東西南北4人の専門医がお答え!【各地域での受診のお困りごと】Q&Aコーナー
- 2024.09.12 公開
- IRUD
- 遺伝性疾患プラス主催イベント
“東西南北の専門医が徹底討論!「お住いの地域における受診のお困りごと」”の開催に向け、遺伝性疾患プラス読者の方々から、たくさんの質問が寄せられました。これらの質問に、各地域を代表する遺伝性疾患の専門医の先生方にお答えいただきました。
お答え頂いた先生方
【東】の専門医:齋藤加代子先生(東京女子医科大学 名誉教授、同 ゲノム診療科 特任教授)
【西】の専門医:大薗恵一先生(医誠会国際総合病院 難病医療推進センター センター長)
【南】の専門医:知念安紹先生(琉球大学 大学院医学研究科 育成医学(小児科)講座 診療教授)
【北】の専門医:櫻井晃洋先生(札幌医科大学 医学部 遺伝医学 教授)
希少遺伝性疾患の当事者です。病院の先生が、疾患について今一つしっかりと教えてくれず、あまり私に関わってくれません。県内に同じ疾患の患者さんが少ないせいなのでしょうか?(かいちゃんの娘さん・和歌山県、もっ君ママさん・愛知県)
大薗先生:いろいろな観点があり、それによって理由は異なると思います。
まず、希少疾患と言っても、日本にほとんど患者さんがいないような超希少疾患から、小児科医であればほとんどが知っているような希少疾患までさまざまです。しかし、どのような希少疾患の方も、診断がついた方であれば、その気になればインターネットなどで調べて、その疾患についてある程度知ることができます。ところが、見つけた情報が古かったり、間違っていたりすることもあるわけですよね。
こうした現状の中で私が思うのは、ぜひどんどんご自身で調べてみて、見つけた情報についてわからないところや、矛盾しているなと思うようなことがあったら担当医の先生に「こんな情報があったのですが、今もそうなんでしょうか?」「この情報は正しいですか?」など、積極的に聞いてみていただきたい、ということです。
多くの方がかかる病気(コモン・ディジーズ)よりも、希少疾患(レア・ディジーズ)の方が、医師も勉強する機会を得づらく、調べるのに多くの時間がかかります。そういう状況なんだなというのを理解して頂きつつ、ぜひ、病気のことを完全に医師任せにせず、ご自身で勉強し、積極的に問題を解決していって頂きたいと思っています。私自身も、患者さんにこのように説明しています。
未診断疾患で、県内の病院の遺伝子診療部にかかりました。親身に相談に乗っていただき、IRUD参加の話が上がったのですが、IRUD診断の拠点病院ではなかったということで、参加が叶いませんでした。県内の病院からIRUDに参加できる方法があったら教えてください。参加するには両親も一緒に解析すると聞いていますが、両親ともに高齢なので、急いでいますし、精神的にもきついです。(かおりんさん・島根県)
知念先生:IRUDでは、かかりつけ医の先生からその地域のIRUD事務局に患者さんの参加をお申込み頂くための、「コンサルシート」というものを設けています。ですので、かかりつけ医の先生に、「コンサルシートを用いてご相談できませんか?」とうかがってみたり、受診された遺伝子診療部にもう一度行かれて、「拠点病院をご紹介いただけませんか?」と聞いてみたりするというのが、一つの方法としてあるかと思います。
IRUDは「研究」であるため、診断の依頼を受けた後、診断委員会での承認を経て、ゲノム解析が開始される、というフローになっています。診断委員会では、症状や経過などをかなり細かく確認し、遺伝性なのかな?ゲノム解析をする必要が本当にあるかな?というところを議論します。その結果、診断委員会で承認されず、IRUD参加とならない方もおられます。かおりんさんのご状況は詳しくはわかりませんが、今回参加できなかった理由について、拠点病院じゃなかったという以外にもあったのかな?もっと詳しく知りたいな、と思われているのであれば、やはりもう一度、受診された遺伝子診療部の先生にお伺いしてみるのが良いかなと思います。
子どもが遺伝性疾患の診断を受け、それ以来、県立のこども医療センターに通っています。そろそろこども医療センターを受診する年齢が終わるのですが、次にかかる病院は、何を重視して決めていけば良いのでしょうか?今は、家から通えるのでありがたいと思っています。(けいとらさん・神奈川県)
齋藤先生:こども医療センターのような、病院全体が小児科の施設において、大きくなられたお子さんが次の病院を探される、いわゆる「移行期医療」はいま大変問題になっている課題の一つと思います。そのときに一番重視すべき点は、「お子さんが持つ疾患における特徴」だと思います。例えば、けいれんを起こす遺伝性疾患の場合には、けいれんのコントロールを中心に、長期的に全身管理をしてもらえる病院を選ぶのが重要でしょう。あるいは口蓋裂がある場合には、手術のタイミングや、手術後であればその後の長期的なフォローが重要になるでしょう。また、心疾患を合併している方の場合、手術後であればその後のフォローについて、手術前であればいつ手術や心臓カテーテルをすべきかについてなどが重要になります。このように、お子さんの疾患によって、それぞれ大人になった後も長期的に重要な特徴があります。そこを中心に、専門性の高い病院を選ぶのが大事だと思います。
ただ、そうは言っても、実際そのような病院をどう探したら良いのか、なかなか難しいところだと思います。私たちが携わっている「遺伝子診療部」「ゲノム診療科」など、一般的に遺伝性疾患を専門にしている診療科は全国に散らばっており、大学病院も含めると、100以上あります。これらの診療科は、大人も子ども診療できる「コーディネーター」的な役割を持ってますので、お住まいの地域で遺伝診療を行っている病院、もしくは、今かかっていらっしゃるこども病院の遺伝科で、「成人後の病院をどうしたらいいですか」とご相談をされることも、病院選びのうえで重要かなと思います。
未診断の子どもの親です。近所には相談できる医師がほとんどおらず、仕事の都合などでなかなか都市部の病院に相談に行く時間が取れません。そんな中で、主治医に「この病院に相談しに行くと良い」と言われた病院へ、都合をつけて相談に行ったところ、「東北には他に大きな病院があるのになぜここに来たのですか」と言われ、それが少しトラウマになっています。子どもの診断に向け、私はどのような行動をすれば良いのでしょうか?(ももちさん・岩手県)
櫻井先生:お子さんのために、せっかくご都合をつけて遠方まで行かれたのに、非常に残念な対応を受けられたと知り、同じ医療者として申し訳ないと思いました。ただ、今回のケースは医療の問題というより、この医師の人柄の問題ではないかという気も若干いたします。ももちさんは、難病において「ダイアグノスティック・オデッセイ」と呼ばれている状況にあるのではないかと思います。これは、診断がつかないまま、長い年月にわたって多くの医療機関の受診を余儀なくされている状況を言います。何年も診断がつかないままでいるのは本当に大変だと思います。
どうしたらよいかということですが、「IRUD拠点病院」に連絡をして、どのようにしたらよいかアドバイスを受けられるのがよいのではないかと思います。IRUD拠点病院は全国にあり、そこには未診断の患者さん・ご家族を受け入れる体制があります。IRUD拠点病院のリストは連絡先を含めた形でホームページに掲載されていますので、ここからお近くの拠点病院を探してみてください。IRUD連携病院も全国にありますが、より体制の整っている拠点病院へご連絡頂くのがよいと思います。
免疫が関わる遺伝性疾患と診断されています。一つの病院でこの疾患全体を診てもらえておらず、兵庫県の大学病院の皮膚科、大阪府の大学病院の膠原病科、その他別の病院の整形外科、内科、と、県外の複数の病院を掛け持ちで通院している状況です。どうしたら通う病院を減らせますか?(Pastelさん・奈良県)
大薗先生:いろいろな症状に対する治療を、たくさんの病院に通って受けておられる中で、やはり中心的にかかる診療科は、いわゆる免疫膠原病内科になるのだと思います。そして合併症について、いろいろな専門家に診てもらっているという状況ですね。通う病院を減らすためには、まずはその中心となる診療科で、「いろいろな病院に通わなくてはいけないことが負担になっている」ということを認識してもらわないといけないと思います。中心となる診療科のある病院には、おそらく長年かかっておられると思います。また、最初の診断に関わってくれた医師には、おそらく感謝の気持ちなどもあると思います。そのため、言いづらいかも知れませんが、やっぱり現状不便だということをお伝えしてみると、ご理解頂けるのではないかと思います。1つの病院で全て診てもらうというのはなかなか難しいかも知れませんが、中心的に通う診療科の先生にご理解頂きつつ、いま別々の病院で診てもらっている合併症を同じ病院でどこまで診てもらえるかなど整理しながら、まとめられるところはまとめ、負担を減らしていくことは必要じゃないかなと思います。ぜひ、本音をぶつけてみてください。
きょうだいが遺伝性疾患の診断を受けました。ファミリーテストをやった方が良いという疾患だったため、自分も検査を受けようと思いました。そこでかかりつけ医に問い合わせたところ、門前払いされてしまい、紹介状も書いてもらえませんでした。結局自分で県内の病院を調べ、遠いのですがそこへ行くことにしました。他に良い方法はあったのでしょうか?(やすさん・埼玉県)
齋藤先生:かかりつけの先生に問い合わせて門前払いとは、つらい思いをされましたね。遺伝性疾患や希少疾患では、場合によってはかかりつけの先生もすぐに答えられないことや、困ってしまうこともあるんじゃないかなと思います。一方で、「ごきょうだいが診断された疾患と同じような体質を持っているかも知れないのであなたも遺伝学的検査で調べてみましょう」といった話になることは、これからだんだん増えてくるのではないかと思います。特に遺伝性のがんではそうした流れが進んでいます。
ご質問について、ファミリーテストをやった方が良いと助言くださったところに、「どこで検査ができますか?」と、まず相談してみるのは一つの方法だと思います。もしくは、ごきょうだいが診断された病院が遠かったとしても、まずはそこで一緒に診てもらい、同じ疾患だとわかった場合には、改めてお住まいの地域の専門の先生を紹介してもらって、その後そちらに通うという方法もあると思います。
最近は、遺伝性疾患でも治療可能なものや、適切な管理によって発症の予防が可能なものが増えてきています。ですので、遺伝性疾患の診断がつくことを悲観的に思わず、むしろ、きちんと診断がつき、ご自身のお身体について正確な情報が得られるようになることによって、治療や予防のチャンスを逃さずに過ごせる、と思って頂ければと思います。
子ども2人が、進行性の遺伝性疾患です。北海道に住んでおり、大きな市立病院に通っていますが、専門科がなく、定期検査のみで情報も少ないため、今年から本州の専門病院へ通うことに決めました。年1回の通院ですが、家族4人の飛行機代と宿泊代はかなりの出費です。地域格差・医療格差を感じています。こうした状況は今後解決されていくのでしょうか?(あすさん・北海道)
櫻井先生:お住まいの地域では検査しかできないということで、これから受診される北海道外の専門病院では臨床試験として治療を受けておられるかも知れないと予想しました。臨床試験の場合、限られた大きな施設でしか実施できないものが多いため、地方にお住まいの方々は通院がハードルとなり参加できないことも多いと思います。それを解消するために、リモートでの臨床試験がさまざまな形で進められています。各疾患に対して今すぐ体制が整うとは言えませんが、将来的にはこうした形で、お住まいの地域によらず専門的な臨床試験や医療が受けられるようになればと思っています。
それから、国内の限られたところにしかその疾患を専門的に診ている医療機関がない場合でも、そこの専門医は、研究班のつながりなどで、全国のどこにその疾患を診れる医師がいるかという情報をお持ちのことが多いと思うんです。なので専門病院の先生に、「移動の負担が少ないところで診てもらえるところはありませんか?」と直接尋ねてみられるのがよいと思います。こんなことを聞くと主治医が気を悪くするのではないかと心配し、言えないという方もおられますが、決してそんなことはありません。自治体、市立病院、遠くの専門病院がうまく情報共有をして、「市立病院でこういう検査をやって頂いて、何か変化があったら専門病院へ教えてください」といったように対応することも可能です。私も実際にこうした形で医療側のネットワークを作り対応していることがあります。ですので、まずは本当に遠慮せずに相談されてみることをお勧めします。
家族が進行性の遺伝性疾患を発症しています。住んでいる地域は過疎化による病院の診療科縮小や閉院が進み、段々こうした希少な疾患の受診自体が困難になってきているのを感じています。また、うちの家族のように症例数が少ない疾患を診療した経験がある医師も少なく、こちら側から医療者に情報提供をする機会が増えてきています。こうした状況に対して今後の改善策などは国や地域によって進められているのでしょうか?(AOJINさん・宮崎県)
知念先生:進行性の疾患ということで、人生設計も含めて合併症や進行に合わせていろんな細やかな対応が必要と思います。そうした状況で、医療者側への情報提供という努力をされていることに、本当に敬服いたします。
一つの改善策として進められているのは、オンライン診療です。例えば私のいる沖縄では、専門医のいない宮古島の病院と大阪の病院と「オンライン診療」という形で連携し、遺伝性神経疾患でてんかんを起こすお子さんの患者さんについて、てんかんの発症形態を確認したり治療薬を選んだりする、というようなことを数か月おきの定期診療という形で行っています。疾患にもよりますが、こうした動きは今後も広がっていくと思われます。
それから、患者会がある疾患の場合には、お困りの状況について患者会に伝え、患者会からの声として専門医に届ける、そして専門医と一緒に自治体や国に届けるなど、声の波を段々大きく広げていって頂くというのも、一つ大事な点かなと思います。まだこれは当たり前のやりかたにはなっていませんが、実際、こうした改善方法に向けて努力されている先生方もいらっしゃいますし、こうした流れを進めていく方向にはあるのではないかと思っています。
専門医が近くの病院にいません。(もんのさん・埼玉県、リーぬさん・大阪府、hirodyさん・京都府、ほか多数)
大薗先生:まず、「専門家のいない難病はたくさんある」ということを知っておいて頂きたいと思います。もちろん専門家のいる希少疾患もありますが、それでも基本的に少なく、そう簡単には近所にいないということ、大学病院であってもいないことがそれほど特殊ではないということを、まずご理解いただくことが大事だと思います。そのうえで、「専門家」について、ご自身の関わる病気そのものの専門家というふうに捉えず、もっと広い視点から考えて頂ければ思います。例えば、低身長や免疫不全などの特定の症状に対する専門家は、その分野で深い知識と経験を持っており、それぞれの専門分野で貴重な医師です。そのため、彼らはやはり専門家として捉えるべきじゃないかなと思います。
もう一つ大事なこととして、例えば定期的に受診していても経過観察をするだけだとご不満に思われる場合もあるかと思いますが、経過観察は決して無駄ではないということをお伝えしたいと思います。医学・医療は日進月歩です。ちょっと前までは名前すらついていなかった病気が診断できるようになり、さらにその原因がわかってきているものも増えています。先ほどから話題に上がっているIRUDにより、ご自身の病名がわかったという人もどんどん増えています。さらに、治療法ができた難病も増えてきているわけです。ですので、経過観察のために病院へ行き続けることは、診断や治療ができるようになったときに、その機会を逃さない、という意味で、大変重要なのです。現状に不満があることも非常によくわかりますが、ぜひ受診を続けて頂きながら、ご自身でも新しい情報をつかんだらぜひそれを主治医に積極的に聞いてみて頂きたいと思います。希少疾患の分野では、こうしたフィードバックも非常に大事だと思っており、ぜひこうして、お互いにコミュニケーションを続けながら疾患に向き合っていかれればと思っています。
同じ疾患の人が周りにいません。(あぉあぉさん・北海道、あすかっちさん・兵庫県、かいちゃんの娘さん・和歌山県、ほか)
齋藤先生:希少疾患全般にそうですが、特にIRUDによってご本人だけでなく主治医も初めてご経験されるような、非常にまれな疾患の診断がつくことが増えてきており、孤独感を感じる患者さんがおられるというのは事実として認識しています。100万人に1人の疾患などもあり、そう簡単に患者さん同士で会えないこともあると思いますが、幸いインターネット上で同じ疾患の方に出会って情報交換をされるとか、患者会をそこで立ち上げたというようなお話もよく伺っています。
こうした希少疾患の診断がついた方々は、お子さんだったら学校や教育のこと、大人になってくると自立や収入を得る手段のこと、場合によっては食事、嚥下(飲み込み)、呼吸器のことなど、病気と付き合いながらの生活面でいろいろな不安が出てきて、相談したいことは山ほどあるのではないかと思います。そんな時にどうしたらよいか、ですが、同じ疾患の人と出会わなくても、正しい情報をしっかり得るという意味では、病院の医療社会福祉室などにおられるメディカルソーシャルワーカーや、役所の難病相談支援センターなど、相談先として体制が整っている所に相談して頂くのはすごく大切なことです。このほか、周りに相談できる医療の専門家がおられればそういった方や、保健所の支援センターの保健師さんなど医療の専門性も少し持っておられるような役所の方も、ご相談先になると思います。同じ疾患ではなくても、同じような症状がある人や、同じような生活上の問題点がある人を紹介してもらえたり、コミュニケーション上の情報をもらえたりする可能性もありますし、そうした症状に対する適切な助言をいただける可能性もあると思います。
疾患に関する情報が入ってきません。(かおさん・北海道、横須賀のhideさん・神奈川県、トシさん・福岡県、ほか)
知念先生:今は希少疾患の情報も、インターネット上で公的機関が発信しているサイトなど、信頼できる情報サイトからかなり得られる時代になっていますが、皆さんがなかなか得られない、見つけるのが難しいと思われている情報は、ご自身が関わる疾患の自然歴(治療をしない・治療がない場合の病気の経過)や、最新のお薬・治療法についての情報という場合が多いのではないかと思います。やはり、その希少疾患を診断された先生の所に、年に1回でも相談に行かれる体制があると、非常に良いのではないかと思います。とはいえ、難しいこともあり、なかなか解決しないこともありますよね。
まず自然歴に関して、特に最近病名がついたばかりというような希少疾患では、自然歴が十分わかっていないものもあるため、「自分はこの先どうなるのだろう」という不安が大きい方もおられると思います。こうした方に対して私は、できるだけ同じ病気を持つ20代や30代の方の情報を探し、見つけた場合には、「こういう人がいますよ」という情報提供をしています。ただ、そうした情報も、1人や2人といった少人数の情報であることが多く、そこに例えば「神経の症状が段々強くなっていく」という情報があったとしても、その病気の人全員が当てはまるとは言い切れない、ということもあわせてお伝えしています。あとは、信頼できる希少疾患の情報サイトなどを普段からチェックしていると、欲しい情報が入ってくることもあると思います。
新薬や新しい治療法の情報についても、動物実験の段階から入手するのは少し探し方が難しいところもありますが、実験の結果有望だとわかり、ヒトを対象とした治験に入ったものについては、臨床試験情報を公開している公的な情報サイトから閲覧することができます。こうしたサイトにも、常にアンテナを張っておいて頂くと良いのではないかと思います。
病院が自宅から遠く、通院が大変です。(夢人54さん・兵庫県、にゃころさん・千葉県、ともさん・栃木県、ほか)
櫻井先生:治療のために遠方の病院へ行かなくてはならないのは、本当に大変だと思います。北海道では、難病に限らず診療全般でこうした問題を抱えている方がたくさんいらっしゃいます。私が診ている患者さんでも、病院まで泊まりがけで来られる方がおられます。
ただ、本当にその遠方にある専門の病院や専門の診療科でないと、希少疾患に関する診療は一切行えないのかというと、実は、専門の病院や医師からの依頼によって、定期検査や経過観察など、ある程度の部分はお近くの病院で行ってもらえる場合も少なからずあります。ですので、最初から諦めずに、遠くの専門病院へ行った際に、こうしたことが可能かどうか相談してみて頂くことが大事かなと思います。もちろん、患者さんと近くの病院、それから今通っておられる専門病院とで、十分なすり合わせをすることが必要になりますが、こういった方法で、通院の負担を軽減することが可能な疾患はあると思いますので、一度ご相談されることをお勧めしたいと思います。
それから今、病院と病院、あるいは患者さんと病院を、オンラインでつなぐ手段もいろいろ普及してきています。そういった中で、例えば専門の病院のアドバイスをインターネットで受ける、といったことも徐々に各所で出来るようになってきています。今後、こうしたネットワークを私たち医療者側もさらに活用していくことで、今日寄せて頂いたような、さまざまなお悩みを持つ患者さんの負担を少しでも軽くできれば、と思っています。
ご登壇頂いた先生方
【東】の専門医:齋藤加代子先生
東京女子医科大学医学部名誉教授・特任教授。医学博士。東京女子医科大学医学部を卒業後、同大小児科学教室の助教、専任講師、准教授、教授を経て、2004年より現職。日本遺伝カウンセリング学会前理事長。日本人類遺伝学会前理事。文部科学省科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会委員。臨床遺伝専門医(指導責任医)。小児科専門医、小児神経専門医。難病指定医。
【西】の専門医:大薗恵一先生
大阪大学名誉教授・医誠会国際総合病院 難病医療推進センター センター長。医学博士。大阪大学医学部を卒業後、済生会富田林病院、大阪大学医学部付属病院、Baylor College of Medicine(Research Associate)、大阪府立母子保健総合医療センター検査科診療主任、同センター研究所環境影響部門部長、大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学小児発達医学講座教授、同研究科情報統合医学小児科学講座教授等を経て2023年4月より現職。日本小児科学会専門医・指導医、日本内分泌代謝科(小児科)専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。日本小児科学会理事、日本内分泌学会理事、日本骨代謝学会理事、日本ステロイドホルモン学会理事、日本小児内分泌学会理事等、多数の学会で役員を歴任。
【南】の専門医:知念安紹先生
琉球大学 大学院医学研究科 育成医学(小児科)講座 診療教授。博士(医学)。琉球大学医学部を卒業後、同大医学部附属病院助手、講師、同大大学院医学研究科育成医学講座准教授等を経て、2022年より現職。日本小児科学会専門医・指導医、日本人類遺伝学会臨床専門医・指導医。
【北】の専門医:櫻井晃洋先生
札幌医科大学 医学部 遺伝医学 教授。医学博士。新潟大学医学部医学科を卒業後、シカゴ大学医学部甲状腺研究部研究員、信州大学医学部附属病院助手、助教授/准教授等を経て、2013年より現職。日本遺伝カウンセリング学会理事長、日本人類遺伝学会前理事、日本遺伝子診療学会理事、日本内分泌学会理事、臨床遺伝専門医・指導医、内分泌代謝科専門医・指導医。