酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症に対する唯一の治療薬候補、日本で世界初の承認申請

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)は、ライソゾーム病の一種で重篤な疾患
  2. 酵素補充療法製剤「olipudase alfa」が世界で初めて日本から承認申請された
  3. ASMDの、中枢神経系以外の病変に対し唯一の治療法となる見込み

「酸性スフィンゴミエリナーゼ」が正しく働かないことで神経やさまざまな臓器に症状が現れる病気

サノフィ株式会社は9月30日、ヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ製剤「olipudase alfa」(オリプダーゼアルファ)について、成人および小児における酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)の非中枢神経系病変に対する唯一の治療法として、世界で初めて日本で承認申請をしたと発表しました。

ASMDは、ライソゾーム病の一種で、「SMPD1」という遺伝子の変異により生じるさまざまな疾患の総称。SMPD1は、細胞内小器官のライソゾーム内で、スフィンゴミエリンという脂質を分解する酵素「酸性スフィンゴミエリナーゼ」(ASM)の設計図となる遺伝子です。この遺伝子の変異によりASMの活性が低くなり、スフィンゴミエリンが代謝されずに細胞内に蓄積して細胞の生存に影響し、内臓等の機能に異常が現れます。ASMDの全世界での発症率は、出生児10万人あたり0.4~0.6人とされています。

ASMDの一連の疾患は、ニーマンピック病(NPD)A型~NPD B型に分類されます。NPD A型は、神経症状が急速に進行し、中枢神経系の合併症により小児期の早い段階から命を脅かす重篤な疾患。NPD B型も、重篤で命が脅かされる可能性のある疾患で、主に肺、肝臓、脾臓と心臓に症状が現れます。NPD A/B型は、A型とB型の中間にある疾患で、神経症状は患者によってさまざまです。NPD C型と呼ばれる疾患もありますが、これはASMDとは原因遺伝子が異なる疾患です。

成人と小児対象の2つの臨床試験で得られた肯定的な結果に基づく承認申請

ASMDの非中枢神経系病変に対する治療薬として開発中のolipudase alfaは、活性が低下しているASMを補充し、スフィンゴミエリンの分解を促す目的で用いる、開発中の酵素補充療法の製剤。米国食品医薬品局(FDA)は、同剤を Breakthrough Therapy(画期的治療薬)に指定しており、欧州医薬品庁(EMA)も、PRIME(PRIority MEdicinesの略称)の対象に指定しています。まだ開発中の治験薬であるため、現時点ではいずれの規制当局においても同剤の安全および有効性の評価までには至っていません。また、NPD A型の患者さんを対象とした臨床試験はまだ行われていません。

日本では、2017年4月21日付で、先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、今回の承認申請は、この制度に基づいて行われました。今回、ASMD成人患者さん36人対象第2/3相試験の「ASCEND試験」、および、ASMD小児患者さん(出生後~18歳未満)20人対象第1/2相非盲検単群試験の「ASCEND-Peds試験」の、2つの臨床試験で得られた肯定的な結果に基づいて、承認申請に至りました。olipudase alfaは承認された場合、ASMDで唯一の治療薬となる見込みです。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク