週1回注射の成長ホルモン製剤「エヌジェンラ」が国内で使用可能に

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. これまでの成長ホルモン製剤は毎日注射する必要があった
  2. 週1回の注射で済む、長時間作用型の製剤「エヌジェンラ」が発売された
  3. 毎日注射タイプと有効性や安全性は同等

毎日注射だった薬に週1回注射タイプが登場

ファイザー株式会社は、長時間作用型遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤を2022年4月27日に発売したと発表しました。この製剤は「ソムアトロゴン(遺伝子組換え)」(製品名:エヌジェンラ(R)皮下注24mgペン、同60mgペン)で、適応症は「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」です。

成長ホルモン分泌不全性低身長症は、脳下垂体からの成長ホルモンの分泌が十分でないために起こる成長障害の一つです。頻度は4,000~1万人に1人。成長ホルモンは成長や代謝を保つ機能を持つので、この病気の患者さんは、成長ホルモンの分泌が十分でないために、低身長のほか、心理的、社会的な問題を抱えやすかったり、第二次性徴の遅れなどが生じたりします。そのため従来、成長ホルモン分泌不全性低身長の患者さんは毎日、自分で成長ホルモンを補うための薬を注射する必要がありました。

このたびファイザーが発売したのは、患者さんが自分で注射する頻度を週1回にできるタイプの薬です。薬の効果を長時間にわたって持続できるようにしたために、注射を毎日しなくても効果が現れるようになりました。

毎日注射タイプと有効性や安全性で差がないと確認

ファイザーはこれまでに週に1回注射する新しい薬(エヌジェンラ)と、毎日注射する従来の薬(ジェノトロピン)を比べ、1年間の成長速度から判定される有効性や安全性に差が見られないかを確かめる1年間の試験を国内外で進めてきました。20か国224人の小児成長ホルモン分泌不全性低身長症患者さんが参加した試験です。結果として、有効性や安全性には違いがないと確認することができました。

これまでに1日1回注射タイプのジェノトロピンについて、日本国内で承認されている適応症は以下です。

  • 骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症
  • 骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長
  • 骨端線閉鎖を伴わない慢性腎不全における低身長
  • 骨端線閉鎖を伴わないプラダーウィリー症候群における低身長
  • 成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)
  • 骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症

ファイザーは、「週1回の注射を可能としたことで、患者さんや保護者の方の注射に伴う負担を軽くすることができる」と、説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

関連リンク