遺伝性疾患・難病患者さんに関わる「医療費」についてのアンケート結果【概要編】

遺伝性疾患プラス編集部

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医療費や公的な支援に関するアンケートを2023年11月に実施し、遺伝性疾患・難病の当事者を中心に122人から回答いただきました。率直に、丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。集計の結果をまとめた【概要編】とフリーコメントを集約した【コメント編】の2つの記事に分けて、結果を発表します。

回答者は、当事者本人とご家族が半々、年代で多かったのは40代(36.1%)、50代(27.9%)でした。就労している人が約6割、関東地方にお住まいの方が約4割でした。関わりのある疾患(人数)は多い順に、神経線維腫症(10)、ミトコンドリア病(8)、筋ジストロフィー(7)、脊髄小脳変性症(6)、ハンチントン病(5)、エーラス・ダンロス症候群(4)、マルファン症候群(4)、遺伝性血管性浮腫(4)、網膜色素変性症(4)でした。詳細はページ下部に記載しますのでご覧ください。

【コメント編】はこちらから

「障害者手帳」所有は57.4%、「医療費控除」の利用は33.6%

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特定医療費(指定難病)受給者証、障害者手帳、小児慢性特定疾病、自立支援医療受給者証の所有についての設問では、「障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)」(57.4%)が一番多く、「特定医療費(指定難病)受給者証」(40.2%)、「小児慢性特定疾病(小慢)医療受給者証」(15.6%)、「自立支援医療受給者証」(5.7%)でした。一方、上記4つのいずれも持っていないという人は23%でした。組み合わせでは、「特定医療費(指定難病)受給者証」と「障害者手帳」を持っている人が全体の25.4%でした。また、「当事者(本人)」のうち障害者手帳の所有は50%、「当事者の家族(子どもが当事者)」のうち小児慢性特定疾病(小慢)医療受給者証の所有は26.6%でした。

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医療費控除、高額療養費制度などの利用について、一番多かったのは「医療費控除」(33.6%)、次いで「高額療養費制度による医療費助成」(30.3%)、「乳幼児・子ども医療費助成」(17.2%)でした。一方、これらのいずれも利用していないという人は18%でした。自治体の障害者医療助成(「重度心身障害者医療費助成」「心身障害者医療費助成」「重度障害者医療費助成」など、自治体によって呼称や内容が異なる)の利用は9.8%でした。

相談相手は「家族」が最多で46.7%、SNSでの相談は22.1%

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医療費や支援に関する悩みを相談できる相手について、一番多かったのは「家族」(46.7%)でした。続いて、「医療機関」(38.5%)、「自治体の相談窓口」(27.9%)、「SNS」(22.1%)でした。一方、「相談できる相手がいない」を選んだ人は19.7%でした。また、年代別に見ると50代で「相談できる相手がいない」を選んだ人が35.3%と、他の年代に比べて割合が高い結果でした。

自治体窓口や医療機関で相談をしない人はより困難だと感じている傾向

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「医療費軽減に関する正確でわかりやすい情報の入手は、難しいと思いますか?」という設問では、「4」以上が全体の6割以上となり、難しいと思っている人の方が多いことがわかりました。また、関わり方や年代などで区別して見てみたところ、回答者が「当事者本人」に比べて「家族」の方がより難しいと思っていること(※1)、回答者の年代が「30代以下」(20代と30代)に比べて「40代」はより難しいと思っている(※2)ことがわかりました。

※1〈当事者本人(62人)=平均値3.60 ,中央値4.00 ,標準偏差1.093、家族(59人)=平均値4.08,中央値4.00,標準偏差1.103、マン・ホイットニーのU検定、P値=0.007〉
※2〈30代以下(25人)=平均値3.40,中央値4.00,標準偏差1.190、40代(44人)=平均値4.16,中央値4.50,標準偏差1.010、クラスカル・ウォリス検定、調整済み有意確率=0.042〉

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「医療費軽減に関する手続きは複雑だと思いますか?」という設問では、「4」以上が全体の7割以上で、複雑だと思っている人の方が多いことがわかりました。また、医療機関で相談していない人(※3)、自治体の窓口で相談していない人(※4)は、相談をしている人に比べて、手続きがより複雑だと思っていることがわかりました。

※3〈医療機関で相談する人(47人)=平均値3.77,中央値4.00,標準偏差1.108、医療機関で相談しない人(74人)=平均値4.31,中央値5.00,標準偏差0.875、マン・ホイットニーのU検定、P値=0.005〉
※4〈自治体の窓口で相談する人(33人)=平均値3.79,中央値4.00,標準偏差1.111、自治体の窓口で相談しない人(88人)=平均値4.22,中央値4.50,標準偏差0.940、マン・ホイットニーのU検定、P値=0.043〉

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「医療費について、今受けている支援内容は十分だと思いますか?」という設問では、「3」を選んだ人が最多で、次に多かったのは「1」(全くそう思わない)、3番目に多かったのは「5」(とてもそう思う)でした。年代、立場、就労状況、発病からの年数、地域、手帳の有無、相談相手などで区別して分析したところ、「自治体の窓口で相談していない人」は、相談する人に比べて、支援が十分だと思っていない(※5)ことがわかりました。

※5〈自治体の窓口で相談する人(33人)=平均値3.36,中央値3.00,標準偏差1.295、自治体の窓口で相談しない人(87人)=平均値2.72,中央値3.00,標準偏差1.428、マン・ホイットニーのU検定、P値=0.028〉

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「医療費以外の支援(交通費など)について、支援内容は十分だと思いますか?」という設問では、「2」以下が全体の7割以上で、支援は不十分だと思っている人が多いことがわかりました。また、「医療機関で相談していない人」は、相談している人に比べて、医療費以外の支援がより不十分(※6)だと感じていることがわかりました。

※6〈医療機関で相談する人(46人)=平均値1.98,中央値2.00,標準偏差1.022、医療機関で相談しない人(75人)=平均値1.69,中央値1.00,標準偏差1.102、マン・ホイットニーのU検定、P値=0.035〉


回答者の年代、居住地、疾患等について

  • 回答数:122
  • アンケート実施期間:2023年11月1日~10日
  • 実施方法:インターネット調査
  • 回答者の立場:当事者50.8%、当事者の家族48.4%(子どもが当事者:36.9%、配偶者・パートナーが当事者:5.7%、親・兄弟姉妹が当事者:3.3%、その他:2.5%)、不明:0.8%   ※その他:子どもと親が当事者、配偶者と子どもが当事者、親の兄弟が当事者
  • 年代:20代4.9%、30代15.6%、40代36.1%、50代27.9%、60代13.9%、70代1.6%
  • 就労状況:就労している58.2%、就労していない41.8%
  • 居住地域:北海道・東北10.7%、関東39.3%、中部18.9%、近畿18.9%、中国・四国7.4%、九州4.9%(36都道府県、都道府県別では東京が最多で20人)
  • 主な受診状況:主に通院:91.8%、主に入院:1.6%、主に往診(在宅医療):0.8%、その他:3.3%、未受診:1.6%
  • 関わりのある疾患: 神経線維腫症(10)、ミトコンドリア病(8)、筋ジストロフィー(7)、脊髄小脳変性症(6)、ハンチントン病(5)、エーラス・ダンロス症候群(4)、マルファン症候群(4)、遺伝性血管性浮腫(4)、網膜色素変性症(4)、シャルコー・マリー・トゥース病(3)、ライソゾーム病(3)家族性大腸腺腫症(3)、家族性地中海熱(3)、MECP2重複症候群(2)、アルポート症候群(2)、オスラー病(2)、リンチ症候群(2)、レット症候群(2)、拡張型心筋症(2)、球脊髄性筋萎縮症(2)、脊髄性筋萎縮症(2)、多発性内分泌腫瘍症(2)、PURA症候群(2)、副腎白質ジストロフィー、膿疱性乾癬(疱疹状膿痂疹)・乾癬性関節炎、低ホスファターゼ症、多発性嚢胞腎、多発性骨端異形成症、先天性副腎過形成、先天性縮毛症、先天性下垂体機能低下症、骨形成不全症、血友病、筋萎縮性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、遺伝性乳がん卵巣がん、ダノン病(自己貪食空胞性ミオパチー)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群、コケイン症候群、カウデン症候群、ウィルソン病、アンジェルマン症候群、アラジール症候群、Ohdo症候群、Lamb-Shaffer症候群、HNRNPH2遺伝子関連疾患(バイン症候群)、FOXG1症候群、FLNA異常症、22q11.2欠失症候群、21トリソミー、その他疾患(11)