【西】の専門医・大薗恵一先生が語る「地域における医療の特色と課題」

遺伝性疾患プラス編集部

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日本の西に位置する大阪府を拠点に、遺伝性疾患をご専門として長年携わっておられる、大阪大学名誉教授・医誠会国際総合病院 難病医療推進センター センター長の大薗恵一先生に、地域における医療の特色や課題について、ご講演頂きました。


医誠会国際総合病院 難病医療推進センター センター長の大薗です。日本の西の医療と言ってもここで全部は語れないため、現在の居住の大阪府における、難病医療の話をさせて頂きます。私は前職が大阪大学でしたが、その医学部附属病院でも難病医療推進センターを作り、そこのセンター長をしていました。ですので、皆さんと協力しながら難病医療をどうやって推進していくのかということを、ここ10年くらいの課題として行っています。

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大薗先生ご提供。

医誠会国際病院は、まだ新しい病院なので、難病に関しても初めて実施することばかりの状況です。そのような中、2024年の2月~3月には、初めてRare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日、RDD)に参加し、「難病医療における疾患レジストリの意義について考える」というテーマで患者会や医療者、企業の方などに向け、広く講演会を開催しました。さらに、大阪府の高校生と一緒に難病について考えるようなイベントも実施しました。上の写真は、そのときの様子です。私による講演を基調として、高校生の皆さんと意見交換をしました。このように、難病に関する認知を世の中に広める活動も行っています。

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大薗先生ご提供。

大阪府の難病医療体制について説明します。まず、日本では2015年に難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)が施行されました。それに基づき、2017年に都道府県における地域の実情に合わせて難病の医療提供体制を作るようにという通達が国から発せられました。キーワードはこの、「医療提供体制」なのですが、大阪府はいち早くこれに対応しようと動き出しました。当時、私は大阪府の難病医療対策の座長をしていたので、このときからの動きを大体把握しています。

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大薗先生ご提供。

こうした流れで開始したのが、大阪難病医療ネットワーク事業です。これは、大阪府の病院を「難病診療連携拠点病院」「難病診療分野別拠点病院」「難病医療協力病院」の3つのグループに区分して、下の【目指すべき方向性】にあるようなことを実現していこうということなのですが、平たく言うと「病院を超えて難病を診ていこう」ということです。難病患者さんは非常に人数が少ないですし、専門医も少ないので、「この病気ならばこの先生に診てもらいましょう」といった紹介・医療アクセスを容易にしたいというのが一番大きな目的です。

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大薗先生ご提供。

この3つのグループについて、大阪府の具体的な状況を示したものがこちらです。「難病診療連携拠点病院」は、この図の左側に記載してある施設を含め、今は計14施設まで増えています。また、「難病診療分野別拠点病院」としては、循環器の分野では国立循環器病研究センター、呼吸器神経疾患の分野では大阪刀根山医療センターがあります。「難病医療協力病院」は、この表では12施設となっていますが、公募を継続しており、今後も増加していきます。さらに、非常に難しい「移行期医療」に関して、移行期期医療支援センターを大阪母子医療センターの中に作り、連携を強化しています。

患者さんに向けては、この右側にあるように「療養生活支援体制」を作り、保健所を中心に提供できるサービスなどを展開しています。

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大薗先生ご提供。

最後に、情報を得る手段について触れたいと思います。いろいろな情報の取得方法はあると思いますが、大阪府の難病ポータルサイトは比較的よく出来ており、役に立つのではないかと思っています。医療費助成のこと、実際に提供体制のある医療の種類、治験情報など、日々更新され変わっていく情報をできるだけ正しく提供できるように、また、ここを見ればワンストップでいろいろな項目が調べられるようにと心がけて作られています。こういう取り組みは重要だと考えています。

このように、大阪府は難病医療の提供体制については、全国的に見ても進んでる方であると思っていますが、提供体制を作ればそれで終わりというわけではありません。実際に患者さんが医療にアクセスしていくためにはもっと細かい体制整備が必要だろうと思っていますし、それから「多職種連携」も重要だと考えています。この体制整備は医師だけでは成り立たない事業で、事務局機能やコーディネーター機能なども重要です。定期的な勉強会も必要になるでしょう。齋藤先生も(ご講演で)おっしゃっていましたが、大阪府は大学病院が5つ、国立の高度専門医療センター(ナショナルセンター)が1つあります。また、大阪市の医療センターもあれば大阪府の医療センターもあります。

こうしたそれぞれの立場で、割と連携しやすい方だと感じているので、そういう中で、難病の患者さんができるだけ適切な医療にアクセスできるように、どこに行ったらいいのか困ることがないように、今後も協力してしかりとした体制整備を進めていきます。以上です。

【西】の専門医:大薗恵一先生

大阪大学名誉教授・医誠会国際総合病院 難病医療推進センター センター長。医学博士。大阪大学医学部を卒業後、済生会富田林病院、大阪大学医学部付属病院、Baylor College of Medicine(Research Associate)、大阪府立母子保健総合医療センター検査科診療主任、同センター研究所環境影響部門部長、大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学小児発達医学講座教授、同研究科情報統合医学小児科学講座教授等を経て2023年4月より現職。日本小児科学会専門医・指導医、日本内分泌代謝科(小児科)専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。日本小児科学会理事、日本内分泌学会理事、日本骨代謝学会理事、日本ステロイドホルモン学会理事、日本小児内分泌学会理事等、多数の学会で役員を歴任。