ムコ多糖症患者さん家族への調査結果を発表、確定診断までに「平均1年以上」かかる

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ムコ多糖症患者さんの両親を対象とした調査の結果、確定診断までに「平均1年以上」かかっていると判明
  2. 患者さんの両親の8割が、ムコ多糖症によって「日常生活に制限を感じている」と答えた
  3. 奥山先生は「今後は早期診断のサポートなどが重要」とコメント

ライソゾーム病の一種「ムコ多糖症」とは?

サノフィ株式会社は4月14日、ムコ多糖症患者さんの両親対象のインタビュー・アンケート調査結果を発表しました。また、同社は同日に、メディア向けwebセミナーを開催。国立成育医療研究センター臨床検査部統括部長で、ライソゾーム病センター長の奥山虎之先生が、「ムコ多糖症の現状と課題」と題して講演を行いました。

ムコ多糖症はライソゾーム病の一種で、生まれつき、細胞の中で「ムコ多糖」を分解するために必要な酵素が足りないことから、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する先天代謝異常症です。7つの型に分類されており、型によって症状は異なります。また、同じ型の患者さんであっても、症状はさまざまです。症状は、発達の遅れ、低身長、骨変形、特徴的な顔つき、固い関節、おなかの膨れ(肝脾腫)、へそ・そけいヘルニア、心弁膜症(心雑音)、中耳炎、難聴など、多岐にわたります。多くの患者さんは0~3歳ごろに発症しますが、赤ちゃんの頃は症状が目立たず、3~5歳頃になると症状がはっきりと現れます。

また、ムコ多糖症は進行性の疾患でもあります。症状が進行し、重症になった患者さんでは、「歩けなくなる」「自分で食事ができなくなる」「自力での呼吸が困難になる」「寝たきりになる」といった状態になるため、早期診断・治療が大切です。しかし、発症率が2~5万人に1人と非常にまれな疾患のため、一般の方だけでなく医師の認知度も高くないといわれています。

今回の調査は、ムコ多糖症患者さんと家族の「疾患に関わるこれまでの行動」や「心理」について確認することを目的に行われたもの。調査の対象者は、ムコ多糖症I型もしくはII型の診断を受けている患者さんの母親あるいは父親(アンケート39名、インタビュー6名)で、2019年11月19日~12月20日に実施されました。

家族の8割が「日常生活に制限がある」と回答、周りの理解が大切に

調査の結果、ムコ多糖症の症状が最初に現れたときの年齢について、最も多かったのが0歳(31%)、平均年齢は2.1歳でした。一方、確定診断時の平均年齢は3.2歳で、発症から確定診断までに平均1年以上かかっていることが判明。また、約8割の患者さんが、確定診断を受けるまでに2施設以上を受診していることも明らかになりました。その他、確定診断前に、患者さんの両親は子どもの症状に違和感を抱えながらも、「適切な診療科がわからなかった」「ムコ多糖症の疑いにたどり着けなかった」という状況にあったことがわかったそうです。

また、患者さんの両親の80%が、ムコ多糖症によって日常生活に制限を感じていることが明らかに。具体的には、遠出ができないなど症状による「活動の制限」や、通院のための「時間の制限」が挙げられました。ムコ多糖症では「酵素補充療法」という、不足している酵素を補いムコ多糖の分解を促す治療を行います。酵素補充療法は、薬の種類にもよりますが、1~2週間に1回、数時間かけて薬を点滴する治療です。通院に必要な移動時間などを含めると、1日がかりになることもあるのだそうです。患者さんが小さいお子さんの場合は、親が通院に付き添わなくてはいけません。このような事情から、ムコ多糖症による日常生活への制限について奥山先生は、「(患者さんだけでなく)親にとっても大変なことだと思います」とコメントしました。

その他、「周囲の人との間で困ったことがある」と回答した両親は59%という結果に。具体的な困りごととしては、「治療のための欠席・欠勤等に対する理解が得られないこと」などが挙げられました。定期的な通院のために学校や会社を休むなどして、周りから嫌みを言われる場合もあるのだそうです。「説明しても、なかなか周りに理解してもらえない状況がある」と、奥山先生は指摘。ムコ多糖症に対する、周りの人々理解が大切だといえます。

今後は「早期診断のサポート」などが重要に。症状チェックリストも公開

奥山先生は、今回の調査結果を受けて「今後は「早期診断のサポート」「診断を受けた患者さんへの心理的サポートや疾患に関する情報提供」「社会への疾患啓発」が重要です」とまとめました。

早期診断のサポートについては、ムコ多糖症の疑いを確認し、医師に提示できるチェックリスト(監修:奥山先生)が、サノフィ社の疾患啓発サイト「ライソライフ」で公開されているので、活用してみましょう。このチェックリストでは、「生後1~6か月位で明らかになる症状」と「1歳以降で明らかになる症状」がそれぞれ確認できます。

サノフィ社は「今後も、疾患啓発や情報提供等を通じて、ムコ多糖症の早期診断・早期治療の重要性をお伝えするとともに、疾患に対する周囲の方々の理解を促進することで、ムコ多糖症と向き合う皆様のQOL(生活の質)の向上に貢献してまいります」と、コメントしています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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