耳という部分などに障がいが生じることで起こる難聴です。感音難聴は、音としては聞こえても、話の内容までは聞き取ることが難しい状態です。

難聴の程度を示すデシベル(dB)は、私の場合100dBくらいと言われました。これは「重度難聴」と言われるレベルで、耳元で話されても聞き取ることが難しい状態です。そのため、今は補聴器を装用しています。

私が子どもの頃は、新生児聴覚スクリーニング検査がありませんでした。ですので、自分の難聴が生まれつきのものなのか、途中で聞こえなくなったものかはわかりません。夫も似たような状態だと聞いています。

お子さんの「先天性感音難聴」を知った時、どのようなお気持ちでしたか?

私も夫も難聴の症状があるので、それほど驚きはありませんでした。ただ、息子の将来のことを考えると、「強い気持ちを持たないといけないかな」と、思いました。きっと、これから難聴によるさまざまな困難があると思いますので、困難を乗り越えていくために、家族が強い気持ちを持たなければと感じています。

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「困難を乗り越えていくために、家族が強い気持ちを持たなければ」と、ゆいさん(写真はイメージ)

私自身、小さい時から発音練習をしたり、療育としての絵日記や発表会などを行ったりしてきました。そういったことはもちろん、今は手話、話し手の唇などの動きから言葉を理解する口話(こうわ)などを覚えていく必要があります。それらを息子に覚えてもらうには、どうしたら良いのか…など、今から考えることがたくさんあります。

また今後、地域の学校へ通学するようになったら、きっと、他にもさまざまな課題が出てくるでしょう。でも、一つずつ家族で乗り越えていきます。

自分を信じて。あなたは一人ではない

遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

医師から「遺伝性疾患です」と告げられた時は、うまく受け止められないかもしれませんし、遺伝性疾患を理由につらい気持ちになることもたくさんあるかもしれません。また、遺伝性疾患の種類によっては、症状が外見に現れる場合などもあると思うので、皆さん、きっとさまざまな苦労をされていると思います。

だけど、「多くの困難は、時間が解決してくれる」と、私は考えます。周りからの意見に左右されず、まずは、自分を信じてください。そして、「あなたは、決して一人ではない」ということを知ってほしいですね。遺伝性疾患に関わる悩みを共有できる仲間たちは、全国にいます。SNSなどでも気軽に交流することができる時代ですので、頑張りすぎず、時には外の世界にも触れながらやっていけたらと思います。一緒に、前を向いて歩んでいけたらうれしいですね。私も、頑張ります!


今回、お子さんの手術や入院などで大変な時期にも関わらず、取材にご協力くださったゆいさん。当事者としてのご自身の経験などを踏まえ、今からお子さんの将来のために準備をしている姿がうかがえました。

希少遺伝性疾患は、正しくわかりやすい情報を得るのに苦労される場合も多いと思います。そのために、正しく理解されず、周りからさまざまな言葉を投げかけられる場面もあるかもしれません。もし、そういった場面に直面した場合には「まずは、自分を信じて」「あなたは、決して一人ではない」という、ゆいさんの言葉を思い出して頂ければと思います。(遺伝性疾患プラス編集部)

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