「患者数が少ないからこそ支えあおう」の気持ちで~日本ゴーシェ病の会

遺伝性疾患プラス編集部

細胞内小器官「ライソゾーム」に含まれる酵素がうまく働かなくなり、細胞内に不要物が溜まってしまうことで生じる遺伝性疾患「ライソゾーム病」。ライソゾームにはたくさんの酵素が含まれています。その中で異常となる酵素の種類によりライソゾーム病は細かく分けられ、現在40種類程度知られています。その一種である「ゴーシェ病」は、型によって内臓の症状、血液の症状、骨の症状、神経の症状など、さまざまな症状が現れる病気です。また、日本の患者さんは約150人と推定されており、非常にまれな疾患でもあります。

日本ゴーシェ病の会は、ゴーシェ病患者さんやご家族向けの勉強会、交流会の実施などを通じて支援活動を行う団体です。また、一般の方にもゴーシェ病を広く、正しく知ってもらうため、日本国内での疾患啓発活動にも力を入れています。会の前身である「ゴーシェ病の会」としての活動も含めるとその歴史は30年以上にものぼり、長く患者さんやご家族を支援してきました。

今回は、ご自身がゴーシェ病患者家族の一人であり、日本ゴーシェ病の会の会長を務める古賀晃弘さんに、会の活動についてお話を伺いました。

5月4日は「ゴーシェ病の日」、会のロゴマークとともに

 

団体名日本ゴーシェ病の会
対象疾患ゴーシェ病
対象地域全国                  
会員数50家族                 
設立年2015年
連絡先

公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から

「電話」080-3727-5454

「メール」gaucherjapan@gmail.com

サイトURLhttps://www.gaucherjapan.com/
SNSFacebook
主な活動内容ゴーシェ病患者さんやご家族の支援を目的に、勉強会などを通じてゴーシェ病に関する正しい情報を発信。5月4日を「ゴーシェ病の日」と制定し、国内におけるゴーシェ病の啓発活動にも力を入れている。

会の前身である「ゴーシェ病の会」は1986年に活動をスタート

活動を始めたきっかけについて、教えてください。

日本ゴーシェ病の会は、1986年に「ゴーシェ病の会」として活動を始めました。最初は、2つの患者家族が集まることからのスタートだったと聞いています。ゴーシェ病は、日本国内での患者数が150人と推定される、大変珍しい病気です。当時は、SNSやインターネットなどが現在ほど普及していなかったこともあり、患者さんやご家族同士で悩みを共有する以前に、同じゴーシェ病患者さんやご家族を見つけることがなかなか難しい環境でした。

そのためゴーシェ病の会の立ち上げ当時は、「ゴーシェ病の正しい知識を得て、明るい療養生活を送れるように会員相互の情報交換ならびに交流を図る」「互いに苦痛を支え合い、精神的な支えとなる場を提供する」「ゴーシェ病を広く社会に啓発し、その理解と協力のもとに医療福祉の増進を図る」という3つの主な目標を掲げ、活動をしていました。また、当時、現在はゴーシェ病の治療法のひとつとして広く用いられている「酵素補充療法」が国内で承認されていなかったため、承認に向けて国へ働きかける活動も行っていました。

2015年に「日本ゴーシェ病の会」へ改名され、新たに活動を始めたきっかけについて教えてください。

大きな理由としては、立ち上げ当初の活動目的の一つだった「酵素補充療法の国内承認」が達成されたためです。そのため、次なる目標として、ゴーシェ病の症状の中でも神経症状を改善する治療薬がない、などの課題解決に向けて、新たに活動を始めることになりました。

専門医と直接話せる勉強会を開催、患者さん・ご家族との交流会も

 

勉強会での集合写真
勉強会は、どのような地域で開催されていますか?また、開催頻度もあわせて教えてください。

年に1回、東京か大阪で開催しています。日本ゴーシェ病の会の顧問医師や外部のゴーシェ病を専門とする医師(専門医)が疾患情報に関する講演を行い、会員同士の交流会も同時に開催しています。

今年は大阪で開催の予定でしたが、新型コロナウイルスの影響もあり、開催については検討を重ねている段階です。オンラインでの開催が可能かどうか、模索中という状況ですね。

勉強会や交流会に参加された患者さんやご家族からは、どのようなお話が多く寄せられますか?

専門医と話せることに価値を感じてくださる患者さんやご家族が、多くいらっしゃる印象です。ゴーシェ病は希少疾患でもあるため、患者さんのお住まいの地域に専門医が必ずいるとは限りません。そのため、勉強会で専門医に会い、直接話せるという部分でご好評いただいているのだと思います。

また、「同じ病気と闘っている人たちと会えることがうれしい」という声も寄せられます。ゴーシェ病は患者さんの数が少ない病気ですから、普通に生活していても、同じゴーシェ病の患者さんと偶然に会える確率って本当に少ないと思うんですね。ライソゾーム病という大きな病気のくくりで考えても、患者さんにはなかなか会えないと思います。そういった背景があるので、ゴーシェ病の患者さんやご家族同士で集まっているだけで、不思議と安心感のようなものが出てくるのかもしれません。

その他、日々、患者さんを支えているご家族同士で経験や悩みごとを共有できるという部分も大きいと思います。残念なことに、ゴーシェ病は認知度が高い病気とは言えません。そのため、一般の方に病気に関する事情を説明しても理解してもらえないことが多いという状況があります。例えば、「今、自分の子どもは4歳で、ゴーシェ病のため人工呼吸器をつけて寝たきりの状況なんです」と話した場合、ゴーシェ病のことをよくご存じない一般の方では「かわいそう」という感想以上に、病気を理解することは難しいと思います。これが実際にどういう状況なのかは、日々そばで見守っている患者家族でないと理解することが難しいと思います。そういった意味でも、同じゴーシェ病患者家族と話せるという価値は大きいのかもしれませんね。

5月4日は「ゴーシェ病の日」、多くの人々に知ってもらうために

5月4日を「ゴーシェ病の日」と制定されたのは、なぜですか?

日本ゴーシェ病の会全体で、日本国内のゴーシェ病の啓発活動に力を入れていくためです。5月4日は、日本ゴーシェ病の会として新たに活動を再スタートさせた日でもあり、5(ゴー)月4(シェ―)日で、「ゴーシェ病の日」と制定しました。

もともと、海外のゴーシェ病患者団体は、毎年10月1日の「世界ゴーシェ病の日」に向けて「rare but not alone」をキーワードに、患者さんやご家族には「少ないけど、一人じゃないよ」という連帯感を、社会には「少ないけど、孤立させずに目を向けて」という願いを込めて、疾患啓発活動を積極的に行っています。その活動に倣い、日本でもゴーシェ病の疾患啓発活動を行っていきたいという狙いがあります。

「ゴーシェ病の日」に関連する疾患啓発活動として、どのような活動を行われていますか?

ゴーシェ病という病気について、少しでも多くの方々に知ってもらえるように、パンフレットを作成して配布したり、YouTubeやFacebookなどを通じてゴーシェ病に関わる情報を発信したりしています。

疾患啓発活動で配布しているパンフレット

また、日本ゴーシェ病の会のロゴマークをあしらった疾患啓発グッズを作って、患者さんの周りの方々に配布する活動も行っています。ロゴマークの2つ手の中にある四ツ葉のクローバーは、ゴーシェ病患者さんとそのつながりのある人々に幸せをもたらす象徴をイメージしています。そして、2つの手は「患者さんと患者さん」「医師と患者さん」そして、応援してくれるたくさんの方々との心のつながりを示しています。

ゴーシェ病はI~III型に分類され、型によって患者さんの症状はさまざまです。あるゴーシェ病患者さんは、見た目では病気だとわからない場合もありますが、体調が優れず会社や学校を休まなければならないこともあります。また、けいれんなど重度の神経症状が現れる患者さんでは、激しい発作に苦しんだり、若くして亡くなってしまったりする場合もあります。疾患啓発活動を通じて、こういった患者さんたちの状況を少しでも理解してもらえたらうれしく思います。そして患者さんを支えるご家族も日々奮闘しているということを、できるだけ多くの方々に知って欲しいというのが、わたしたちの願いなのです。

日本ゴーシェ病の会YouTube「ゴーシェ病を知っていますか?」

ゴーシェ病で苦しむ患者さんがいなくなる未来を目指して

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、患者さんやご家族からどのような声が寄せられていますか?

ゴーシェ病の治療のひとつである酵素補充療法は、治療を受けるために2週間に1回の通院が必要です。そのため、患者さんからは「通院による新型コロナウイルスへの感染が怖い」といった声が寄せられています。

また、重症の患者さんでは、人工呼吸器を必要とする医療的ケア児が多くいます。新型コロナウイルス感染症への治療によって全国的に人工呼吸器の使用頻度が増えており、その影響で関連物資が不足したり、ケアに必要なアルコール綿が品切れを起こしたりといった状況があり、不安だという声があがっています。こういった状況が、少しずつ改善されて欲しいですね。

今後、新たな活動に取り組むご予定はありますか?

オンラインを利用して、総会や交流会を実施できないか検討しています。現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、患者さんやご家族が集まって交流することが難しい状況なので、このような状況でも何とか交流の場を設けることができないか、模索しています。

患者さんやそのご家族、その他、患者さんたちを支える方々へのメッセージをお願いします。

“rare but not alone”という言葉のとおり、確かにゴーシェ病患者さんの数は少ないですが、病気と闘いながら懸命に生きている患者さんや、その患者さんを日々支えているご家族がいるということ、一人ではないということを知って欲しいです。日本ゴーシェ病の会は、「患者さんの数が少ないからこそ、ともに支え合っていきたい」という考えのもと、運営しています。会員であっても会員でなくても、ゴーシェ病に関することであれば何かお力になれることがあるかもしれませんので、ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。

わたし自身、日本ゴーシェ病の会の活動に参加するようになって、さまざまな経験をしました。ポジティブな経験でいうと、なかなかネットの情報だけでは知りえなかった情報を得ることができたことです。例えば、地域によっては、在宅でゴーシェ病の治療を受けられる環境があるということも、日本ゴーシェ病の会の方から教えてもらいました。

一方で、ネガティブな経験をすることもあります。毎年、日本ゴーシェ病の会の会員さんの中だけでも、6歳未満の若いゴーシェ病患者さんが亡くなっている現実があり、何もできない自分の無力さを痛感しています。生き続けることができなかった患者さんたちの想いを忘れずに、これからも活動を続けていきたいと思います。

最後に、たとえはるか遠い未来だとしても、わたしは、ゴーシェ病によって苦しむ患者さんがいなくなる社会がくることを心から願っています。これからゴーシェ病になる患者さんたちや、今も病気で苦しんでいる患者さんたちが一人もいなくなる社会を目指して、私たちはこれからも活動を続けていきます。


 

「患者さんの数が少ないからこそ、ともに支えあっていきたい」という考えのもと、活動を続ける日本ゴーシェ病の会。その活動は、患者さんやご家族の支援だけにとどまらず、日本国内における疾患啓発活動など、多岐にわたります。

会長の古賀さんは、ご自身も患者家族としてお忙しい日々を過ごす中で、会の活動を行っておられます。今回の取材を通じて、古賀さんの「ゴーシェ病で苦しむ患者さんがいなくなる未来」への思いが強く伝わってきました。

新型コロナウイルスの影響で、これまで通りの勉強会や交流会の開催は難しい状況となりましたが、オンラインでの開催ができないかを検討されているそうです。今後の活動については公式ウェブサイトやSNSを通じて発信されるということなので、ぜひ確認してみてください。(遺伝性疾患プラス編集部)

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