ライソゾーム病

遺伝性疾患プラス編集部

英名 lysosomal disease
別名 ライソソーム病、リソソーム病、リソゾーム病、リソソーム蓄積症
日本の患者数 平成24年度医療受給者証保持者は911人
子どもに遺伝するか 遺伝する(常染色体性劣性遺伝、X連鎖劣性遺伝)
発症年齢 乳幼児頃(徐々に進行)
性別 男女とも(一部は男性のみ)
主な症状 神経症状を含めたさまざまな症状
原因遺伝子 ライソゾーム酵素の遺伝子(さまざま)
治療 酵素補充療法、造血幹細胞移植、シャペロン療法など
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どのような病気?

人間を構成する細胞の中には、核や小胞体、ゴルジ体などの「細胞内小器官」があり、それぞれの役割を担っています。「ライソゾーム」とは、細胞内小器官のひとつで、細胞が新陳代謝を営む上で、不要になった物質を分解する役割をもちます。

ライソゾームの中には、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、核酸分解酵素、多糖体分解酵素など、分解する物質ごとに、たくさんの種類の酵素が存在しています。これらの酵素の働きが、ひとつでも異常になると、不要物が分解されずにライソゾームに蓄積し、その結果、ライソゾーム病の症状が現れます。つまりライソゾーム病は、ライソゾームに含まれる酵素を作るもととなる遺伝子のどれかに変異があり、その酵素がうまく働かなくなってライソゾームの中に不要物が溜まり、引き起こされる病気の総称です。

正常に働けなくなる酵素の種類によって、ライソゾーム病の種類もさまざまです。現在ライソゾーム病は40種類程度知られており 、代表的な疾患は、ポンペ病、ゴーシェ病、クラッベ病、ニーマン-ピック病、テイ-サックス病、ファブリー病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、シスチン症などです。

ライソゾーム病では、多彩な症状が現れ、年齢とともに病気が進行していきます。生まれてすぐは、ほとんどの場合で病気の症状が出ていませんが、乳幼児期から、体の関節が固く動きが悪い、骨が変形している、運動機能の発達が遅い、言葉の発達が遅い、階段を上るなど今までできたことができなくなった、などの症状が始まり、成長につれ、細胞内の不要物蓄積が進み、心不全、腎不全、呼吸不全など、重篤な症状に進行していきます。

ライソゾーム病は、厚生労働省の特定疾患(指定難病19)に指定されています。

何の遺伝子が原因となるの?

ライソゾームで働く酵素のもととなる遺伝子が原因となります。ほとんど全てのライソゾーム病で、正常に働かない、もしくは作られなくなっている酵素は判明しており、そのもととなる遺伝子の異常も判明しています。この病気は、基本的に「常染色体劣性遺伝」という形式で遺伝します。2つ1セットで持っている、対象酵素の遺伝子のうち1つだけにこの病気の原因となる変異があった場合、その人は病気を発症せず「保因者」となります。両親がそれぞれ保因者だった場合、2本とも病気の遺伝子を受け継いだ子供は、ライソゾーム病を発症します。この確率は25%です。

常染色体劣性遺伝

 

一方、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ファブリー病、ダノン病は「X連鎖劣性遺伝」という形式で遺伝します。人間は、XとYという2種類の性染色体を持っていて、組み合わせがXXなら女性、XYなら男性です。対象酵素の遺伝子がX染色体に存在する場合、母親が保因者であれば、50%の確率で、自身の男児にライソゾーム病が発症します。女児の場合には、50%の確率で保因者となります。父親がライソゾーム病だった場合には、男児は病気ではなく、女児は全員保因者となります。ただし、ファブリー病は、例外的に、男児よりも軽症であるものの、女児にもさまざまな症状が現れることがわかっており、これは「X染色体不活性化」という現象によるものだと判明しています。そのため、ファブリー病では、X連鎖劣性遺伝と言わずに、X連鎖遺伝と言う場合もあります。

X連鎖劣性遺伝

どのように診断されるの?

ライソゾーム病は、「どのような種類の不要物が体内に溜まっているのか」や「どのようなライソゾーム酵素が生まれつき正常に働かないのか」を、血液や尿を用いて調べ、診断します。必要に応じて、遺伝子検査や出生前診断も行われており、全国からの診断依頼に対応したライソゾーム病専門施設や検査センターもあります。

どのような治療が行われるの?

ライソゾーム病の治療法で現在行われているのは、「酵素補充療法」と「造血幹細胞移植」と「シャペロン療法」です。

酵素補充療法は、遺伝子の異常で生まれつき欠けている酵素を、治療薬として血管に点滴で入れて補充する治療法です。毎週あるいは隔週で通院し、3~4時間の点滴を行います。現在、日本で酵素補充療法を行うことができるのは、ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症I型、II型、VIA型、VI型、ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症です。その他のライソゾーム病も、酵素補充療法の開発が急ピッチで進められています。

造血幹細胞移植は、骨髄や臍帯血を移植するもので、現在は、治療対象とされているライソゾーム病(クラッベ病、異染性ロイコジストロフィー、ムコ多糖症I型、II型の重症型など脳の合併症がある病気)で、早期もしくは発症前の患者さんに対して行なわれています。

さらに、神経科、耳鼻科、整形外科、眼科、移植・細胞治療科など関係する診療科と連携し、症状に合わせた適切な治療も行われます。

その他、新しい治療法の開発も進められています。例えば、ファブリー病やゴーシェ病で、「シャペロン療法」の治験が行われています。この治療法は、正常に働けない状態の酵素を安定化させて少し働きを持たせる治療です。その成果の1つとして、2018年3月に、飲み薬としては初めてのファブリー病治療薬「ミガーラスタット塩酸塩」(製品名:ガラフォルド)が日本で承認され、2018年5月に発売されました。この薬は、変異が原因でライソゾームにたどり着けない状態のα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)という酵素にくっつき、その安定性を増すことで、無事にライソゾームにたどり着かせ、ライソゾーム中の不要物が分解できるようにする薬です。 ニーマン-ピックC病に対しては、「基質削減療法」といって、飲み薬で不要物の蓄積を抑える治療が日本でも始まっています。もうすぐ、ゴーシェ病の薬も発売されるそうです。異染性ロイコジストロフィーやムコ多糖症III型などでは、異常になった酵素の遺伝子を根本から治す「遺伝子治療」の臨床治験が行われています。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でライソゾーム病の診断や治療を行っている、主な施設は以下です。

患者会について

ライソゾーム病の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

 

日本ゴーシェ病の会の取材記事は、以下です。

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参考サイト

参考文献:医学書院 医学大辞典 第2版