ライソゾーム病の1つ「ポンペ病」の新たな治療選択肢として開発中
アミカス・セラピューティクス株式会社は1月5日、日本国内の成人遅発型ポンペ病の患者さんを対象に、開発中の新規併用療法であるシパグルコシダーゼアルファ(cipaglucosidase alfa)/ミグルスタットによる拡大治験を開始したことを発表しました。
ライソゾーム病の1つであるポンペ病(糖原病II型)は、ライソゾーム内でのグリコーゲン分解に関与する酵素「酸性α-グルコシダーゼ(GAA)」の設計図となる遺伝子の変異によって引き起こされる、希少な常染色体劣性(潜性)遺伝性疾患です。この酵素の機能が障害されることにより、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、細胞機能の障害が進行し、筋力、運動および肺機能が進行性に低下します。ポンペ病の患者さんは世界に5,000人~1万人いると推定されています。
現在、日本には、承認され使用されているポンペ病の酵素補充療法薬が既にありますが、患者さんや介護者は、新たな治療選択肢が利用可能になることを切望しています。また、海外において、Amicus Therapeutics Inc.では、ポンペ病患者さんの要望に応えるため、これまでに複数の拡大アクセスプログラム(Expanded Access Program)を企業主導による臨床試験と並行して実施しています。同社は日本においても同様に、患者さんの要望に応えるため、拡大治験を開始することにしました。
隔週で、固形薬内服の1時間後に点滴
「シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタット」は、ポンペ病治療のための新規併用療法として開発が進められている治験薬です。シパグルコシダーゼアルファは、マンノース-6-リン酸(M6P)を増加させることにより、細胞への酵素の取り込みを向上させた遺伝子組換えヒト酸性α-グルコシダーゼです。特に筋組織において、ポンペ病の主要な貯蔵物質であるグリコーゲンを減少させる作用が期待されています。シパグルコシダーゼアルファは、隔週の点滴静注による治療です。ミグルスタット(N-ブチル-デオキシノジリマイシン)は経口固形製剤であり、血中のシパグルコシダーゼアルファを安定化させ、活性を維持した多くの酵素を標的組織への輸送を増加させることが期待されています。シパグルコシダーゼアルファの点滴静注開始の1時間前に服用します。
同剤について、日本ではポンペ病成人患者さんを対象とした主たる治験としてATB200-03試験が、またその長期継続投与試験(ATB200-07試験)が実施されています。2020年12月には、厚生労働省より希少疾病用医薬品に指定されました。海外では、2019年2月に米食品医薬品局(FDA)よりブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定され、すでに承認申請が行われています。また、欧州医薬品庁(EMA)にも承認申請が行われています。英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)より、2020年1月に、有望な革新的医薬品(Promising Innovative Medicine:PIM)に指定されています。
参加者全員が治療群で、対象群の設定なし
今回の試験は安全性の確認に主眼を置いた拡大治験(人道的見地から実施される治験)。拡大治験とは、生命に重大な影響がある疾患であって、既存の治療法に有効なものが存在しない疾患を対象として、患者さんが享受できると期待されるベネフィットの蓋然性が比較的高いと考えられる国内開発の最終段階である治験(主たる治験)の実施後あるいは実施中(組入れ終了後)の治験薬、治験機器及び治験製品を、治験の枠組みのもとで提供するものを言います。今回の試験では、対照群の設定はなく、すべての試験参加者は隔週で、シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタットの併用投与を受けます。
なお、同臨床試験の詳細は、下記関連リンクの「jRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)」に掲載されています。(遺伝性疾患プラス編集部)