開発中のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬、医師主導治験で効果を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬NS-089/NCNP-02(エクソン44スキップ薬)の医師主導治験を実施
  2. 6人の患者さんに対しこの薬で治療したところ、ジストロフィンタンパク質の回復や運動機能の維持、改善を確認
  3. 日本新薬が臨床試験を引き継ぎ、発売に向けた開発を進める

ジストロフィンタンパク質の機能を回復させる薬

国立精神・神経医療研究センターは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬の医師主導治験の成果を発表しました。NS-089/NCNP-02という薬で、同センターと日本新薬が共同研究を進めてきたものです。このたび6人の患者さんを対象にこの薬での治療が行われ、有効性や安全性が確認されました。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子の変異によって、筋肉の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われることで発症します。この病気は、ほとんどが男児に発症する病気で、発症すると徐々に筋力の低下を起こします。ジストロフィン遺伝子の変異に対して、これまでエクソンスキップ治療と呼ばれる治療法が開発されていました。この治療法によって、ジストロフィン遺伝子から作られるタンパク質は正常なジストロフィンタンパク質よりも短くなるのですが、ジストロフィンの機能が回復して筋肉の働きが改善すると考えられています。

これまでに研究グループは、治療の標的となる部分に由来した名前の「エクソン53スキップ薬」としてビルテプソ点滴静注250mg(一般名:ビルトラルセン静注)を開発し、製造販売承認を受けています。さらに、エクソン53スキップ薬が適応にならない患者さんを対象とした新たな薬として、エクソン44スキップ薬であるNS-089/NCNP-02の開発を進めていました。

そして今回、国立精神・神経医療研究センター病院と鹿児島大学病院において6人のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんに対して、NS-089/NCNP-02での治療が行われ、安全性のほか、ジストロフィンタンパク質の回復や運動機能の改善などの薬の有効性などが確認されました。

ジストロフィンの回復に加え、運動機能の維持や改善も確認

こうして薬の効果を検討したところ、ジストロフィンタンパク質の量は、薬を40mg/kgの量で投与されたグループでは平均10.27%の回復、80mg/kgで投与されたグループでは平均15.79%の回復が確認されました。さらに運動機能の維持や改善傾向が示され、NS-089/NCNP-02の有効性が確認されました。有害事象の発生による治療の中止はありませんでした。

今回の結果を踏まえて日本新薬が臨床試験を引き継ぎ、発売に向けた開発を進めると研究グループは説明しています。今後、今回の6人に対してこの薬での治療を続けて、長期間の有効性や安全性も確認する方針です。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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